第7話 side ユング
あいつは昔から気に食わない奴だった。剣術にしろ魔法にしろ一度としてあいつに勝てたことはなかった。やっていることも時間も、教えている先生も同じなのにこの差はなんなんだ?なんであいつばっかりが!
だがそんな思いももうしなくてすむ。あいつは追放された!
例えどんなに剣が上手く振れようが魔法が上手く使えようがスキルがしょぼければなんの意味もない。
父上も父上だ。あんな下民の血が流れた奴をこの由緒あるアルストリア家において置くとは.....。あいつの母親が死んだときに追い出せば良かったものを。
「ユング様。お父上がお呼びです。」
お付きのメイドが俺を呼びに来た。
「そんなことは分かっている!どけっ!」
そう言ってメイドを突き飛ばす。フンッ。俺は今機嫌が悪いのだ。あいつの事を思い出していたらむしゃくしゃしてきた.....。
それでも父上からの呼び出しには応じなければなるまい。
父上の書斎のドアをノックする。
「父上。ユングです。」
中から父の声が響く。
「入れ。鍵は空いている。」
ドアを開けて中に入る。父上の用事とはなんなのだろうか?おもむろに父が口を開く。
「晴れてあの無能は追放された。これで我が家も安泰だ。その上 お前の婚約者が決定した!それも公爵家の御令嬢だぞ!」
「真ですか!?あ、相手のお名前は!?」
公爵家だと?あの公爵家から俺に婚約者があてがわれるのか?素晴らしい!やはりあいつを追放して正解だった!
「相手はハーベス家の次女 セリン・ハーベス嬢だ。」
「次女?長女ではないのですか?」
「ああ。なんでもあそこの長女は騎士団に入っているようでな。自分よりも強い者でないと婚約は認めないらしい。そんなお転婆よりも大人しい次女の方がいいと判断した。」
「なるほど....そうですか。ならばなんの問題もありませんね!」
俺の覇者の
父上の言うことに間違いはないだろうしな。
しかもあのハーベス家か。美姫と名高いセリン・ハーベスを好きにできるということか?
「話とはそれだけでしょうか?」
「ああ。顔合わせの日取りなどは追って連絡する。もう退室してよいぞ。」
「はい。それでは。」
父上との話が終わり廊下に出る。
クク 顔合わせの日が楽しみだ!
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にしてもあの男はまだ生きているのだろうか?アルクーツクの森に捨てたのだからもう死んでいるとは思うが。あいつのスキルじゃまともに戦うこともできまい。
俺のスキルとは違ってなあ!
ユングはスキルボードを開く。
すると目の前に半透明の板が出現する。
ユニークスキル:覇者の
・過去に存在した自分の血縁関係上の先祖を呼び出し、その力を振るうことができる。
・一度に呼び出せる霊体の数は2体。
・霊体を呼び出すことには魔力を消費する。
「ハハハハハハハッ!何度見ても素晴らしい!これがあいつとは違う選ばれた者の力だ!」
アルストリア家にノアの生死を心配する家族はいなかった。唯一ユングの高笑いが響くのみであった。
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