第17話 領主登場!!
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「ん‥‥‥?」
なんか既視感が‥‥‥。
ゆっくり起き上がると私がベッドで寝かされていることが分かった。私のいる部屋は豪華絢爛で、置いてあるもの一つ一つが高級品であることが分かった。
そう観察していると、ヴァンが私の様子を真剣に観察しているのが見えた。
「ちびっ子? 起きたか? 平気か? ここは領主さまのお館の客室だ。」
「やっぱり私、また魔力暴走を‥‥‥? 」
「‥‥‥残念ながら、な。」
どういうこと? デモンとの戦闘の時、威力が強すぎたとはいえ、きちんと魔術を発動できたはず、なのに‥‥‥。
あのときと今、何が違うっていうの?
魔術の種類? 状況? なんなの?
「ちびっ子、あのクソ神父が言っていたようにお前は魔力を貯めすぎている。」
「‥‥‥それが?」
「魔術商品を扱う商人として、素人の意見として言うなら俺はお前の危機度によるんじゃないのかと思う。」
「危機度とはどういうことですか?」
「まずお前の魔力暴走についてだが、今のお前は魔力が多すぎて、それを放出する器が追いついていないんじゃないのか? 放出する勢いが激しすぎて出口が混み合っているような‥‥‥。そんな感じじゃないのか? そして混雑によって魔力が詰まって魔力暴走が起こる‥‥‥、というような感じで。」
魔術は『魔力』とそれを『体外に放出する』こと。この2つの才能がなければ成り立たない。そこから魔力が有り余る私の様子とかけ合わせて、ヴァンは私の今の状態が魔力に対して『体外に放出する』ということが足りないことを推測したのだろう。
確かに私の今の身体は10歳だ。
魔力は生まれつきな要素が強いのに対して、『魔力を体外に放出する』、ということは年を経るごとに才能が伸びていく。そう私は教わった。
それらを考えると確かにヴァンのいうことは的を射ているような気がする。
「じゃあ、なんで私はデモンと戦った時は魔術を使えたのでしょう? 」
「多分、それが危機度ってことだ。いや、興奮度とでも言えばいいのか?人っていうのは生き残るための闘争本能っていうもんがあることは理解できるか? 」
「はい。」
「その本能によって魔力を体外に放出することを手助けされて、魔力を出し入れされやすいじゃないのかと思うんだ。」
「‥‥‥なるほど。」
例えば魔力が粒で、それをホースを通して出すとする。
でも今の私じゃ、そのホースの出入り口が粒よりも小さいのだ。
けど、戦うことにより危機管理能力とかヴァンの言った闘争本能だとかで無理やりホースの入り口を大きくしている‥‥‥。そんなイメージだ。
放出し放題だから魔力が垂れ流し放題で、私が危ないと感じたら無意識化で垂れ流がしている魔力を使って勝手に魔術が使えていた、それが超位デモンとの戦いの真実‥‥‥。
「って私、ものすごく危ないことしてるじゃないですか!!」
「‥‥‥そうだな。まるで」
『禁呪みたいだな‥‥‥。』
それをヴァンが言ったわけではないがきっと私達の内心は同じだろう。
禁呪について詳しい公式の情報はないけど、巻き戻る前に聞いた噂では禁呪というものは捧げた生贄の魔力を自分に取り込むというものらしい。ただ、他者の魔力が入り込むから危険だ。
でも、私が闘争本能とかで『体外に放出する量』を無理やり広げるのも危険だ。私という身体を壊しかねない。危険だ。
「そうだな。だが、ここからの解釈だのなんだのっていうのは昔魔術師だったって言っているちびっ子のほうが詳しいぜ? 魔術は簡単な学問じゃないし、俺はあくまでも素人だからな。」
「そう‥‥‥、ですね‥‥‥。」
だが、ヴァンが素人素人と言っているが、話してみて分かる。ただの素人とかじゃない。ヴァンは。私と同じぐらいの知識量があると思う。そのうえでこんなことを言っているんだ。
‥‥‥本当に、ヴァンって何者?
それに今の状態って普通に誘拐だし、私も巻き戻る前、顔見知りじゃなかったらフルボッコにしている。
そのぐらい危うい状態なのに私のことを気遣って旅をしている。
‥‥‥何が目的なのだろうか?
ヴァンを見ていると私の内心を知ってか知らずかニカッと笑って私の頭をガシガシと撫でる。
「まあ、くよくよすんなって。」
「ところでヴァンはいつからそれを考えていたのですか?」
「ん〜? パレードしているときにふと。」
天才かよ。やっぱり何者!?
__いや、ヴァンが話すまで待とう。それが礼儀ってやつだ。
「なら、なんであなたはわざわざこんなタイミングで魔力暴走を‥‥‥。」
「いやな? もし俺らが領主さまの館で暴れて逃亡することがあって、ちびっ子に万が一があったら大変だろ? それなら、何もない平時のときに試しておきたくてな。何も言わなくてごめんな。ちびっ子‥‥‥。説明より実際に試したほうが速いからな。」
「‥‥‥」
ヴァンの言葉に納得する。
確かにこんなこと何回も繰り返していたらいつかそれが原因で死んじゃう。絶対寿命は縮まるだろうし‥‥‥。
それぐらい危険なのだ。
でも万が一もある。領主さまが超極悪人だったときや何か粗相した場合。ヴァンと私が無事に逃げるための。
そのとき、私が魔術を使っても大丈夫なのか見極めるためにヴァンはわざとさっき私に魔術を使わせたんだ。
魔力暴走にさせたと私に怒られるのを覚悟して。
「‥‥‥あなたって人は。」
「え? 何? 貶しているの? 俺のこと。」
「そんなことよりも、」
「いや、『そんなこと』じゃないからな!? ちびっ子!? 」
「黙っててください。」
「ひどい!! 」
でも、それを悟らせようとしないヴァンが私は‥‥‥。
っ!? 何馬鹿なことを考えているの!? 私!! ヴァンは亜人なんだよ!? 馬鹿じゃないの!?
あー、やめだやめだ!! これは考えちゃいけない!!
思考をペイっと捨てる。
‥‥‥あ、そういえば。
「妖術使えたのですか? 」
「ん? 魔力暴走の処理についてか? 」
「はい。前も妖術で処理したのですよね? 」
「ああ。そうだな。この術は特殊だからいつでも使えるぞ! 」
でも寿命が‥‥‥。
そう思った私を見越してこういった。
「この術は寿命関係ないから大丈夫だ! 」
「え? そうなんですか? 」
「ああ。妖術の中でも特殊なんだよ。まあ、いつでも頼れっていうもんだ。」
「やったぁ! 頼ろう!! というわけで、またデモンのときに言っていた報酬にプラスで何かしていただきますからね。私に事情も話さず勝手に魔力暴走をさせた罪滅ぼしも兼ねてもらいます。」
「はあ!? そういう意味じゃないし!! 却下!! 追加報酬とかナンセンスだぞ!? 」
「ヤです。」
「何でお前に拒否権があるんだよ!! 」
そんなこんなを話しているうちに、コンコンと控えめな音が聞こえた。そして軽やかな女の人の声が聞こえた。
「失礼いたします。領主さまがいらっしゃいました。」
「え? わざわざ? 」
領主さまなら絶対に貴族だ。逆に領主なのに貴族階級以外なのはありえない。
そんな貴族さまがわざわざこちらへ‥‥‥? 普通は庶民である私達が向かうべきだろう。
「ちびっ子の体調がが悪い云々でな。領主さまが仕事がたくさん入って立て込んでいるから、終わり次第こっちの部屋に来てもらう手筈だったんだ。」
「それは大変申し訳ないですね‥‥‥。」
「いや、あの大型デモンの狩り放題したんだぜ? そんぐらいしてくれてもよくないか? 」
「いや、あれそんなに大きくないですよね? 」
「あー、そういうのいいから。」
「こほんっ。いいかね? 」
「いや、もうちょっと待ってほしいです。」
「すまんがこのちびっ子に常識というものを教えねばならないからな‥‥‥。」
「‥‥‥」
ほらもう!! ヴァンと話していたからそこのおじさん無視しちゃったじゃん‥‥‥。でもまだまだ話さなきゃいけないことがあるからちょっとおじさん、黙ってい、
‥‥‥!?
いや待て。おじさんの格好が宝石ジャラジャラお腹ボーン、極めつけにちょっとずれている髪の毛のようなナニカ。しかもそのおじさんにメイド服を来た女の人が傅いている。
こ、この人って‥‥‥!?
「りょ、りょりょりょりょ領主さまでございますか?! 」
「如何にも。我が第45代目領主のイェヴァ・トンヴェイ・パッテェニヴェだ。」
あ‥‥‥。不敬罪で首チョンパかな☆
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