幼なじみの女子と縁を絶ったことでトラウマを抱えた松浦傑は、女子と縁遠い工業高校へ進学した。が、思いがけず引きずり込まれてしまうのだ。同級生となった泉楓——烏城のハンドルネームで知られるネット界の超有名人に、こともあろうか美少女VTuberの道へ。
傑くんは個人勢VTuber“美鈴咲”となり、女子そのものなボイスを駆使してめきめき頭角を現していきます。でも、コラボ配信することになった人気VTuberのチチさんの正体が露わとされた瞬間から、物語は加速するのです。
美少女の肉を着込んだ男子の有り様がコミカルな筆で描き出される本作ですが、その中に香るほろ苦さ、なんともいいんですよねぇ。傑くんだけじゃなく、他のキャラクターさんにもそれぞれVTuberの道を選んだ事情があって、そこに織り込まれた“魂”——所謂中の人——の辛苦がドラマを展開させていく。この物語としての分厚さ、極上です。
ただおもしろいだけじゃ終わらないVTuberラブコメディ、ぜひご一読を。
(「次元の狭間に輝くVTuber」4選/文=高橋 剛)