第4話 手放せない想い
夜明け直ぐに目が覚めた。アダムに言われたように早めに床につくと、すんなりと夢に落ちたおかげだろう。頭も昨日よりずっとすっきりとしている。悲しみは消えたわけではないが、誰かのためにと思えると不思議と受け入れられる気がした。
ベッドから起き上がり窓際に行くと、白い暁に照らされて遠くに見える山肌が青々と輝いている。
(今日で全てが終わる)
太陽に向かって手を組み無事に終わるよう祈りを捧げた。
新しいドレスに袖を通し、新調した靴を履いて生まれ変わったような気持ちになる。これを機に新たな道を探そう。他に嫁いでも良いし、お兄様の力になれるようにもっと勉強しても良い。王族の地位を捨てて遠くの地に行ってみるのもいいかもしれない。
(とにかく忘れられることならなんでもしよう)
前世のベルのように道を外して不憫な死を招かなければいいんだ、と鏡に映る自身に言い聞かせるように睨みつけた。
「さあ、できましたよ!」
まとめ上げた髪を確認したアビーは満足気に何度も頷いた。
「ベル様、髪飾りですが、国王陛下から贈り物としてこちらを賜りました」
アビーは箱の蓋をあけてベルに見せた。そこには目を惹くほど大きく赤い薔薇の飾りがシルクの上に置かれていた。
「お兄様がこれを?」
「きっと良くお似合いですよ。こちらを御髪に添えてもよろしいでしょうか」
「ええ。とっても素敵ね」
右耳の斜め上に飾られた赤い薔薇の堂々とした鮮やかさはベルに力をくれている気がした。
王城外は賑わっていた。城壁の門を通ると城門に続く幅の広い石畳が敷いてある。普段は入ることが出来ないその場所に、王の姿を見る機会だと民衆が集まって来た。石畳の脇から城門の前は騎士が石畳から一歩でも踏み外さないようにと頑丈に守っている。
城門の真上に民衆に顔を見せるためのテラスがある。弾けるようなトランペットのファンファーレと共にざわついていた民衆は一同口を閉ざした。テラスにアダムとベルが姿を現すと、こぞって目線をあげる。
「わが国民、皆のおかげで無事にサマーパーティーが執り行われることとなった。今一度感謝の意を示そう。今日は日ごろの憂いを忘れ存分に楽しんでくれ」
短い挨拶を終えると、宴の始まりの合図に王城のてっぺんにある鐘が王都全体を響かせた。民衆は大きい歓声をあげた。アダムとベルは彼らの歓声に応えて笑顔で手を振ると鐘に負けじと一段と大きな喝采に包まれた。
アダムたちの後ろで控えていた近衛兵が「中へどうぞ」と合図を出してから、手を振るのをやめて城内へと戻る。姿を消しても歓声は暫く止まなかった。
この後城内では貴族たちのティーパーティーが執り行われる。ここでの主役は王立学校に通う生徒である。始まる前にアダムは別室で待つ他国の賓客への挨拶があるとベルと別れた。
そこにレヴィアンの家族も来ている。本来ならば共に行き挨拶をする予定だったが、アダムの計らいで急きょベルは見合わせることとなった。失礼にあたると承知してはいた。しかし昨日の今日で婚約破棄のことを気にしていないわけではないので正直ほっとした。
アビーと共にティーパーティーが執り行われる『安らぎの間』の近くの控室で待った。待っている間、何度もドレスにほつれはないか、髪は解けていないか、とアビー以外にも数人の侍女が目を凝らして確認をする。ベルは立っているだけとはいえ、宴が始まる前から気疲れしそうだった。
確認が終えると侍女は隅で控えた。ベルは疲れをとろうとアビーが用意した紅茶を一口だけ飲み喉を潤した。少し一息がつけるかと思ったところに近衛兵が迎えに来た。
「いってらっしゃいませ」
それまではパーティーには参加できないアビーは心配そうにしていたが、笑顔を浮かべながら頭を下げてベルを見送った。
安らぎの間は、王立学校が出来てから、何代後かの聖女が作らせた部屋だという。本来は名前の通り聖女のための憩いの場だったものが、時を経て学生の社交場に変わった。それから学生が中心のティーパーティーも例年此処で行われる習わしとなった。ただのお茶会とは言えこれは社交界デビューの前の練習、いわば模擬のパーティーだ。模擬とはいえ国を支える貴族が集まるの、時にはここで貴族に見初められる女学生もいる。
近衛兵に案内された安らぎの間の丁度隣に繋がる控室に着いた。
「あ」
思わず声をあげる。そこにはアダムとユリが待っていた。
「ベル様!お久しぶりです。素敵なドレスですね!」
「ご、御機嫌よう、ユリ様」
「ご、ご機嫌よう」
ユリは慌ててベルの仕草を真似してドレスを持ち上げて挨拶を返す。
「ごめんなさい。練習したのに思わずはしゃいだ声を出してしまって」
恥ずかしそうに俯いて笑っていた。恥じらい顔ですら可愛らしくみえた。所作など気にならないように感じた。学校のユリよりも今日は随分華やかな印象がある。軽くおしろいをはたいた薄化粧に、薄紅色のチークは花が咲いたようだ。唇も本来の色を活かして遠慮がちに色を差していた。
「ユリ様もとてもお似合いですよ」
「本当ですか」
ぱっと花開かせた笑顔はとても眩しかった。そのドレスも髪飾りも、薄化粧だって、レヴィアンの為に施されたものだろう。ベルは心臓に針を刺されたような痛みを感じた。
此処が正念場だ。すでに婚約が破棄された今、投獄エンドは避けられたであろう。しかし油断は出来ない。ここでユリとレヴィアンに歯向かうようなことをすれば投獄エンド以上の災いだって降りかかる恐れがある。ベルは気を引き締めて襟を正した。
「そろそろ行くぞ」
アダムはユリの手を取ってドアを潜り、歩みを進めた。その後にベルが続く。宮廷楽団は花を添えるように国歌を軽やかに鳴らした。ユリは慣れない雰囲気に目をきょろきょろと動かし、アダムの手に手を添えたまま転ばないようにと気を付けて足を進めた。
「すでに聞き及んでいるとは思う。数か月前、召喚士によりこの世界に降臨された聖女は、この度崩れかけた結界を見事張り直してくれた。こちらが、聖女ユリである」
アダムがユリに目を向けると他の者も同じように一斉に彼女に視線を注ぐ。ユリは小刻みに動いていた目玉を、今度は首を右へ左へと動かした。
「落ち着いて」アダムに背中を支えられるとユリは安心して頷き前を見据えた。
「ご紹介にあずかりました、ユリ・エンドウと申します。私は異世界からこの地にやってきました。初めは右も左もわからず皆さまにご迷惑をおかけしていました。今でも不慣れなことは少なくありません。その度にまた多大なご迷惑をおかけすることもございますかと思いますが、この国のために心を尽くします。若輩者でございますが、どうぞよろしくお願いします」
たどたどしいスピーチはユリのお辞儀で終わり、拍手が鳴り響いた。ユリは受け入れられたことを実感し張りつめた緊張はほぐれ、本来のユリらしい笑顔が彼らに向けられた。
「ではごゆるりとお楽しみください」
アダムの合図と共に宮廷楽団が奏でる軽やかなワルツが響き渡った。皆話に花を咲かせ、軽食に舌鼓をうち楽しんだ。学生に至ってはいつものランチタイムとそう変わらない雰囲気だが、保護者や賓客の手前もあって皆どこか緊張の面持ちをしている。ベルは王家に用意された椅子に座りその様子をぼんやりと眺めていた。
アダムはというと、ユリと共に向こうからやってくる貴族や賓客と挨拶を交わし王としての責務を果たしていた。邪魔にならないように本来なら学生たち混ざってお喋りに花を咲かせればいいのだが、普段から仲のいい友人はいなかった。レヴィアンが隣にいるときは多少なりとも学生らしく振舞えたのに、今はうまくいきそうにないと一人ぽつんと座っているしかなかった。
(そういえばレヴィアン様をみかけないわ。どちらに行かれたのかしら)
いつもの癖できょろきょろとレヴィアンの姿を探してしまう。見つけたところで話せることはひとつもないので意味はないと判っていてもやめられなかった。
「王女殿下、どなたかお探しで?」
扇で口元を隠しながらベルの傍に近づいたのは天敵のキャシーだ。後ろに数人の取り巻きがキャシーと同じようににやついていた。
「キャシー嬢…」
「お一人でどうなさったの?よろしかったら私たちとあちらでお話しましょう」
断ることもできた。キャシーについて行っていい話が聞けるわけもない。しかしベルの、というより前世のベルの感情が沸々と湧き上がっていた。ここで逃げるなんてごめんだと叫んでいる気がした。ベルはキャシー以上に意地悪そうに口角をあげて「よろこんで」と席を立った。
エルダーフラワーのドリンクを片手にキャシー達の輪に入った。比喩的にではなく文字通り彼女の取り巻きに囲まれてしまい、逃げられないともいう。
「この度は残念でしたわねえ」
キャシーは眉を下げて気の毒そうにベルを見た。扇でかくしていても笑っているのは声で充分にわかる。
「なんのことでしょう」
「あら、ご存じないの?それはまたお気の毒様」
次ははっきりとそう言われる。流石のベルもむかむかと湧き上がる怒りを覚えるが、ここで爆発させて立場を悪くするには分が悪すぎると感情を押さえつけた。
「ええ、宜しかったら教えて下さらないかしら?」
キャシーは目を細めて口元から扇を離し、真紅の唇をにやりと歪めてベルの耳元でこっそりと呟いた。
「あなたの婚約者、レヴィアン様はすっかりユリ様に骨抜きにされたという噂ですわ」
改めて聞くと沸き上がった怒りがまたもや悲しみに彩られてしまいそうだ。一度ゆっくり目を閉じてから同じスピードで口を開いた。
「まあ…そうですの。ユリ様は魅力的な女性ですもの。どんな殿方も揺らいでしまうのは仕方のないこと。ですがすでに関係ありませんわ。わたくしすでに婚約は破棄しておりますのよ」
「え?本当?」
誰もが驚いただろうが驚きを隠せずに口にしたのは取り巻きの一人だった。キャシーがきっと睨みつけると口を滑らした彼女は怯えてしまい顔を俯かせた。
「それは残念でしたわねえ。あんなに仲睦まじいお二人だったのに。でもしかたないことですわ。相手が聖女様ですもの。いくら王女のあなたでも叶いませんわよねえ」
気が大きくなったようで比例するようにキャシーの声も大きくなっていた。今までの仕返しとでも言わんばかりにベルを見下すようにあごをあげ、唇に冷笑を浮かべた。
足を踏み入れる前に堅く己に決めていたことがある。例え自分が馬鹿にされようとも絶対にパーティーをぶち壊したりしない。前世の様に自ら壊すような真似は絶対にしないと。
それでもキャシーにひれ伏すのは御免だ。頭をフル回転させ言葉を探すが、気ばかりが急いて何も見つからない。早く、早く何か言わなくては。
(負けを認めるしかないのね)
そう思い目を瞑った時、会場を一変させる乾いた音がした。その音に驚き目を開けると、眼前にはもっと驚く光景がそこにあった。
「失礼なこと言わないで頂戴」
「な、何をなさいますの!?聖女様!」
前世の妹が話す聖女像を何故か今この瞬間思い出された。
笑顔は花が綻ぶようで、悲しみには本気で泣き、でも一生懸命な姿が素敵なの。理想像だって友達は笑うんだけど憧れるのはいいよね。少しでも近づきたいんだもん。
そう言って笑う妹の顔はすでにゲームの聖女まんまだと前世のベルは思っていた。ユリに対しても思っていた。彼女はいつも一生懸命で時には落ち込んだり泣いたりすることがあっても笑顔を絶やさない女性だ。だからこそ、怒りの感情をむき出しにして、それも令嬢に平手打ちをするなんて思っても居なかった。
「こちらのセリフよ!ベル様に酷いことばかり言って、あなた何様のつもり!?」
キャシーはわなわなと震えていた。しかし相手が聖女だけに彼女は大きく出られないようだ。もしくは先程のベルと同じように言い返す言葉がないのかもしれない。
「変な噂が流れているみたいだけど、あんなの嘘っぱちよ。それなのに平気で大きな声で吹聴しまわっているなんて酷いわ。レヴィアン様はベル様を凄く大事にしていらっしゃるし、私もベル様が本当に大好きで慕っているわ。そんな彼女に失礼を働くなんて誰であっても許せない!!」
ユリはもう一度手を振り上げてキャシーの頬を打とうとした。しかしその手はレヴィアンの手によって止められる。
「れ、レヴィアン様」
「遅くなってもうしわけございません、ベル王女。少々手間取ってしまいました」
息を弾ませて答えた。心なしか額に汗が滲んでいる。
「手間取るっていったい何を…」
レヴィアンはもう片方の手で持っていたあらゆる紙を丸テーブルの上に広げた。
「キャシー嬢が人を使ってあらぬ噂を吹聴させた証拠です。取り巻きだけでは足りなかったようですね。金銭に困っている生徒にお金や物品を渡して頼んでいたんですよ。こちらの用紙はどういった噂を流すかなど書かれた計画書です。まあ計画書と言うにはお粗末な物ばかりですが」
ベルは拾い上げて見ると顔を顰めるしかなかった。そこにはお粗末と言われても仕方がないくらい下品な言葉が羅列されていた。
「あなたはこれを燃やすように頼んでいたようですが、そういったものは至って隠されるものです。彼らはそれを材料にあなたを揺する気でいたようですしね」
レヴィアンはそれらを奪い取った相手の方をみると一部の学生が目をそらし肩をすぼめていた。
「で、ですが私がやった証拠にはなりませんことよ!そうです、たとえ筆跡鑑定したところで、私がやらされたと言えば無実でしょう?」
「往生際が悪い人ですね。先程も申し上げたように物品と言ったはずです。その中には宝石が含まれていました。鑑定すればあなたが渡したとすぐにわかりますよ。アルデンス家ともあろう家が量産品など持つわけがないでしょうし。そうでしょう、アルデンス卿」
部屋の隅っこで隠れていたキャシーの父アルデンス卿は名前を呼ばれて、周りに居た人が彼を睨みつけ道を開けた。
「ば、馬鹿者!なんてことをしてくれたんだ!」
アルデンス卿は顔を真っ赤にしてずかずかと重たい体を左右に揺らしキャシーの元へ行き、もう片方の頬を思いっきり平手打ちにした。するとキャシーは身体を支えきれず派手に転んだ。
「こ、国王陛下…愚女が、お、王女殿下に対して大変失礼な振る舞いをしたこと、どうかお許しください」
横柄な彼にとって今初めて王族に膝をついていることは最も屈辱的に違いない。ベルは一つため息をついて「馬鹿な親子」と心の中で呆れた。
アダムはゆっくりと近づいてアルデンス卿の前で立ち止まり、無表情で彼をただ見ていた。アルデンス卿はひっと呻いてアダムの顔を見ないように頭を下げた。
「今日はめでたい宴の日だ。貴殿やキャシー殿は謹慎を命ずる。追って処分を言い渡す故覚悟するように」
腕をあげると近衛兵がアルデンス卿の腕を両側から掴み引っ張るようにして安らぎの間を後にした。
そして同じようにキャシーも連れて行かれそうになるが、ベルがキャシーに手を差し伸べた。キャシーは恐る恐るその手に触れるとベルは思いっきり引っ張り上げて耳元で他の誰にも聞こえないようにそっと呟くと、キャシーは顔を真っ赤にして掴みかかろうとしたが、今度こそ近衛兵に止められて、父親と同じように連れ出された。
遺された取り巻きはすでにその場を離れて自主的に部屋を後にしたようである。
(逃げ足の速いこと)
悩ませていた憂いは嵐の様に去っていきベルは愁眉を開いた。レヴィアンの方に顔を向けると彼はベルに気付きいつものように温かい笑顔を向けたものだから、ベルは嬉しさや安堵から泣きたくなった。
アダムはそんなベルの肩をぽんと叩き残された貴族たちに向かって声をあげた。
「お集りの皆さま、祝いの宴に水を差し申し訳ない。お詫びとして、ここで華やかな報告をお伝えしよう。この度わが妹ベルと、そして今回の功労者、ヴォルク王国の第一王子レヴィアン殿の婚約を発表する」
ベルは狐につままれたような顔をしていた。きっと今までで一番間抜けな顔をしていただろう。一騒動に重苦しい空気を醸し出していた会場がわっと歓声に変わり、拍手が沸き起こった。拍手と共に口々に「おめでとうございます」と祝福の嵐がベルとレヴィアンのところに届いた。
「ベル様!おめでとうございます!」
ユリに手を取られてぶんぶんと振り回された。
「あ、ありがとうございます…?」
惚けた声で答えると漸くベルははっと我に返りアダムに無言でどういうことかと説明してほしくて抗議の目を向ける。
「はは!驚いたか」
「あ、え、すごく…はい、驚きましたが、え?わたくし昨日…」
「そんなもの聞くはずもないだろう」
当たり前だと言うように投げ捨てた言葉と一緒に軽く頭を小突かれる。
(昨日の失恋を癒してくれた感動的なシーンはなんだったのかしら)
思い出すだけで沸騰しそうな程顔が赤くなった。というのも、よくよく考えれば婚約解消を決めたのははキャシー一味が流した噂のせいだった。それが覆った今、失恋でもなんでもなくただ噂に流された自身の勘違いだと判明し、ベルは恥ずかしさから穴があったら入りたい思いでいっぱいになってしまった。
「ユリ様、レヴィアン様、申し訳ございません!」
ベルは思いっきり頭を下げて詫びた。今までで一番大きな声が出たような気がする。それまで歓声で沸いていた会場もまたもや静まり返った。
「べ、ベル様?どうしたんですか?」
狼狽えたユリはベルに顔をあげるように頼んだがベルはそうしなかった。
「わたくし本当に恥ずかしい。あんな噂に振り回されて、あげくあなた方を本当に疑ってしまいました。本当にごめんなさい」
「そ、そんな!この二週間、お話することも儘ならなかったんだし、仕方ないことですよ、ねえレヴィアン様」
ユリはベルの背中を擦りながらレヴィアンに助けを求めた。するとレヴィアンはベルの傍にやってきて片膝を突いた。ベルは少し頭をあげると丁度レヴィアンと目が合う。
「ベル・リンデン・ラングウェル王女、私の名はレヴィアン・ヴォルグ、ギルバート・ヴォルク国王陛下の第一王子です。王子とはいえ一人の弱い人間でもあります。時には迷い、悩み、苦悩するでしょう。そんな私でもよろしければ、どうか長い人生を共に生きていただけませんか」
ベルはついに堪えていた涙をぽとんぽとんと床に落とした。すでに諦めていた初恋で、覚悟した最後の恋は今目の前で叶おうとしている。
「はい。よろしくお願いします」
ベルは差し出されたレヴィアンの手をとると、「おめでとうございます」と泣き笑いのユリは大きな拍手をした。祝福の拍手はベルたちを中心に広がり誰もが顔をほころばせ、涙をし、二人の門出を祝った。アダムもこっそりベルに「おめでとう」と耳打ちをする。そしてレヴィアンに「今度泣かせたら承知しない」と牽制をかけた。
ベルの大輪の薔薇の髪飾りはレヴィアンからの贈り物だと後からしたり顔のアダムに打ち明けられた。結果としてサマーパーティーのロマンスが叶ったのである。
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