第2話 ここまでやる?
ガタガタと地面が揺れている。目は覚めているはずなのに目の前が暗い。
(ていうか何も見えない。しかも手も足も動かない。縛られてる。感触からして馬車なんだろうけど目隠しのせいで外が見えなくてきちんとした判断がつかない。まさかこんな9歳のガキを追放するのにここまでやるとは思ってもみなかった。
あのクソジジイめ。あんな怪しい飲み物に手を出すんじゃなかった!あんなあからさまな罠に引っかかるとは...。俺の顔を見たくも無いほどに嫌っているあいつならやりかねん。いや、これもユングの差金か?だとしたらまじ許せん。
まあ俺みたいな非力な雑魚にはどうしようもないんだが。喧嘩を売っても返り討ちにされるのが関の山だろう。)
こんなことを延々と考えても何も状況は改善しない。そんなことよりもこの後どんな所に連れて行かれるかを心配すべきだろう、だが心配してもどうしようもないという考えに至りノアは考えるのをやめた。
そしてただひたすらに馬車が止まるのを待つのだった。
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馬車に揺られること数時間。中々止まる気配を見せない。
まだか?まだなのか?ずっと転がされっぱなしで腰とか首とか痛いんだが!?そろそろ我慢の限界だ....そう思った矢先馬車が大きく揺れて停止する。
そして無造作に馬車の外に放り出される。痛みに顔をしかめていると俺をここまで運んだのであろう男の声が聞こえてきた。
「なーんで俺たちがガキをこんな田舎くせえ場所に連れて来なきゃならなかったんだ?
なあバーン お前もそう思うだろう?」
(なるほど運んできた奴の一人はバーンというのか。)
「そんなことを言っても仕方がないだろうジーン。こんな簡単な仕事で大金がもらえるんだ。お前が娼館の女に貢いだせいで俺たちパーティーの資金が少なくなっていたからな!渡に船だったんだよ この依頼は。」
「わ、悪かったってそれは謝っただろ?そうじゃなくて本当にあいつはあんな金出す気があんのか?もし騙されてたらどうすんだよ?」
バーンが答える。
「それはないだろうな。あれでも貴族の一員だ。約束を破ったとなれば世間体が悪くなるからなあの程度の金喜んで渡してくれるだろうよ。」
「それならいいけどよぅ。しっかしこのガキも憐れだよなあ。折角貴族サマの家に生まれたっつうのにスキルの有無で追放、しかもこの森に。」
(森の中なのか?ここは。だとしたらかなり不味いな....。俺には戦闘力というものがほとんどない。頼みの綱のスキルは弱いし、剣術も一応習得はしているがE、Dランクの魔物を倒すのが精一杯だ。森なんかに放置されたら1日として生き残る自信がない。)
焦るノアをおいて男達の話は進んでいく。
「じゃあそろそろ行くか?さっさと依頼を達成しちまおう。」
そう言って二人は森の奥に踏み入る。そして数十分もたったところで立ち止まりノアを放り投げた。
「こんなもんだろ 流石にどんな神童だろうとアルクーツクの森からは抜けられんだろうぜ。」
「念には念を。と言いたい所だが今回は事情が事情だからなこれでいいだろう。魔物が寄ってくると面倒だ。早く撤収するぞ。」
男達はそう言い捨てると足音を消して去って行った。それからしばらくするとノアを縛っていた縄や目隠しがまるで煙のように消えていく。魔法で作られた拘束具だったのだろう。四肢が自由になったノアはというとー
(なんだと?やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいアルクーツクの森だと?ふざけてるのか?あの野郎ども俺のことを殺す気満々じゃねえか!なにが追放だよっ!クソッ!)
普段の惚けようとは違く、ひどく狼狽している。それもそのはずノアが今回放り出されたアルクーツクの森とはノアの所属するセーベル王国の人間であれば知らない人はいないであろう森林だからだ。アルクーツクの森 あらゆる魔物が跋扈し、その森における生存率はBランクパーティーをもってしても30%以下と言われている。
人呼んでー
死を呼ぶ森
である。
生き残るためにノアは思考を切り替える。
(最低限生きていけるくらいの備品は持ってきている。それも魔物と遭遇しなければ、だが。まずは安全地帯の確保からだ。拠点がなきゃどうにもならん。もう暗いからそれは明日からになるか?それなら取り敢えず今日寝る所を探すべきだな。)
そう考えてノアは森の中を歩き出した。
そんなノアを燦然と輝く月が見下ろしていた。
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