n=14 霊能力
幼い頃からNさんには、他の人には見えない人が見えるという。それは、周りの人と違い半透明で、何も喋らず、ただぼーっとその場に立ち尽くす。
Nさんは成長するにつれて、自分には幽霊が見えているのだ、と自分を納得させるようになっていった。
そんなある日。家庭の事情で引っ越しを迫られたNさん一家は、新居を見つけるべく、真新しいマンションの一室を内見していた。
オートロックの扉を開けたその向こう側の、真っ白い壁のリビングルーム。埃も汚れも見当たらないその空間は、前の住人の気配を一切感じさせない。部屋の中央に立ち尽くす半透明の女以外は。
首にケーブルを巻き付けたパジャマ姿の女が、フローリングを見つめ左右にゆっくりと揺れている。不動産屋も自分の母親もそんな異常な光景に見向きもしない。
また幽霊が見えてるんだ。Nさんは辟易して、母親にコソッと耳打ちした。Nさんの母親も慣れたもので、不動産屋との会話をうまく誘導して内見を打ち切らせた。
『不動産屋問い詰めたらわかった。あの部屋で前に自殺があったらしいよ。綺麗に掃除して誤魔化してたみたいだけどね』
帰りの車内、母親はどこか楽しげに語った。 Nさんはやっぱり、と思った。あの女は明らかに首を吊った霊だ。
『自殺の方法も凄くてさ、わざわざ包丁で腹切って死んだんだって。切腹のつもりだったのかな』
母はそう続けた。え、若い女が首吊ったんじゃないの?と聞くと
『いや、おじさんの割腹自殺だよ?』
じゃあ私が見たものって何?
Nさんはそう語った。
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