第11話 瓦鶏陶犬!!
「おいおい。大量だぜ! ヒャッホーイ!! 」
「ヴァン。うるさいです。」
「あ‥‥‥、サーセン。」
にしても、多い。
ここからざっと見れるだけでもさっきの犬っころと同じようなのが十匹ぐらいいる。少なくともとつくところがみそだ。どうやらヴァンの命日は今日みたいだ。数が多いのに面倒を見切れる気がしない。
厄介なのが、さっきみたいな大きな剣ばっかりじゃなく、こちらまで飛んできた矢を飛ばす弓を持つ犬や槍、盾を持つ犬など、多種多様でどうやらさっきのは私達の強さを見るための斥候だったようだ。私達が二人だが、さっきの犬っころを私がさくっと倒してしまったため、全ての戦力でこちらに来たのだろう。知能を持っていることがよく分かる。‥‥‥厄介すぎる。
しかも奥の方には強い気配がする。間違いなく上位デモンがあの奥で指揮を執っている。
おそらく兵士さんはこのことを知っていたはず‥‥‥!! だから嫌だったのに!! ヴァンだ! ヴァンのせいだぁ!!
「だからやめましょうと言ったのに‥‥‥。」
「まあまあ、ちびっ子。落ち着け。」
「誰のせいだと!! 」
「いいか? よく聞け。すぐに奴らは攻めてくるだろう。」
確かに今はお互いに遠くから見合っている状態だが、片方が一歩進んだら戦闘開始状態だろう。‥‥‥本気でヴァンの命がなくなりそうだな。まあそこは自業自得だ。
「お前はあんなに多いのは無理だ。そうだろう?」
「別に1人だったら平気ですが‥‥‥。」
「おおおおい!! 見捨てるなあ! 俺のこと!! 呪うぞ!! 」
「はいはい。それで? 」
「‥‥‥俺の扱い適当じゃないか?いや、またそれは後で言おう。俺はあそこのお前いわく犬の雑魚の方をもらう。だからお前はその上位デモンとやらを倒せ。一番強いやつを倒せば指揮系統が乱れて空きが多くなるはずだ。」
「できるんですか? 少なくても十匹ぐらいを相手にしなきゃいけないんですよ? 」
「まあ、見てなって。ようは戦わなければいいんだろ?」
「はあ‥‥‥。」
「それよりちびっ子は。あの、気配がキツやばなやつ、倒せそうか? 」
「まあ、あなたを庇わなくてもいいなら。」
「じゃあ、大丈夫そうだな。だが、気をつけろよ。」
「はいはい。」
そう言い終わると、不格好な笑みを浮かべてヴァンは木々の茂みの方へ走った。
それを見たデモンは半分はそれに気を取られ、やがて逃がすものかとばかり追いかけた。
「なるほどですね。鬼ごっこをする気ですか。」
でも追いつかれたらどうする気なんだろう? まあいいや。食われても私に損はない。それよりも残った半分と‥‥‥、上位デモンを片付けないと。
「さて、わんちゃん、こんにちは! いえ、『わんわん』とご挨拶したほうがよかった? 」
そう言うとグギャアアアアアアアアアアアという咆哮が私の姿をずっと見ていた犬さんたちが挨拶をしてくれた。
「挨拶してくれるの? さっきの犬さんとは違うな〜。さっきの犬さんは無言だったんだよ? シカト? ひどくない?」
そう言っていると私の胸に抱かれて撫でられたいのか一斉に私のもとへくる。
「うんうん。元気なのはいいことだよね。」
よしよし。それじゃあ、
「よいしょっと。」
「ギャウンンンンンンン!!!」
ナデナデ一回目、だね。皆イイコイイコだから、額にあるもんね〜? 宝玉。ナデナデしたら割れるもんね〜? あらま、あまりの私の撫で心地に一匹倒れちゃったね?
さっきの犬っころは愚かなることに全然私と遊んでくれなかったから、遊んでくれるよね?
「ね? 皆?」
そう言うと、気のせいかデモンたちが少し後ずさりしたように見えた。
「「「グ、グギャアアアアア!!」」」
それでも勇気を出して、3匹一気に来たけど、
「そんなに来られると困っちゃうな? 」
そのうちの一匹の腕に駆け上って兵士さんからもらった剣を横に紫電一閃した。
「「「ギャ、ギャオオオオオオオオオオオン!!」」」
「おお? なんて? 早すぎて見えなかった? あ〜、ありがとうありが、っ!!」
矢か‥‥‥。また来た。
少し怯えながらも、何匹ものデモンが横や前にある林に潜伏しながらこちらに矢を向けているのが見えた。ほらまた私に向かって何本も。
「グギャア。」
逃さない、というように前方からもデモンがやってくる。
「はあ‥‥‥。」
これだから嫌だ、魔術抜きは。どんなに実力差があっても数で押し切られる時がある。
「しょうがない。はいはい。」
ため息をついた私は、林の方へかけた。
「グギャア!」
歓喜の声が聞こえる。どうやら逃げたのだと思われたらしい。そう思えばいいよ別に。ただ‥‥‥、
「グギャッ!?」
歓声をあげているうちに弓持ちの君たちのお仲間、何人消えるか確かめてみない?
******
「グギャアアアアアアアアアアア!!!!!! 」
よし。あと何匹かな‥‥‥? って弓持ちはもういないっぽいし‥‥‥。
「グギャアアアアアアアアアアア!!!!!! 」
邪魔ものがいなくなったから随分やりやすくなって一瞬で殲滅してしまった。
残るはあと一匹。
「あとは‥‥‥、君だけ、だね? ね? 上位デモンさん? 」
「グアッ。」
そう咆哮するのは先程と戦った犬たちと変わらぬ背丈で、そしてその背丈に見合わないほどの気配の大きさをしている色違いの二足歩行の犬、いや、これは狼と称したほうがいいだろう。それほどこの上位デモンが強く見える。そのデモンは大きな双剣で、今までの犬が武器2つ持っていなかったことからも力の差が伺い知れる。
ハンッと鼻で笑うような上位デモンに違和感を憶える。普通だったら上位デモンが最前線に出てくるはず、だけど‥‥‥。
「あなた、なんかしてたの?もしかして。」
「グルルルルルルルルルルルルルルッ!!! 」
「はいはい。勝負が先、ね? 」
私が独り言を呟いているときにようやく攻撃を仕掛けてきた上位デモンは‥‥‥。
「グギャアアッ!!! 」
「ッ!? 」
__速い!!
さっきまでの犬とは大違い。今繰り出されたのはデモンの右手に持つ剣を横にバサッと切った。
さっきのわんちゃんは後ろに下がれば当たらないというイージーモードだったけど‥‥‥。こいつは違う。私が後ろに行ったのを見逃さず、さらに私に当てようと切り替えをし、それと同時に左手の剣でも攻撃してきてた。
「あなたもしかして、さっきまでの戦い観察していたの? 」
「グギャアッ!! 」
「ふ〜ん。なるほどなるほど‥‥‥。」
道理で突っ立って何もしてないと思った。コイツは味方をも駒にして自分が勝つために私の戦い方を見ていたのだ。とりあえず距離を置く。これは近接戦は負けそうだ。なら‥‥‥。
ドンッ!! という力強い足が土を蹴る音が聞こえたと思ったらまた一直線にこちらへと向かってきた。
「グギャアアアアアアアアアアアッ!! 」
一瞬のうちに間合いまで入ってきたデモンは私を切り刻もうとして、
「ギャウウウウウウウウウンッ!!! 」
__倒れた。
「まあ、私のほうが速いけどね。ばーか。っていうか重いよ。バカ狼。」
まあ、こんなに速いとは思わなかったけど猪突猛進で来たから剣を槍のように投げて、他の犬っころみたいに額にある宝玉に当てたから、私のもとに来るまでには死んでいます。はい。ご愁傷様です。
「というか、本当に強いやつっていうのは『強い』って思わせる気配を消しているんだよ? 覚えておこうね〜。あと私、犬、嫌いなんだよ。二度と近寄らないでね? 」
そう言いながら、
さて、と。犬、狼退治は案外早く終わったな‥‥‥。身体が結構言うことを聞いてくれるのでとても助かる。
これからどうしよっかな〜。聖句を地道に唱えていってもいいけど‥‥‥。
っていうかもう帰りたいな‥‥‥。このまま尻尾だけ持って帰ろっかな。‥‥‥ヴァンを置いて。
ヴァンがいても面倒だし、探すの嫌だし、ヴァンはこの際、死んでしまったってことで!
幸か不幸かなんか声が聞こえた気がする。
「助けてくれえええええ!!! ちびっ子おおおおおおおお!!! 」
あ、うん‥‥‥。
‥‥‥今、何モ聞コエナカッタ。林カラ何モ聞コエテイナイ。
「賭け事しないって誓うからああああああああああああああ!!!!!! 」
別にそれはどうでもいいんだけど。私のお金を預けたときに使われさえしなければ。
「今度美味しい店を紹介するからああああああああああああああ!!! 」
‥‥‥ん?
「好きなもの買ってやるよおおおおおおおおおおおおおおお!!! 」
‥‥‥ふむ。
「だから助けてええええええええええええええええええええええ!!! 」
「嫌だって言ったらどうしますかぁ? 」
とりあえず大きな声で聞いても返事が返ってこない。声が小さかったのかな?
「しょうがないですねっ!!! 貸イチですよぉ!!! 」
「ありがとううううううううううううううう!!! 」
「その代わりにい!! 約束を果たしてもらいますからぁ!! 」
「‥‥‥」
おのれ。わざと無視したな。
しょうがない。とりあえず声のした方へ向かうべく、林の中に入っていった。
‥‥‥置いていきたいけど、美味しいごはんのためならしょうがないか。本当は置いていきたいけど。
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