〈閑話〉某師匠の独言

(今までの復習みたいなものです。ヴァンside)







 報告があるの。もうどこにいるか分かんないあなたに。



 俺‥‥‥、いや、素直に私と言いましょう。あなたの前では素直でいたいから。


 いつもはちゃんと男らしくしているのよ? ‥‥‥あなたが言ったとおりちゃんと獣族の特徴も隠しているわ。



 今日、私はある山の中にある村を越えて人族の街に商品を売りに行ったの。いえ、行こうとしたの。



 ところが、途中、山を登っている最中に女の子が1人苦しげに倒れていたの。その女の子は白銀の髪の毛に薄い緑色の瞳を持つ、可愛らしい子で‥‥‥、魔力暴走を引き起こしてたみたい。すぐに分かったわ。それで、妖術を使うわけにもいかないし。そこで近くの『教会』支部に行ったの。『教会』なら、魔力暴走の治療にうってつけだから。そういえばあなたはよくいたわね。『教会』に。



 そしてその女の子が目を覚ましたらやけに私のことを睨んでくるの。一応、命の恩人のつもりだったから、なんでそんな顔をするんだろう? って思っていたら、ふと思い出したの。あなたが自殺しようってしたこと‥‥‥。


 それで私は思ったの。ああ、この子は死にたかったんじゃないのかな?って。その女の子は本当に小さな女の子だったから私は思ったわ。何故死にたいのか。それはきっと両親からいじめられているんだと!!


 神父に村の様子を聞くとその女の子は随分村の人に可愛がられていたわ。同年代の子がいないのに死にたいなんてきっと両親が原因に決まっているわ!


 それで故意に魔力暴走を起こして死のうとしたのだと!! 魔力暴走をするには禁呪が一番。まあ、それは誤解だったんだけどね。



 でも私はその女の子に否定されているけれども絶対に両親が虐待していると思ってしまったの。思い込みが激しいことはあなたにも注意されていたのに。馬鹿ね。


 まあ、そんなことを最初は思っていたから、私はこの子を是非引き取りたいと思ったわ。その子を救いたいと思ったの。それに、魔力暴走って、魔力が大きいことでそれが制御できずに起きるのでしょ? そのぐらい魔力が強い子なら商売するときにも楽になるし、何よりもちゃんとした教育を受けさせたかったのよ。魔術の。多少強引な手を使っても私は養子にする気だったわ。




 あなたは今の私を見て『あなたはなんでこうも猪突猛進なのよ‥‥‥』とかよく分からないことをぼやいていそうだわ。




 まあ、そういうわけで、その子の両親の了承をもらおうとその子の家にいったら、なんとその子は私を人族だと思っていたらしく、私が獣族の中の狐の一族だと知ってびっくり仰天! また魔力暴走を引き起こしてしまったわ。




 あなたにも似た経験、あったわよね? あなたも同じことしていたわよね?あのときは私が『教会』のおじちゃまたちにどやされたのよ?しっかりしてよね。もう‥‥‥。




 そして、神父のところに連れて行ったとき、事件があったの。なんとその子はあなたと同じ私達、人族以外を憎む‥‥‥、あなたはそう、『人族至上主義』と呼んでいたわね。採用させてもらうわ。その『人族至上主義』だったの。


 その『人族至上主義』を持つのがダメだって‥‥‥、更にたくさんの魔力を持っていて危険だって、そこの『教会』の支部の神父はその子を殺そうとしたわ。なんとか妖術で切り抜けられたけど。焦った‥‥‥。あの神父、確か王都で見た気もしなくもない‥‥‥。もう‥‥‥、こんなことばっかりしているから左遷でもされたんじゃないの!? なんとかしといてほしかったわ!




 ああ、話がそれたわね。その子は私を憎んでいると、『人族至上主義』だとそうはっきりと言ったわ。そして興味深い話を聞かせてくれたわ。



 なんとその子は7年後の未来から来たそうよ。しかも人族とそれ以外‥‥‥、その子は『亜人』といった、人族以外が戦っているらしいわ。ふふっ? 驚いた? 私も未だに眉唾ものでね‥‥‥。それでも、話はしっかりしているわ。それに‥‥‥、あの熱量は本物だから信じることにしているけど要観察ね。でも、私はこうも思うわ。あなたがあのままでいたらその子のいうような未来だったでしょうと。どうなんでしょうね。


 そして私は男で人族のその子の師匠だったらしいわ。ちゃんと化けられていたみたいで安心だったわ。私が女というとその女の子は驚いていたわ。


 彼女が言うにはかなりキツイ性格をしていたらしいけど‥‥‥。そうね。あなたとのことを引きずっていたら、あなたがあのまま変わらなかったら私は人族を信用せずぼったくろうと思うでしょう。それぐらいあの事件は衝撃的だったわね。本当に‥‥‥、あの子のいう『未来』は‥‥‥、ありえる話ばかりだわ。



 そしてその子は『勇者』なるものを殺すと決めているらしいわ。でも、それは‥‥‥、とても悲しいことだって分かっている。私が‥‥‥、そうだったから。できればやめてほしいわね。





 とても彼女は‥‥‥、エリースはあなたと似ているわ。



 エリースは本当に私、いえ人族以外のことが全員嫌いみたい。本当に復讐したいみたい。


 私はあの日のことを後悔しているの。だから、この子だけは『人族至上主義』に縛られてほしくないの。私は、この子を自由にしてあげたい。あなたにできなかったから。あなたは不思議と自分で自由になれたみたいだけどこの子は本当に小さいわ。だから‥‥‥、助けてあげて。どうか。



 長くなったわね。ごめんなさい。あなたは私のこと嫌いだったからこんなに長々喋っても迷惑だった‥‥‥、よね。でも、本当にあなたのこと‥‥‥。いえ、やめておきましょう。これをいうときはあなたと会えたときだけね。




 それじゃあ、おやすみなさい。『’’無能’’の巫女』。もう二度と会えぬ我が親友よ。











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