n=6 素足厳禁

 Fさんの家には独自のルールがある。

 家の中でも、靴を脱いではいけない。

 何も西洋にかぶれているわけではない。実利のために靴を履いているのだ。

 ご飯を食べるときも、眠るときもダメ。お風呂に入るときでさえ、マリンシューズを履くという。

 

 なぜこんなルールがあるのか。

 Fさんの家では時折、何か得体の知れないものが足に触る。水に濡れた毛むくじゃらの獣のような感触だそうだ。ハッとして足元を見つめても、何もいない。濡れた獣に触られたような感覚だけが残る。


 Fさんやその家族は何度も、その足に触るものの正体を確かめようとした。しかし足に触れる感覚はあっても、触れるものの姿を見ることはまったく出来なかった。

 

 それが気味悪く、Fさん一家は常に靴を履いているという。


 物心ついた頃からそうだったから、もう慣れた。

 Fさんはそう語った。

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