n=21 百円均一
Uさんは近所の百円均一ショップでパートをしている。平日の朝9時から昼12時までが勤務時間だ。
その店は交通量の多い道沿いにあり、平日の午前中にも客足が途絶えない。レジ対応に追われて品出しが終わらない日さえある。
そんなある日のことだ。開店してから数分、一人の男が商品を持ってレジに現れた。
髪を七三に分け、スーツに身を包んだ、会社員然とした男だ。そしてカウンターに置かれた商品は、万能包丁だった。
Uさんは一瞬ぎょっとしたが、顔に出さないようレジ業務を進めた。
なんらか急に包丁が必要になったのだろう。
レシートを受け取って感謝の言葉を述べる男の姿を見ると、そう思えた。
男はパッケージングされた包丁をビジネスバッグに仕舞うと、そのまま店を出ていった。
次の日の朝、見覚えのある客がいた。
レジに万能包丁を持って来た瞬間、Uさんは気が付いた。目の前のサラリーマン風の男が昨日の朝も包丁を買っていったことにだ。
男は昨日と変わらない丁寧な所作で支払いを済ませ、包丁をカバンに仕舞うと去っていた。
Uさんは首を傾げた。2日連続で包丁を買うことなどあるだろうか。昨日買った包丁に何か不備があったとか?
その日はそんな想像をしながら働いた。
そのまた次の日。スーツ姿の男が開店と同時に入ってきて、包丁を一本買っていた。
その次の日も、その次の次の日も、男は毎日開店と同時に現れて包丁を買っていった。
意味分かんないですよね、その人まだ毎日包丁買いに来るんすよ。
Uさんはそう語った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます