名字が何回も変わる複雑な家庭環境が要因なのか、女遊びの激しい和泉に対し、四年間も恋心を抱くセフレ、りな。この、都合のいいセフレと自負して距離をはかる作品は、今回の応募作品の中にも多くあったように思う。りなは、和泉を見下しつつ、どこかで結ばれたいと思っているのだ。そりゃそうだよね。部屋に残る女の縄張り争いを見て「今更主張しなくてもわかっているよ」と吐き捨てても、あわよくばを願い続けてしまうのが、都合のいいセフレの悲しい宿命なのかもしれない。文中で、おお、と唸ったセリフがある。和泉に本命の彼女ができ、ゴムの数が減っていないのを見遣り、別れ間際にこう放つのだ。「私、来る度にゴムの数が減ってんの嫌だった」・・・痺れるなあ。嘗ての女たちへ、そして本命の彼女へ向けた、悲哀に満ちた叫びがこの科白に篭っていて、本当に見事。相手も返す言葉ないよね。最悪ながらも、最高な捨て台詞だ。
(「恋愛ショートストーリー特集」/文=紗倉 まな)