第12話 フィリス・フィリア
「私達は会場作りを、リュウジさんは料理をお願いします」
「フィリス、そんな事いっても部屋の中が」
「会場は外に変更します。被害の少ないテーブルを此処に」
先程まで憂いを帯びたフィリスの表情に火が灯る。キッチンから持ち出したドラゴンストーブ。熱せられるフライパンに少量の油。敢えて投入するのは炊き立てのご飯だ。
作るのは握りやすいパラパラではなく水分量を含んだふっくらチャーハン。材料は限られている。ルティの仕留めた
温まったらフライパンに油を敷き、刻んだオーク肉を焼いていく。魔獣の油が滴る。微塵切りしたバリンジュの根を油と炒め香りを出す。
硬いグリフォンの卵をハンマーでかち割り溶き卵に、更に白米も加えて炒めていく。最後に酢漬けのバリンジュの根を千切りにして加えると生臭い匂いが消えていく。
「アクアショット!」
ルティの水魔法が外壁の汚れを落とすと同時に焦がし油の香ばしい匂いが薫った。バリンジュの葉を皿にして子供達の握ったオニギリが添えられていく。
「もう昼ですし交代で食べましょう。レオもお母さんも、せっかくバリンジュを届けてくれたのですから、宜しければ一緒に食べていって下さい」
フィリスがオニギリを差し出すとレオは勢いよく食べ出した。
「うめぇ。ウメェよ、母ちゃん!バリンジュの根がカリカリしてて」
「嘘みたい。あんな辛いバリンジュが、こんなに美味しい……やだ、私……なんで?」
ホロホロと落ちる涙。オニギリの蒸気が母親を包む。つられるようにして、フィリスの目にも涙が浮かぶ。
「良かったです。本当に間に合いました……オニギリって、温かいのですね」
「グリフォン卵のチャーハンオニギリ〜嬉し涙を添えて〜っだな」
「また変な名前を付けて……まっ、いいわ。ありがとう、リュウジ」
笑顔が香る。食事が香る。ルティが笑う。それまで訝しげに見ていた人達も笑い声に釣られ、匂いに釣られてオニギリを頬張った。
「うめぇ。なんだこれ!」
「これを子供達が作ったってのかい?」
「そうよ。凄いでしょ!」
溌剌とするルティ。
「リュウジ!大盛況よ」
「もともと食には力があるからな。食を通して分かち合う、笑顔の大切さ、世界の美しさ、そして安心感」
「そう、よね」
彼女は遠い目をしている。
「ねぇ、リュウジ、お願い。これからも私達を助けて……」
「私からもお願いします。私の、フィリス・フィリアの夢物語に、どうか力を貸して下さい」
「二人とも……」
俺だって右も左も分からない時にルティに助けられた。フィリスも受け入れてくれた。
「あぁ、これからもヨロシク」
「はい」「勿論よ」
「イベントも成功しましたし、ギルド認定まで、あと少しです。俄然やる気が湧いて来ました」
「子供の貧困、孤食に加え運営費に人材。またまだ問題は山積みなんだから。フィリス。分かってんの?」
フィリスは俺の方を向いてクスッと笑った。
「まっ何とか……なります。ですよね、リュウジさん」
「あぁ、勿論だ。何とかして見せるさ。食で未来切り開く、俺は料理研究家だからな」
とある日の古都リゼルハイムの一角。そこには美味しい匂いと、子供の笑顔があった。
〜おわり〜
転生料理研究家、リュウジ。こども食堂で無双します! ふぃふてぃ @about50percent
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます