第二章
第8話 入場料金!!
「ん、あ、あれ? 」
私‥‥‥、寝てた‥‥‥? あれ? 土の上?
え、な、なんて‥‥‥、贅沢な場所なの!?
え? こんな贅沢な場所に寝ていたの!? いつも寝れないか、寝づらい場所でしか寝れないのに!!
「うん? 起きたのか?ちびっ子。」
「ちびっ子はやめてください。ヴァン。」
ヴァンはもうとっくに起きていたのか身支度は出来ているみたいだ。村に来たときみたいに商人の男の服を着ていた。
しかしフードだけは被られていなかったからか、顔の全体や髪型がはっきりと見えた。私はそのとき、彼女の顔をしっかり見た気がする。初めて会った人みたいに思える。
「‥‥‥ヴァン? 」
「ああ? 何だ? 」
「‥‥‥ヴァン、ですよね? 」
「どうしたんだよ?ちびっ子。」
「‥‥‥別に。」
ヴァンの顔の造形はなまじ整っているのはフードを被っていても分かる。だが、初めてヴァンの髪や目などまじまじ見るので‥‥‥、ちょっと調子が狂ってしまう。
その髪はダンディライアンと言われるような、たんぽぽのような明るい黄色を輝かせた金色だった。男の格好をするためかその髪は一般的な女性よりかは短いものだった。そして瞳は髪と同じ色だが、一番目につくのは違う場所だ。
私は彼女の目下がひどいことになっているのをみた。‥‥‥あれって隈?
「‥‥‥元気ですか?」
「は? げ、元気だけど‥‥‥。どうした、ちびっ子。意味のわからないこと言い出して。」
「‥‥‥いえ、何でもありません。」
「さっきから変なやつだな‥‥‥。あ、フードを被ってなかったな。悪かったよ。」
きっとヴァンは寝れなかったのだ。寝ずの番をしていたのか、ただ単に眠れなかったのか‥‥‥。
私のせい、なのかな? ヴァンの持つオブジェクトバッグを焼いたから、安眠グッズとか、身の安全を守るための道具を取り出せず‥‥‥。
いや、わ、私が気に掛ける問題じゃないし!!
「あー、今から街に行くんだけど‥‥‥、ちょっと問題があってな‥‥‥。」
「問題とはどのようなことが? 」
「その‥‥‥、街のある方角が分からないことだ。何回かその街に行ったことはあるが‥‥‥、いつも地図を持っていたしな。」
‥‥‥致命的すぎる。
私のせいだ‥‥‥。気に入らないとかいうだけでオブジェクトバッグを炭にしちゃった私のせいだー!!
だめだめ!! 亜人に関連することで責任を感じちゃ!! ‥‥‥いや、でも私が悪いし‥‥‥。
「とりあえず、黒パンは今は食べるな。‥‥‥今日中に街につけるか不安だからな。一応、街が近くにあるところに移動したはずなんだがな‥‥‥。」
「‥‥‥。」
******
「おー! 俺の勘はすげー!! 」
なんとか師匠の勘に頼って今日中に街の入り口までたどり着けた。
「‥‥‥。」
「ちびっ子? 黙ってどうした。」
「いえ、別に。」
‥‥‥別にこんなことになった責任とか感じてないし。
「さ、街に入ろうぜ。固くなんなよ。その街には亜人は滅多にいない。人族の国の真ん中の真ん中にある街だからな。気を楽にしていこうぜ! 」
「‥‥‥はい。」
そう私が固くなっている理由を誤解したっぽいヴァンと街に入ろうとしたが‥‥‥、
「二人で1500ハウツだ。」
「ふ、ふたりで1500ハウツ‥‥‥。税金か‥‥‥、忘れてた。なんとかならないか?」
街の入口にある門を見張る兵士さんに止められた。理由は‥‥‥、街に入るための税金だ。
兵士さんにヴァンは懇願するが‥‥‥、街の兵士さんはなんとなく察したらしく哀れみの表情で首を横にふるだけだ。
「エリース!! 金持ってないか!! 金だ!! 後から返すから!! な? 持ってないか!? 」
こんな大人になりたくない‥‥‥、と思うけど、これってもしかして‥‥‥。
「もしかして、オブジェクトバッグの中にお金が入っていたのですか!? 」
確かにヴァンは他に荷物を持っていない。その可能性が極めて高い。
私のせいで街にはいれない‥‥‥。い、いや、亜人になんて謝らないもん!!
「ああ? 何いってんだ? ちびっ子。元々そんな金はなかったぞ? 」
ほ、ほら!! ヴァンだってそう言って‥‥‥。
__は?
「どういうことですか? もう一度言ってください。」
「だ・か・ら! 元々そんな金はなかったって。仕入れが終わったばっかで金が無いんだよ。ちびっ子の村で商品を売れば行けるかな‥‥‥。って思って大人の遊びに生活費をちょびっっっっっとだけ使おうとしたら、いつの間にか金が逃げ出していてな‥‥‥。」
「それは逃げ出したんじゃありません! あなたが使ったんです!! それより大人の遊びって‥‥‥! 」
ま、まさか、そーゆーお店であはんでむふんな感じでぱふぱふしたのですか!? な、なんと破廉恥な!! それにそーゆーお店って大抵が女性だけど‥‥‥、まさか‥‥‥。
話だけはそーゆーお店が存在することは知ってたけど‥‥‥! 巻き戻る前は亜人との戦争で血を見ることがあったため、そーゆーお店を求める人が多かった。
流石に私は『教会』の大いなる教えに従う勇者の仲間だったから清廉な身だ。だったけど‥‥‥! 確かにそーゆーことを欲する気持ちもわからなくもないというか‥‥‥!!
「おっとちびっ子は大人の遊びを覚えんなよ。ちょっと依存しちまうことがあるからな‥‥‥。上手に遊ばなきゃならん。そのために俺が手取り足取り教えてやんよ。」
て、手取り、足取り‥‥‥!?!?
な、なんと!! それはいけないです!!
というか、わ、私をそーゆー目で見てたのですか!? だから、助けたと!? 確かに
で、でも女の子同士でど、どんな‥‥‥!!
ゔぁ、ヴァンが教え‥‥‥!?
「お、おい?ちびっ子?どうしたんだよ?顔を赤くしたり険しくしたり‥‥‥。忙しいやつだな‥‥‥。」
「神様お許しください汚れたエリースをお許しください違うんです決して亜人と交わりたいなんてそんな唾棄すべき行為をエリースはしたいなんてそんなこと思いませんはしたないことを」
「‥‥‥ちびっ子? 何いってんだよ。そんなに賭け事が嫌かよ。」
は? かけ‥‥‥、ごと‥‥‥。
「さっきから言っていた『大人の遊び』というのは賭け事なのですか? 」
「そうだぞ? 他になんだと思ってたんだよ、ちびっ子ちゃんは? 」
「は? 死にたいんですか?」
「こわっ!? ど、どうした‥‥‥、ちびっ子‥‥‥。目がマジで怖いぞ‥‥‥? 」
「
「ひいっ! ち、ちちちちちちびっ子!? お、俺はまだ死にたくないぞ?! 」
ったく‥‥‥、ややこしいことを言うから‥‥‥。まったく、賭け事でお金をするなんて‥‥‥。
「は? 賭け事でお金を失ったんですか?」
「いや、さっきからそう言って‥‥‥。」
汗をたらたらと書いているヴァンに私は口を開いた。賭け事でお金を失うなんて‥‥‥、この先が不安になる。
ああ、不安だわ。ヴァン。不安で怖くて、つい‥‥‥、腹が立ってしまったわ。
「座りなさい。」
「す、座る‥‥‥? いやここ街の入口で入ってもないから石とか転がっていて痛いし、第一まだ兵士さんが見ていると言いま、」
「座りなさい。」
「はい‥‥‥。」
「何故、ただ座るだけなのですか。こういうときは『教会』言われている最終奥義『土下座』につながる座り方、『正座』をするべきにきまっているでしょう。やっぱり亜人は、」
「はいいいいいいい!!!!! ごめんなさいいいいいいいいいいい!!! 正座します!!!!」
「よろしい。さて、いいですか? ヴァン。お金は大事に使うべきです。お金は今後必要になったときのために貯めておくべきです。散財してはなりません。大体、私は10歳なのですよ? 私が普通の10歳じゃないので良かったですが小さい子にそんなものを教えてこれからの道を誤ることがあったらあなたは責任を、」
******
半刻ぐらいずっと説教をしていると、さっき私達を止めた兵士さんが話しかけてきた。
「嬢ちゃん嬢ちゃん、その辺にしておきなよ。」
「これは私の今後にも関わるのですが‥‥‥。」
もしお金を得ても、賭け事でお金を使われてしまうなんて冗談じゃない。
今のうちに調きょ、こほん、教育をしなければ。
「まあまあ、大の大人でも遊びたくなるときだってあるさ。なあ?旦那?」
「そ、そうだよ!! ちびっ子!! だ、だから!! 勘弁してくれ!! 」
そっと出された助け舟に必死に乗り込もうとするヴァンの姿にため息しか出ない。
「はあ‥‥‥、まあ、兵士さんがそう仰るのならば。それで私達に何かご用で? 」
「街の中に入りたいんだよな? 」
「まあ‥‥‥、入りたい、ですね。」
入らないと私達は一文無しのまま、食料を得られず餓死するだろう。『食べ物』なんてこの辺りには少ししかない。その『食べ物』をここに来るまでにヴァンにオススメしたら真っ青な顔で断られたし‥‥‥。
私はともかく、ヴァンは街に入らなければ生きていけないだろう。
街にさえ入れれば仕事の一つや2つぐらいはあるだろうし。
「なら、うまい話があるぞ? 聞きたいか? 」
「‥‥‥」
大体こういうときの『うまい話』って美味しくない‥‥‥、むしろ嫌な話しばっかりだ。
巻き戻る前の旅のときにひどい目に会いすぎたからよく分かる。こんなの断ったほうがいい。
「お断、」
「え? 本当ですか!? 兵士さん!! 聞きます聞きます!! 」
「なっ!」
あ、バカ‥‥‥。さっき私から助けられた恩義からかヴァンが兵士さんを尊敬の目で見てしまっている。
『死にたくないなら今すぐ撤回してください』、とヴァンに言う前に無常にも話は進められる。
「ふっ。聞きたいか。」
「はい!! 」
「それはだな‥‥‥。」
バカ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
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