第32話 事件前夜!!中編
「おいっ!そこのお前っ!!その顔と格好!!お前があの勇者のお供の魔術師か!?」
「え?‥‥あ、はい。そう、ですが‥‥。」
あまりの迫力に思わずなにも聞かずに答えたけど、様子がおかしくて私は彼に理由を尋ねることにした。
「あの、どうされたんですか?」
「仲間が殺られたっ!!助けてくれ!!」
「っ!?本当ですか!?」
「ああっ!!畜生!!今、仲間が教会の神父さまを呼んでいるが間に合うかどうか‥‥。とにかく来てくれ!!」
もしかして‥‥、例の事件と繋がりがあるのかもしれない。
「しかもその仲間はさっき見つけたときにはもう色々とグチャグチャで‥‥、俺はどうすればいいか‥‥。そうだっ!!あんた、アレだろ!?勇者さまのお供だろ!?噂では聞いてた!!凄腕の魔術師なんだろ!?とりあえず仲間の様子を見てくれ!!」
「そうですけど‥‥、魔術では回復は出来ないのは知っていますよね?」
「知っているけど!!でも出来ることだってあるだろ!?」
「そうですね。自体は一刻を争いますし。わかりました。行きます。」
そうして急いでその男の子に付いていくと、そこはいつも行く廃墟だった。
「ここだっ!!どけっ!!魔術師さまだ!!」
「っ!」
彼の仲間と思わしき人が数人、ソレに話しかけていた。
ソレは本当にもう‥‥、ぐちゃぐちゃで肉塊としかいいようがなかった。ただ、残された頭部からソレが人であることだけは分かった。でも、その顔もかなり‥‥、損傷がひどい。顔がところどころ変形している、と言えばいいのだろうか?その髪は抜けているところもあり、見開かれた緑の目だけが無事でそれが逆に不気味に思える。顔は分かっているはずなのに男の人か、女の人かさえもわからない。
「クソっ!!またあの話題の事件の犯人にやられたか!!確かにこいつも緑のめだったしな!!気をつけていたのにっ!!」
「こいつがいなくなっておかしいとは思ったんだよ!!探しても見つからないし!!」
町の大人がだんだんと集まって、ざめざめと泣いたり、ざわざわと噂話をしていたりするのを聞きながら、私は黙ってソレを見る。
「で、治りそうか!?治るよな!!な!!」
「‥‥それが、出来そうに見えますか?これを、見て‥‥。」
「あ?なにを言っているんだよ!!これって言うな!!モノじゃないんだぞ!?それに、まだこんなにも生きてそうでっ!!ほら、多少やばくなっているだけでっ!!治せるだろ!?教会のやつらなら!!魔術で無理でも、きょ、教会ならっ!!」
「‥‥疲れているんです。しばらく休んでいてください。」
「だって、こいつがこいつが‥‥。ああああああああっっっ!!!」
うわ言のようにブツブツと呟いたかと思えば、発狂しながらその男の子は吐瀉物をその場で撒き散らした。
そりゃそうだろう。身近な人がこんなことになったら、狂わずにはいられない。こんな大惨事なのに助かるなんて思ってしまうほどには。
私は彼を落ち着かせた後、
「すみません。そこのあなた。」
「はい‥‥、な、なんですか?」
私はそこら辺にいた、あの男の子と被害者の仲間らしき少年に話しかけた。彼らのところだけ妙な雰囲気を‥‥、事情を知ってそうな感じを醸しだしていたからだ。
「私は魔術師のエリースと申します。少しお時間、よろしいですか?
「‥‥はい。どうぞ。」
その男の子は青ざめながらも微かに首を縦に振った。
「誰が発見したんですか?」
「‥‥えっと、僕、です。きょ、今日、この廃墟で、今話題のあの事件の最初の被害者の子がいるじゃないですか‥‥。そ、その子をみんなで、い、悼みにきたんです。で皆と入ったら、そしたら、昨日消えてたあの子が‥‥。あああ、ああなっててっ!!」
「‥‥失踪はどのぐらいの間?」
「ええっと、昨日の昼からなんです。み、皆で遊んでいてもいなくて、でも、アイツ、そ、そういうことがよくあるから、こ、今回もそうかなって思ってたら、あ、あ、ああああああああああああっっっっ!!!」
その少年はずっと震えていたが、思い出させてしまったのがよくなかったのかついに吐かせてしまった。その少年の周りにいる人も泣きながら吐いていて、酸っぱい臭いが廃墟に充満していた。私は水を魔術で創り出して飲ませてからまた話を聞いた。
「ごめんなさい‥‥。思い出させてしまって。あの、犯人とか、怪しい人とかって見ませんでしたか?」
ここで聞き込みを止めるわけにはいかない。私達の目的は『犯人を殺して、次なる被害者を減らす』こと。そのためには、何を犠牲に払ってでも見つけ出さなければならない。
「うううっ‥‥。ひゃ、ひゃい‥‥。僕、み、見ちゃったんです!!この廃墟からイヴォンさんっぽい人がこの廃墟から出てったの。その後僕があの廃墟で見つけたんです‥‥。あの子を‥‥。」
「っ!?ほ、本当に、イヴォンさんだったんですか!?」
「‥‥はい。間違いありません。あの髪と瞳は間違いなく彼女のものです。」
「そう‥‥。」
周りも頷いて、口々にそれを肯定していた。
『間違いなく、宿屋のイヴォンさんだった』、と。
私は一旦、酸っぱい臭いしか感じられない廃墟から出た。
「‥‥嘘だ。」
殺害方法から見て、私達が今調査している連続誘拐殺人事件と関連があるのは間違いがなかった。
もし、ここで犯人が見つかればそのまま連続誘拐殺人事件の犯人が見つかることと同意義だ。
目撃者がいるなら間違いない。
‥‥でも。
嘘だ。あんな優しい人が、こんなことをするはずがない!確かに何度だって亜人との戦争で私は裏切られた。でも、本の中で出てきた『ともだち』と言えそうなほど仲良くなった彼女がそんなことをするはずがない!!人族を裏切るようなことをするはずがない!!
嘘‥‥、だよね。
きっと皆がイヴォンさんを陥れようってしているんだよ!!きっとそうだよ!!イヴォンさんが!?あの月光の下で儚く佇んで妹の冥福を祈るのうな、そんな人が!?
ありえない!!
‥‥違う。ありえないなんて言葉はない。
だって、皆私を裏切った。私の恩師だって人族を裏切った。亜人の戦争で何人も私を裏切った。
証言だって出ているんだ。もう、間違いが‥‥、間違いようがないんだ。
イヴォンさんが例の事件の犯人だったんだっ!!
私を!!人族を!!裏切るような!!そんなおぞましい化け物!!そんな人族だったんだ!!
‥‥ころ、さなきゃ!!
私は急いで探索魔術を使ってイヴォンさんの気配を探る。この魔術には結構制限があるが、イヴォンさんのことはよく知っていたためすぐに特定できた。彼女がいたのは門の外だった。なんで、そんなとこにいるかはよくわからなかったが私は急いでそこに向かった。
皆のために。人族のために。不穏な要素は殺さなきゃ。
ディザイアも言っていた。犯人は、殺せと。
皆のために。人族のために。『平和な』世界のために、殺さなきゃ。
そう、皆のために人族のために『
__皆のため人族のため平和な世界のため皆のため人族のため平和な世界のため皆のため人族のため平和な世界のためみn‥‥
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