第6話「妖対妖精」

赤い月に照らされて、美しい紅に染まるみずうみ

こんなに綺麗な景色なのだから、心を落ち着かせのんびりとサンドイッチでも食べたい所なのだが、今日はそうもいかないらしい。

何故なら、今自分の前にいる者は、この超世界の中でもトップレベルの実力を持つ妖であり、白銀の長髪をなびかせながら敵を一時ひとときで斬殺する姿から通称「白風しらかぜ」と呼ばれる鎌鼬かまいたちなる妖であり、その白風と門番をサボった事による裁きを回避するために自分は戦わなければならないのだから。

「レッタは可哀想な妖精ですね。殺しはしませんが、これからこの空閃くうせんに少しずつ切り刻まれるんですから」

「は?当たらなければ傷も何もできないよ。140年も生きるとそんな常識すら忘れるんだ」

「はい、もう貴方は細切れのミンチにすると私の中で決まりました」

僕が彼女の年齢を弄ったのが相当癪に触ったのだろう。彼女は鎌鼬なのに鬼の様な形相でその鎌を振るう。

「ちょ、ごめん、ロルフさんこれ冗談だから許してよ!」

「言っていい冗談と言ってはいけない冗談も分からないんですね。アハハハハ」

そういって笑う彼女の目は笑っていない。

「私の能力は貴方も知ってるとおり、空気さえあればどこでも斬撃や台風を生み出せる。貴方が避ける前に切り刻んで終わりよ」

「でも、その風より早いスピードで避けてしまえばいい話だろ?その能力の特性を僕が知らないと思ってるの?」

「そんな訳ないでしょ。ハッタリに決まってるじゃない。あんたの化け物並みの身体能力には追いつけないからね」

そう言って僕の注意を引きながら彼女は僕のいる場所に斬撃を生み出す。

だが、僕はその生み出された斬撃をいとも容易く避け、そのまま彼女の後ろに周り頸動脈に指を当てた。

「チェックメイトだね。クイーンさん」

「あなた本当にポーンなの?」

「さぁね、答えは自分で見つけるから答えなんだよ?」

さっきまで赤い月に照らされ、紅く染まった湖の水面みなもには、ひざまつく妖と笑顔の妖精の姿が映っていた。

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超世界の者たち 白悟那美 破捨多 @tukimiko

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