第4話「妖精と妖」

小野江に案内されながら進んで行くと小さな広場が見えてきた。

「ここだ、ちょっと待っててくれ。もうすぐお前の相手が到着するはずだから」

「分かった。それにしても、なんかここだけ凄い荒れてるな」

広場は進んできた綺麗な自然を堪能できる森には合わないぐらいにそこら中の木が倒れていたり、地面がえぐれていた。

「ここは結構昔から練習試合とか戦闘大会バトルゲームで使われていたからな」

「戦闘大会?」

「説明すると、年に一度だけ開催される、超世界最強を決める大会なんだよ」

「へぇ、そんな大会があるのか。でも、そんなやばそうな大会をしててなんでここだけが荒れてて、ここ以外は綺麗なんだ?」

「それは、結界を張ることの出来る能力を持ってる奴がいてな、そいつの結界でここだけにしか戦いの影響が出ないようにしてるんだよ。そいつがいなければ今頃森は消えてる」

「結界を張る能力者とかもいるのか。本当に凄い世界だよなここって」

「そうだな、お前も自分の能力が分かって、戦い向きなら今年の大会に出て欲しいな」

「まだ大会の話引っ張るのな」

「俺は戦闘大会ガチ勢だからな。第1回から俺はここで見てきたんだ。そりゃこの話は語り尽くせるぜ」

「そんなに好きなのか、俺も参加出来るならしてみたいな」

「おう、お前の能力期待してるぜって、話してたらちょうど来たな」

「ごめんね。ちょっと遅れちゃった」

そう言って、森の奥の方から小学生中学年くらいの身長で緑色の髪と目をした何者かがこちらに近づいてきた。

「いや、いきなり呼んだのは俺の方だから、気にしないでくれよ。こっちの方こそ態々来て貰って悪いな」

「ううん、別にいつも暇だから呼んでくれて嬉しいよ」

「なら良かったぜ!早速なんだけど、こいつの能力を知りたくてな。戦うならお前が適任かと思ってよ」

「なるほど、君が裂九真君だね。僕は妖精族のレッタって言うんだ、よろしくね」

「こちらこそこれからよろしく、レッタ」

「じゃあ、早速手合わせお願いします」

「うん、初めての戦いだから緊張するけど頑張るよ」

「2人共頑張れよー」

「それじゃあ、まずは僕に一撃いれてくれるかな?君の今の力を知るための戦いだからいきなり僕が攻撃しても良くないだろうし」

「わ、分かった。やってみる」

(えっと、とりあえずパンチでもやってみようかな。手を握って、相手をよく見て、殴る方の腕を引いて、少し距離があるから飛び込んでいく感じでいいかな?)

「せーのっ!」

俺はパンチを当てようと少し地面を蹴りレッタの方に飛んだのだが、次の瞬間、俺の目の前にレッタの顔があった。

「えっ?ちょっ!」

俺は勢いよくレッタに直撃し鈍い音を奏でながら倒れ込む。

「おいおい、大丈夫かよ!」

「痛たたた、何とか大丈夫」

「こっちも無事だよ。まさか、いきなり高速で突っ込んで来るとはね」

「いや、パンチをしようと思って距離があったから飛びかかろうとしたんだけど、自分でもびっくりだよ」

「その速さが出せるのは相当だぜ。お前は結構強い方なんじゃないのか?」

「僕もそう思うよ。少し地面を蹴っただけであのスピードが出るなんて、超世界の中でも相当だよ」

「そ、そうなのか?」

「うん、相当いないよ。でも、一応ちゃんと攻撃を当ててよ。今のじゃスピードが凄いって事はわかっても実際の攻撃力は分からないからね」

「うん。じゃあ今度はもう当たる距離でパンチを打つよ」

「今のを見てとりあえずガードはしといた方がいいとだけ言っといてやるよ」

「言われなくてもガードはするよ」

「じゃあ、いくよ!」

「うん!どんと来て!」

「せーのっ!」

バキッ!ヒューン!ドゴッ!

「ガハッ!」

「レッ、レッタァァァ!!!」

俺のパンチはレッタのガードしている腕に直撃し、その後レッタは猛烈な勢いで吹き飛んでいき、木にぶつかった。

「だ、大丈夫!?ごめん!やり過ぎた」

「お前どんな力してんだよ!本当に人間界から来た奴かよ!超世界に来てこんなにパワーアップするなんて、お前の潜在能力って相当高かったんだな」

「いや、本当に俺もびっくりしてるんだよ!

だって人間界にいた時じゃ、友達と喧嘩してもボコボコにされてたぐらいだし」

「痛い、ガチで死ぬかと思ったよ」

「おぉ、レッタ!無事か?」

「いや、無事っちゃ無事だけど、能力なかったら普通に死んでたよ」

「いやー、まじでお前で良かったよ」

「レッタの能力って、そんなに防御特化なの?」

「いや、防御特化って訳ではないんだよ」

「そうそう、僕の能力は相手の...ッ!危ない!伏せて!」

「なっなんだ?!」

スパッ!ドシン!

レッタが急に叫び、俺と小野江はそれに従って伏せる。そのすぐ後に俺たちの上を何かが通過していき木が倒れる。

「誰だ!いきなり攻撃してくるなんて物騒な野郎だな!」

俺たちが何かが飛んできた方向を見ると、そこには鎌を持った長い白髪の女が空を飛んでいた。

「失礼、我が主からの命令によりそこにいる新人さんの命を消しに来させて頂きました」

「何!そんな事はさせねぇぞ!」

「そうだよ!それに、その鎌と空を飛ぶ能力は、確かブラッドの所の!」

「えぇ、高貴こうきなるあるじ、クエレア·ブラッド様に仕えし者ロルフ·ブラッドでございます」

「待ってくれ!話が追いついてないんだが、一体なんで、そのクエレアって奴は俺を殺そうとしてるんだよ!」

「それは、貴方が汚らしい我らがあやかしの敵である人間だからです」

「は?人間だから殺すなんてこの世界で通るわけがないだろ!」

「それが通るんだよ!この超世界では争いをしてなんぼだろう」

「その通りだよ。お兄様の言う通り。貴方達が強ければ私たちに殺されずに済むだけの話なんだよ」

「次から次へとなんなんだ!」

「あ、あいつらは!」

「やあ、新人の人間よ!我が名はヴァンパイアのクエレア·ブラッド。そして、私の横にいるのが妹のヒズカ·ブラッドだ」

「よろしくね!」

「あぁ、よろしく。だが、一体どういうことなんだよ!いきなり殺すって」

「我々妖は実に人間が嫌いでね。人間の住む世界に嫌気がさしてこの超世界に移住したのだよ。それ以来超世界に人間が来たら私達はその人間を殺しているのだよ」

「そんな!たまたま迷い込んだだけの人間だっているんだぞ!」

「まぁ落ち着きたまえ。私も悪魔じゃない。私達とゲームをしよう」

「ゲーム?」

「あぁ、そうだ。君の横にいる小野江ならこのゲームは知っているだろう」

「そうなのか?小野江?」

「あぁ、知ってるとも。こいつらのなんとも趣味の悪いクソゲーをな」

「ルールは簡単。今から我が妹、ヒズカの能力である想像の夜グリモワールナイトで1時間の間、ここら一帯を夜にする。その1時間の間、我々妖は夜の時間により本来の力を取り戻す。そして、その本来の力を使う我々から1時間逃げ切って貰うというゲームだ。我々に殺されたら貴様の負け。1時間逃げ切るか私を倒す、または殺せば貴様の勝ちだ」

「ただのデスゲームじゃねぇか!」

「まぁまぁ、そんなに怒るなよ。今回は特別に君の方はその2人も参加していい事にしてやるつもりだ」

「勿論、言われなくても俺は参加するつもりだったがな!」

「それは僕も同意見だよ!」

「やらないって選択肢はないみたいだし、避けては通れないみたいだな。よし、その勝負受けてやる!」

「ハッハッハッ!実にいい心構えだな!

こちらも燃えてきたではないか!」

「準備できたよ兄様!いつでも夜に出来るよ!」

「あぁ、ありがとう。我が愛しい妹よ!」

「私も準備はいつでもOKでございます」

「よし、それではデスゲーム開始スタートだ!」

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