With All My Love on Valentine’s Day and Every Day

【人物紹介】


照月 空夢(てるつき そら)

 27歳。アクセサリーショップ店員。自分の店を持つために色々と準備中。茶髪のセミロングでよく1つお団子に結んでいる。緑色の目。

性格はあっさりとしており、誰とでも仲良くなれるくらいコミュニケーション能力がある。人の気持ちに敏感で、特に恋人の事にはすぐに気が付く。基本は深入りせずに、見守るスタイルでいるが、恋人の紫憧については遠慮なく口出す一面がある。

恋人の紫憧とは、高校時代からの長い付き合いで、強いところも弱いところも全て知っているといっても過言ではない位の仲。支えになりたいと強く思っている。


深海 紫憧(ふかみ しどう)

 27歳。警察官。紫色の髪に赤い瞳。ぱっと見警察官に見られないこともある。

自分の中の正義を大切にしている。基本的に誰にでも反発的な態度を取るが、空夢には逆らえないことが多い。

空夢の前ではとても優しく穏やかで、空夢の事をとても大事にしている。



空夢side


2月14日。付き合ってから何度目かのバレンタインがやってきた。

お互いバレンタインでも関係なく仕事なことが多く、余裕のないときは市販のチョコレートを渡すことも多かったが、今年はたまたま仕事が休みだった。

紫憧は朝から仕事へと向かっていった。

『せっかく休みだし、たまには手作りもいいかもしれないわね。』

家事をパパっと済ませて、買い出しの為に街へと飛び出した。


食材を買った帰り道。ふと、小物を販売しているお店が目に入る。

そういえば、最近財布を買い替えたいって言っていたような…

何となくそんなことを思い出して、その店へと入ってすぐに、1つの財布が目に留まる。

なんでか分からないけど、これだって思えた深みのある皮の財布。

強度も問題なさそうだし、折角だから、プレゼントしようかな。

そう思ったときにはレジへと向かっていた。


夕方、お菓子つくりや料理の下準備がある程度落ち着いて一息ついていると、紫憧からの連絡が入る。

遅くなるって連絡かしら?そう思いながら見たLINEには、”今日は早めに帰れそうだから、もう少ししたら帰る。”の1文が。

珍しいこともあるものだと、夕飯の準備に再度取り掛かった。

それから1時間も経たないうちに、家のドアが開く音がして、振り返れば紫憧がリビングへと入ってくる。

『おかえり、紫憧。今日は随分早かったのね。』

「ただいま、空夢。あぁ、まぁ…仕事が思ったより落ち着いてて。」

『そっか。とりあえずご飯もうすぐできるから、もうちょっとだけ待っててくれる?』

「わかった。手伝えることあったら言ってくれ。」

そう言って紫憧は柔らかく笑うと荷物を置きに部屋へと戻っていく。

さぁ、仕上げを済ませてしまおう。


出来上がったご飯を運ぶのを手伝ってもらって席に着く。

『「いただきます。」』

いつもおいしいと言いながら食べてくれる紫憧の事を向かいで見られるこの時間が、私はとても好きで。

今日もおいしそうに食べてくれているのを見て、ようやく今日も無事に帰ってきてくれたんだなとホッとする。

『それにしても、今日はそんなに仕事が無かったの?』

「んー、まぁないわけじゃなかったんだけど、部下に”今日はバレンタインなんですから、早く帰ってあげたほうがいいですよ!俺やっておくんで!”って言われちゃってなぁ…。確かにいつも遅くまで待たせてるし、たまには空夢とゆっくりするのもいいんじゃないかなって。」

そういう紫憧の声は優しくて。

確かに平日にこんなにゆっくりと時間のある日も珍しいから、その後輩さんと、紫憧には感謝だなぁと思う。

『じゃあ、お言葉に甘えて、今日はゆっくりした時間を楽しませてもらおうかしらね。お風呂あがった後にチョコレートでも食べながら、ちょっとお酒でも飲まない?』

「あぁ。そうするか。」

そんな約束をして、ゆっくりと夕食の時間は過ぎていった。


少しブランデーの入ったチョコレートと、キャラメル味のマカロン。

それをお皿に盛りつけて、プレゼントも忘れずに持って用意しておく。

お風呂上りの紫憧はまだ少し濡れた髪のままリビングへとやってきた。

『ちゃんと髪乾かしなさいよ?』

「これでも乾かしてきたんだけど…」

『お菓子もお酒も逃げないから。…何なら乾かしてあげてもいいけど?』

「ふーん…じゃあ、頼んだ。」

そう言ってリラックスした笑みを浮かべる紫憧に瞳を瞬かせる。

甘えるなんて珍しいこともあるのね。

そう思いながらドライヤーを片手に椅子でまったりしている紫憧の後ろに立つ。

紫色の綺麗な髪。サラサラとした髪を触るのが好きだったりする。

『熱かったらいってよ?』

「ん。…空夢って、髪乾かすのうまいよな。」

『そう、かしら?』

「あぁ。気持ちよくて、そのまま寝そうだ。」

そういう紫憧の声はとても心地よさそうにしているのがわかって。

十分に乾かし終えると、ドライヤーを止める。

『そのまま寝てもいいって言いたいところだけど、今日は少しだけ私に付き合ってもらうわよ。』

「わかってるよ。ありがとな、乾かしてくれて。」

少し伸びをして眠気を覚ましている紫憧を確認して、ドライヤーを片付ける。

戻ってくればソファに腰掛けて待っている紫憧の姿。

キッチンから盛り付けてあったお菓子をもって隣に座れば、グラスにお酒が注がれる。

「もしかして、作った?」

『今日は休みだったから、たまには手作りもどうかなって。』

「ご飯だけでもありがたいのに、お菓子も食べれるとか、嬉しいよ。」

『それなら、よかった。…じゃあ乾杯。』

「あぁ。乾杯。」

グラスをこつんと合わせて、ゆっくりした時間を楽しむ。

紫憧はおいしそうにチョコレートとマカロンを食べていた。

「うめー!やっぱ空夢の作る料理はなんでもうまいな。」

そう言ってニコニコ笑う顔が見られただけで作った甲斐がある。

おいしそうに食べる紫憧を横目にお酒を楽しむ。

お互い明日も仕事だから、ちょっとだけの晩酌。

少しお酒が回ってきたところで、改めて声をかける。

『ねぇ、紫憧。』

「ん?どうした?」

『これ、プレゼント。』

「え!プレゼントまで?…あけていいか?」

『もちろん。気に入るといいんだけど。』

子どもみたいに嬉しそうにプレゼントを開けていくのを少し緊張しながら見守る。

「これ、財布か?俺、確かに買い替えようかなーってゆってたけど、よく覚えてたなー。すごいデザインもいいし、使いやすそうだ。」

お酒が回ってきたのかいつもよりも少し間延びした口調で、嬉しそうにしているのを見て気に入ってもらえたことにホッとする。

『これ見つけた時、これだって思ったのよね。気に入ってもらえてよかったわ。』

「ありがとーな。大事に使うよ。」

『どういたしまして。それに、こちらこそ、いつもありがとう。』


紫憧がいてくれるから、毎日が楽しいし、充実しているとそう思う。

長い付き合いだからこそ、色んな一面を見てきた。

これから先もずっとあなたの隣に居たい。そう思わせてくれてありがとう。

キャラメルは「一緒に居ると安心する」、マカロンは「あなたは特別な存在」。

そんな事なんてあなたは知らないでしょうけど、私にとって唯一無二の大事な存在だって、そう思っているから、だから”私をいつも側においてね”。

大好きよ。紫憧。ハッピーバレンタイン。


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財布:『あなたと一緒にいたい』『私をいつも側においてね』

With All My Love on Valentine’s Day and Every Day:バレンタインデーに、そして毎日、私のすべての愛をこめて。

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