n=17 空き地の電話ボックス

 Qさんの子供の頃の思い出。

 近所の空き地の隅に、古ぼけた電話ボックスが据えられていた。その電話ボックスには少し妙な所があり、Qさんは興味を持っていた。


 何が妙かと言うと、その電話ボックスには内側からガムテープで目張りされていることだ。中に見られては困る何かがあるのか、外から中の様子を伺わせないように、内側からガラスにベタベタにテープが貼ってあった。前後左右のガラス面に大量のテープが貼られている様は、異様としか言いようがない。


 そこまで隠されると中が気になる。Qさんはそう思った。しかし興味があってもボックスの中を無理に覗く勇気はなかった。だから、中に何があるのかと悶々とする日々を過ごしていた。


 だが、ある日気付くと電話ボックスは無くなっていた。空き地から綺麗さっぱりと姿を消していた。そこに電話ボックスがあったことを示すものは、ボックスを支え続けたコンクリの土台だけだった。

 結局、中に何があったのかは覗けずじまいだ。


 なんでテープ貼ってたのか、なんで急に撤去されたのか。たぶん理由を知れば「なんだそんなことか」ってなるんでしょうけど、未だに気になるんですよね。

 Qさんはそう語った。

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