n=15 脚立

 Oさんが一人暮らしを始めた年に体験した話。


 ある日の朝、部屋の蛍光灯がブツリと点かなくなった。仕方なく家電量販店に車を走らせ、代わりの蛍光灯を買って帰る。そのまま部屋に戻るついでに管理人室に寄って、脚立を借りた。


 脚立と蛍光灯を抱えて自室に帰り着く。ベッドに寝転がり一息吐きたいところだったが、一旦休憩するとそのまま寝てしまいそうだった。重い体を引きずり部屋の真ん中に脚立を展開する。それに上り、切れてしまった蛍光灯を掴み取り外す。積もっていた埃が舞い散った。

『管理人さん綺麗に掃除してくれよ……』と独言ながら脚立を降りて、床に古い蛍光灯を置く。代わりの蛍光灯を段ボールから取り出して再び脚立に上る。


 瞬間、ガタガタッ!ガタッ!と脚立が揺れ始めた。地震?違う、脚立が揺らされてる?訳もわからず、硬直して耐える。

 1、2分ほど経ったのだろうか。気が付くと自分の体の震え以外、揺れは収まっていた。おっかなびっくり、ゆっくりと脚立を降りる。当然、部屋には誰もいない。スマホの画面を見ても、緊急地震速報など来ていない。


 結局なんで揺れたのかわかんないんですよね。

 Oさんはそう語った。

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