〈閑話〉某師匠の冤罪
ヴァンsideです
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「お前がやったんだんだろう?ほら、早く自供したほうがいいぞ?」
「違うって!!俺じゃねーって!!」
俺が今いるのは、さっきまでいたイェレロの領主である、噛みそうな名前の人の館の地下だ。そこで拘束具を付けられた俺はムキムキの騎士4人ほどで尋問されていた。主に騎士たちを纏めている厳つい顔のリーダーらしいやつが俺に話しかけてくる。リーダーらしき男の赤々しい髪に光が反射して眩しい。
さて。何故、俺が処罰をまだ受けないのかというと、騎士達を纏めている赤髪の目の前のやつ曰く『自白のほうが仕事が楽だから』らしい。まあ始末書とかも楽なんだろうな‥‥‥。
でもさ‥‥‥、
「マジで誘拐じゃないんだよ!!」
「信じられるか!あのお前に攫われた女の子は可哀想に‥‥‥。お前を見て目を潤ませて怯えていたではないか!!」
「ちくしょう!」
あいつ!マジで余計なことしやがって!!本気出せばこの4人の騎士どころかさっきいた大量の騎士たち相手にだって余裕で倒せる力量を持っているのに!!
何が『きゃー、こわーい。』だよ!!ざけんな!!俺の危機敵状態を喜びやがって!!
どうすれば‥‥‥。
あ!!
そもそもちびっ子を連れ出した理由を言えばいいのでは!?
「アイツは自殺を唆されて!」
「なら、なんで村の人は手配書を出したんだ?」
「デスヨネー。」
駄目だ。信じてもらえない。
まあ、まさか神父ともあろうものがちびっ子を自殺させようなんて誰も信じないだろうな‥‥‥。
誘拐してねーし。
いや、思い返せば誘拐自体はしたな‥‥‥。誘拐は悪いことだ。なんで俺、こんなことしているんだよ?
でもよ、ちゃんと最終的にはちびっ子から許可貰ったんだぜ!?よくないか!?
‥‥‥いや、よくないな。何考えているんだよ。俺。倫理観を思いっきり投げ飛ばしているぞ‥‥‥。
普段の俺なら絶対にこんなことしない。例え『教会』の支部にいたあのクソ神父にちびっ子が殺されていても、村から遠いところに置いてっていけばいいのに、『一緒に旅に出ないか?』??馬鹿か!!
__なんで俺はこんなことをしたんだ。本当に。
でも、ここでそれを認めたら間違いなく罰せられる。それはヤバい。できればちびっ子と合意で一緒に旅をしていたというならまだ救いはあるんだけどな‥。あのクソ生意気なちびっ子はふざけたこと抜かすからこんなことになるんだよ!
アイツ、俺と騎士団を天秤にかけて騎士団をとったんだろうな‥‥‥。もはや腹黒さが滲み出しているもんな。
「ところでなんでこんなに手配書が回るのが早いんだ?ちびっ子が村を離れてから一日も経ってないぜ?」
「それは、手配書の件をお前が攫った村にいらっしゃる神父さまに命令されてな。狐耳の男性の逮捕と人族の女児の保護をすることが我々の任務だ。故に我々はその村のほうへ行きながら調査をしようとしていたのだが‥‥‥、俺らは運がいいな。」
「はっ‥‥‥。」
騎士サマたちが運がいいとすると、俺は運がサイッコーにわりいな。
騎士団は王権の直接の支配下に置かれている。つまりあのクソ神父は王様に騎士団を動かすことを『お願い』できるほどの権力を握っているということだ。
ちびっ子の存在をそんなに消しておきたいのかよ、あのまじクソ神父。
しかも村の連中も手配書に行き着くまでが早いと言うか‥‥‥、っていうか手配書がある時点でちびっ子が村に帰るまでは俺の首が狙われているってことか?
でもなんで俺はこんなことをしたんだよ。ちびっ子があのクソ神父に殺されかかっているのを見逃せないのなら、生活させれそうなどこかに匿うのが一番いいのに‥‥‥。何が『一緒に旅に出ないか?』だよ!馬鹿か!?俺は!馬鹿なのか!?
アイツは口悪いし、亜人嫌いだし、意地悪するし、置いてくればよかったじゃないか。
でも、出来ないんだよな。出来なかったんだ。
__アイツと似ている、から。。
雰囲気なんか『あのときのあいつ』にホントそっくりだ。アイツに弱いことは知っていたが‥‥‥。でも流石に似ているやつまで助けてやりたいと思うとはな。俺も末期だな。
お前は!!
‥‥‥お前は『無能』なんだろ?
なんで、お前の声が離れないんだよ。なんで俺の心に住み着いたんだよ‥‥‥。お前はどんだけ俺の中に根強く残っているんだよ。そんな能力、持っていてほしくなかった。
俺のことが嫌いなら、俺の中にいるなよ‥‥‥。
‥‥‥俺も、お前のこと嫌いだから。
ちびっ子はもう俺に会うことはないだろう。お前ももう俺の顔を見たくないんだろ?
お前ら人族は薄情なやつが多すぎるよ‥‥‥。いや、人族に限った話でもないな。
俺がいくら助けても誰も助けてくれない。
__だから、だから、だから。
俺は、故郷に‥‥‥。
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