第3話 死闘
ノアは森をさまよっていた。寝床を見つけようと歩き出したはいいものの、ただでさえ視界の悪い夜の森を魔物に注意しながら進まなければならないためそれほど移動することができていなかった。
「寝床を探すのも重要だが今の俺の戦闘力を正しく把握するのも重要だな。」
そう独り言ちるとノアは頭の中に自分の持つスキルを思い浮かべる。
ユニークスキル:学び取る
・自分の見た、受けた動きを再現することができる。
・再現した技のスピードや鋭さはスキル所有者の身体能力に依存する。
・魔法やスキルのコピーは不可。
「やっぱり何度見ても使えないスキルだな。何がユニークスキルだよ。スキル単体じゃ何の意味もねえ。」
だからこそノアは追放されたのだろう。秘伝のスキルを所持していなかったこともそうだが、何より戦う力がなかった。ノアは追放されたことに驚いても悲しんでもいない。母が死んだ時点でいつかはこうなることが予測でいていたからだ。だからといって復讐心がないというわけでは無い。
(いつか奴らに報いを受けさせるためにもこんな所で死ぬわけにはいかないな。)
決意を新たにした時ー
視界の端で何かが動いた。剣を鞘から引き抜いた瞬間。
左腕に強い痛みが走った。一拍遅れてノアは自分の状態に気づく。
左腕が ない。
激しい痛みに襲われて尻もちをつく。
「があっああああぁぁっ!!」
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
痛い!!)
激しい運動をしたわけでもないのに汗が止まらない。血は依然として噴き出ている。これでは失血死するのも時間の問題であろう。
ノアの腕は狼の姿をした魔物の餌食となっていた。赤黒い体毛に爛々と黄色に妖しく光る目。その口に生えた牙は長く、大人の身体だろうと貫ける程だ。脅威なのは牙だけではなく、四肢に生えた鋭い爪もだろう。
もう既にノアを獲物としてしかみていないのかその足取りは悠然としたものだ。
腕の痛みで意識が朦朧とするなかノアの胸中にはこの理不尽に対する恨みが渦巻いていた。
(なんで俺がこんな目に!!俺よりも不幸な奴は五万といるだろう。それでも!なんでっなんで俺が....!畜生!)
脳裏に浮かぶのは父親の顔、弟の顔。
(これが走馬灯ってやつか?)
そしてー 亡き母の顔。
(ああ....そうだよなあさっき決めただろ。こんなとこで死なないって。あいつらに報いを受けさせるってよ!!このままじゃ100%死ぬ!そうなりたくないなら戦え!考えろ!)
狼もどきが腕に夢中になっている間に腰についていたベルトで腕を止血。残っている右手を使って剣を握る。出血とこれまでにない死の気配に体が震えているのを感じる。
(だがそんなことは関係ないやるしかないんだ 生き残るためには。)
(何も正面から戦う必要はない。絶対に勝つ。絶対に殺す。そのために動け...!)
腕に飽きたのか狼もどきがこちらに向かってくる。
「ど、どうした?さっさと来いよ美味い肉がここにあるんだぜ?ん?怖いのか?死にかけの俺が?」
心にもないことを言って挑発する。言葉は分からずともニュアンスは理解したのか狼もどきは唸りはじめる。
そしてノアを喰らうことを決め一足飛びに襲いかかって来た。
「おらあぁ!」
計画通りノアは右手に握っていた剣を突き出す。空中にいる限りそれを回避することは狼もどきには不可能。頭蓋に剣が突き刺さる。思いの外肉が硬く、無くなった左腕に響くがその痛みを無視して更に剣を押し込む。
狼もどきが完全に生き絶えた。今この場においての勝者は紛れもなくノアだった。
「ハアッハアッ。ふうー。終わった...のかな?でもまだ森の中ってことは他の魔物がくる可能性もある。今日は木の上で一晩過ごそう。応急処置もしたいしね.....ッ!!」
立ち上がる瞬間また腕に痛みが戻ってくる先程までは戦いのせいで痛みが鈍くなっていたがそれがなくなったのだ。
「取り敢えず...木の上に..。」
ー<<条件を満たしました。ユニークスキル学び取る
突如頭の中に声が鳴り響いた。
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