第12話 試験 take2

場所はエイプに突き飛ばされた崖の上。


「クソッ!あの野郎まさか崖から突き落とすとは....。俺じゃなきゃ死んでたぞ!?」


突き落とされてもなんとかスキルを駆使して無事に着地したノアは何日か日を空けての再戦エイプへの再戦にやってきていた。


「にしてもあの動き....速度が異常だった。あのまま本気でぶん殴られてたら死んでたかもな....。」


今更ながらあんな口を聞いたことを後悔する。すると前回戦ったエイプがまたもや現れ、ノアに話しかける。


「また来たのか。後一ヶ月は来ないと思っていたのだがな。」


「一ヶ月も待ってられるかよ!俺はあんたをさっさと倒して次のステージに進まなきゃいけないんでね。」


「大口を叩くものだ。そういうことは俺に勝ってから言うんだな。」


少し話すとノアは戦闘態勢に入る。


(前わかったがあいつと俺じゃ技術に圧倒的な開きがある。やるとすれば体術、魔法含めた全力でやるしかない!)


方針を決めるとスキルを使用して駆け出す。まずは一直線に突っ込む。


「前と同じやり方とは....。学習しないな。」


そう言って以前と同じようにノアの視界から消える。エイプは一瞬にしてノアの後ろに回り込み、腹部を殴ろうとする。しかし、ノアはそれに反応し、サイドステップで躱す。


「!?」


エイプはあからさまに動揺。その隙を見逃すノアではない。エイプに向かって鋭い蹴りを放つ——が、流石はエイプ、すんでの所で蹴りを躱し、バク転で距離を取られる。


「驚いたな、今のを避けるとは。前とは違うということか?」


「男子三日あわざれば、って言うだろう?」


すぐに戦闘は再開される。ノアが今のエイプの動きを見切れたのはこの数日間で新たに手に入れたスキルが関係している。


それは[感覚強化]というスキル。[視覚強化]、[嗅覚強化]、[聴覚強化]、この三つのスキルを統合し、進化させたものだ。更に[感覚強化]に加えて魔力を目に集めての視力強化を発動している。


全身の身体強化ではすぐに魔力が切れてしまうが、それを視覚に限定することで魔力消費の問題をカバー。これによってエイプの攻撃を見切ることに成功したのだ。


(さっきの攻撃には反応出来た。反応できるってことは恐らく滅茶苦茶速い攻撃ってわけじゃないんだろう。恐らく踏み込みの違い、かな?)


先程の攻防からエイプの高速移動についての考察を進める。


蹴り、殴打、掌底。様々なバリエーションの攻撃を繰り出すも全ていなされるか躱されてしまう。


(やっぱこれだけじゃ無理だよな。奥の手を使うか....。)


そう考え、今の距離を維持することに専念。エイプの殴打を頭を下げて避け、そのまま足払いに移行。そしてエイプをことに成功。


着地の瞬間を潰しに行くように見せかけ、一瞬だけ意識を地面に向ける。


するとエイプの足元の土が盛り上がり、土の槍が形成される。土属性中級魔法 地槍 。

そうしてエイプのバランスを崩し、思い切り蹴りを叩き込む。


が、これもまた鍛え上げられた体幹を使い、回転して躱してしまう。


「うまいけどこの程度なら———」


蹴りを躱したエイプはノアに視線を向けてそう言い放とうとした。しかしそこにあったのは乱雑に作られた土の人形。

とうの本人は既にエイプの背後にまわっていた。


「悪いな、それも想定ずみだよ!」


空中にいるエイプに全力の殴打に打ち込む。すると——


エイプはノアに蹴りを放つ。


「ツッ——!!」


ノアのパンチと蹴りは一瞬拮抗するも圧倒的な脚力で押し戻されてしまう。


「クソッ!」


ノアは衝撃を受けるもすぐに気を取り直してエイプに攻撃を仕掛ける。


「ストップ!!!試験はここまでだ。」


ノアは憤る。


「はぁ!?なんでだよ!俺はまだやれるぞ!」


「それはわかっている。あの一撃はあたる筈だった。我々の流派の技は使わないルールだったんだ!お前の問題じゃない。」


「は?てことは合格....ってことでいいのか?流派の技を使わないってどういうことだよ?」


「ああ、お前は合格だ。紛うことなく合格だ。この試験で流派の技を出させたんだから。試験のことについては後で説明する。とりあえずまずは——

俺達のボスに挨拶に行くぞ。」

 

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