第15話 危険人物!!
「あの、ありがとうございました。」
「‥‥‥(びくっ)」
「ど、どれも‥‥、と、とっても素敵な服ですね〜。あはは‥‥‥。」
「ひゃ、ひゃいぃ‥‥‥。」
パレードが終わって、私達は兵士さんたちとブティックに行き、汚れた服の着替えかつ領主様に会うのにふさわしい服を買いに来た、のだが‥‥‥。
入店すると1人だけいた小動物系の店員さんに驚愕され、店員さんに兵士さんがここに来た目的を話している間は警戒され、話しかけると怯えられる。
接客態度最悪とはこのことだけど‥‥‥、しょうがない。だって私達は森の破壊者として街に知られ渡っているから。もし自分が粗相をしてしまったらとガタブルなのだろう。ヴァンは店員さんのあんまりな反応に目を潤ませて感動している。『俺は常識人なのに』とかほざきながら‥‥‥、あ、ついに泣き始めた。
「こ、ここここここここれを、どどどどどどどど、どうぞ!!!!!」
「‥‥‥ありがとうございます。」
渡されたのはエメラルドグリーンのドレスだった。
「既製品? よくありましたね。」
普通ならドレスみたいな貴族御用達の高級品はオーダーメイドだ。既製品なんて売っていない。
「あああああああっっ!! 」
「‥‥‥」
駄目だ。怖がりすぎて喘ぎしか出ないっぽい。
「どうやら、これは昔完成したのにキャンセルされてしまったものを置いておいたらしいですよ? 彼女がそうおっしゃっていました。前に。」
「あ、あああああああ!!! 」
「あ、兵士さん。」
ひょこっと横に経って解説してくれる兵士さん‥‥‥。さっきまで役に立たないな、ってちょっとでも思ってごめんなさい。素晴らしいコミュニケーション能力ですね。そんなことまで知っているなんて。
「でも、それがほんの少し申し訳ないみたいですね! 彼女は!!」
「あああ‥‥‥。終わった‥‥‥、お母さんとお父さん、妹‥‥‥。あたしは今日死ぬ運命らしいです‥‥‥。うう‥‥‥。なんでこの人がいるの‥‥‥。しかも森の破壊‥‥‥‥。あああああっ!!!」
ただ兵士さんはKYの度がすぎる!! 店員さんが天に向かって祈る光景を見てよく『ほんの少し』とか言えるな。店員さんの顔色を見てみてほしい。真っ青だよ? 『ほんの少し』申し訳ないと思っているようには見えない。
店員さんは絶対に中古の服を渡したがために自分は死ぬんだと思っているから。
「命が惜しいんですぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!! 」
「‥‥‥」
そしてついに泣きながら私に抱きついていた。二十代に見える店員さんが、10歳の私に、だ。
私達をなんだと思っているんだろう‥‥‥。どっと疲れ‥‥‥、!?!?
ちょ、涙を私の服で拭わないでください!!私、土の上で寝て、その後デモンと戦闘して、森を壊しているんですよ!?汚れ半端ないから!!店員さん汚れちゃうから!!
その時だった。さっきまで涙ぐんでいたヴァンがいきなり店員の肩を叩いた。
「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいっ!! 」
「‥‥‥」
どうやら二十代の男性‥‥‥、ヴァンを森を破壊した人だと思っているらしい。私への怯えよりヴァンへの怯えのほうがひどい。私への反応はヴァンへの恐れの副反応ってこと? なんてはた迷惑な‥‥‥。
そんなことを考えていると、ヴァンがいきなり跪いて店員さんの手をとった。
「泣かないでくれ。素敵なお嬢さん。花の妖精のように麗しい君を俺は別に困らせたくないんだ。可愛らしい君には笑顔でいてほしい。」
「ひゃ、ひゃあああああっっ!!! 」
「‥‥‥」
‥‥‥え? なにこれ。
ヴァンがめちゃくちゃ気障ったいこと言っているけど、ヴァンって二十代の若い男性かつ超絶イケメンだから‥‥‥、言葉も格好もすごく似合っていた。そのため、店員さんが青くしていた顔を真っ赤に染め上げて腰を抜かしていた。
というか『泣かないで』、ってヴァン、さっきまで泣いてたよね。人のこと言えないじゃん。
「俺の分の服も用意‥‥‥、してくれる?」
「はい♡ 今すぐオーダーメイドでご用意させていただきますぅ♡ 」
ご、語調が明らかに恋する乙女のそれに変わった。そして、一気に裏の方に駆けた。きっとオーダーメイドの準備をしている。‥‥‥いや、そんな時間ないんだけど。
「兵士さん、時間って大丈夫なんで、」
私が言葉をかけようとする前にいつもキラキラ笑顔な兵士さんがこのときばかりは表情を曇らしていた。
やはり、時間が不味かったのだろうか?余計な仕事を増やすな!ってまあ、いいたくなるよね。
私がヴァンに今すぐに言いたい。
「ヴァ、ヴァンサン‥‥‥。」
「お?なんですか?兵士さん。」
「なんてことしてくれているんですか!? 」
あ、やっぱり時間が不味いんだ、
「か、彼女にナンパするとか!! 何しちゃってくれているんですかあああああああああああ!!!!!!!! 」
「「は? 」」
‥‥‥そっち?
「いや、店員さんが泣いていたから? 女の子が泣いたらこうしとけって友達が言っていたんだけど‥‥‥。不味かったかな? あ、あれ?店員さん、彼女だったの? ごめんごめん。」
ヴァンがそう答えているけど‥‥‥、まったく答えになっていない。なんで泣いていたらああなるんですか!?
にしても兵士さんの彼女だったんだ〜。へ〜、ああいう小動物系が好み、
「違います!!! 好きな人です!!! 」
あ〜、それはヴァン、悪いことしちゃっ、
「でも、彼女のことはなんでも知っています!! 身長から体重!! 家族構成に交友関係!! 好きな食べ物に嫌いな食べ物!! 」
「‥‥‥へ、へ〜。」
う〜ん。少しヴァンが引き始めているしちょっと危ない香りがしている気がするけど‥‥‥。
でもまあこのぐらいだったら店員さんとか店員さんの友達に聞けば分かるし、まあ仲がいいなら知っててもおかしくはない、よね‥‥‥‥?
「彼女には一目惚れで!! 自分! シャイなんで今日、今さっき初めて喋りました! 」
「「‥‥‥」」
え? ガチで言っています? 一言も話して来なかったのに身長とか付き合いとか好みとか知っているの? え? 普通にヤバい人じゃん‥‥‥。
シャイでも越えてはいけない一線があるんですよ‥‥‥?
「でも大丈夫です! 彼女のことは毎日守っています!! 後ろから!! 」
ひぇっ。
この頃にはヴァンも危ないものを見る目で兵士さんのことを見ていた。思わずヴァンの背後に隠れた。恐ろしや‥‥‥。
「最近、彼女が友達にストーカーなるものに悩まされているようなので、自分も最近見回りを強化いたしました!! 」
「いやそれ絶対に兵士さ、」
ヴァンが言おうとしているのをヴァンの服の裾を握って止めた。多分言っても無駄だからやめよう‥‥‥。
それに。
「な、なんですってえ!?!? やっぱりあんただったのね!? 」
そこに
「この店に来たときにストーカーっぽい人と森の破壊者と子供が同時に来て怖かったのよ!! 」
「ああ、ハニー、大丈夫だよ‥‥‥。自分が君を守ってあげる‥‥‥。」
「キモっ! それに一番怖かったの、アンタだからね!! 話していて分かったわ! 明らかにあのキモいストーカーはあんたよ!! 」
店員さんと兵士さんとの会話を見ていると店員さんに同情を禁じえない。
「それに『ハニー』とか、私にそんなクサい言葉を使っていいのはあの方だけなのよ!! 」
そう店員さんに指さされたあの方ことヴァンは『クサい言葉』という言葉にショックを受けていた。
「へ‥‥‥? ちびっ子‥‥‥。俺、クサい? 」
「ノーコメントでよろしくお願いします。」
「ちびっ子ぉ!? 」
再び泣き崩れるヴァンに店員さんが抱きしめる。
そして衝撃的な発言をする。
「ああ‥‥‥、高身長イケメン様‥‥‥。好きです。結婚してください。たとえ子持ちでも構いません‥‥‥。森の破壊者と聞いて怯えていましたが、こんな素敵なお方なんて‥‥‥。私、虜になってしまいました♡ 子持ちでも構わないという言葉にも二言はありません!! ええ!! 子供大好きなので!! ああ、でも私達の子供はほしいです!! 子供は何人ほしいですか!? 」
「子持ちぃ!? 」
「子供‥‥‥、何人‥‥‥!? 意味深すぎね!? 」
どうやら店員さんの目には私達が森の破壊者なバツイチイケメンパパとその子供に見えていたらしい。
‥‥‥はあ!?
「ゆううううううううるううううううさあああああああああああなああああああああああああいいいいいいいいいいいいい!!! 」
「ひぃっ!? 」
ヤバい‥‥‥、子供というパワーワードと子持ちのイケメンに誑かされたと思っている兵士さんはヴァンをものすごい恐ろしい目で見ている。わあ! 兵士さんの殺意がバリバリにあるよ! 良かったね!! ヴァン!!
「た‥‥‥。」
「た? なんです? ヴァン。」
「助けてくれえ!! ちびっ子ぉ!! 」
「えー?面白いんで却下の方向で! 」
「助けてくださいお願いします!! 」
「わぁっ!? 」
得物を狙うみたいに目をギラギラさせた店員さんがひっついったままヴァンが私に抱きついてくるものだから倒れてしまった。
「お、重ぉぉぉぉぉぉいっ!! いい加減にしろー!! 」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます