第37話
オディロンは私を見つけるとギュッと抱きしめて離さなかった。少し落ち着いてから今までの話を教えてくれたの。私を探すために騎士団長と魔法使い団長の力を借りて自力で旅をするために鍛錬をしてきた事や、ヒカリの事。
ヒカリの子はオディロン様の子では無かった。オディロン様は私との約束を守ってくれていた。
嬉しかった。
こんなにも嬉しいと感じた事なんて何年ぶりだろう。オディロン様が話終わって『愛してる』と抱きしめてくれた時、全ての苦しみが去っていった。
オディロン様はこれからどうするのか聞いてみると、このまま私と一緒に過ごしたいと話をしていた。王城に帰ったら休む暇など無いのだからこのままここで暮らしたいとも。
私は彼に現在行っている事を話をした。数年はここで暮らすことになると。ロイクの研究を完成させるために。もちろん彼は喜んで賛成してくれたわ。
それからは毎日クロムと共に一緒に狩りへ出かけ、魔物を狩る。オディロンは家事をしながらアレットが魔石に魔力を込めるのを見守る。
2人は会えない時を埋めるかのように仲睦まじく森の中で過ごしていた。
そして、とうとうこの日がやってきた。
「アレット、お疲れ様でした。ようやく1500個もの魔石が完成しました。後は井戸に入れていくだけです。これでようやく私達は解放されます」
「…そうね。ロイク有難う。毎日魔物を狩ったせいかこの森は魔物は殆ど居なくなってしまったわね」
「では、私はまだ次の研究がありますので。アレットの望み、叶えられなくて良かったですね。ではまた」
いい笑顔でそう言い残し、ロイクは転移して行った。オディロンは私が逃げないようにギュッと抱きしめて耳元で囁く。
「アレット、ロイクが言っていた言葉。どういう事かな」
「… 私は、この研究が完成したら、永遠の眠りにつくつもりだったの。誰からも愛されない私はひっそり森の奥でクロムに見守られて、ね」
オディロンは私に向き直り強く抱きしめた。
「アレット。私には今も昔もアレットしか居ない。アレットが死を望むなら私もその場で死を選ぶ」
「オディロン、大丈夫よ。私、願い事が決まったわ。もし、紋章を返還して一気に老けてしまったらどうする?」
「例え皺くちゃになろうともアレットはアレットだ。生涯君と共に過ごすとこの指輪にも誓っただろう?」
「そうね。今はオディロンといる事が私の全て。貴方と残りの生涯を過ごして行きたい」
そうして2人で愛を確かめ合った後、私達は神殿へと転移した。
神官達は驚いた様子だったけれど、私の様子を見て女神像の元へ案内してくれる。
「アレット、さぁ行こう」
オディロンにエスコートされて女神像の前に立つ。
「女神様、願い事が決まりました」
ーアレット、貴女は何を望みますか?ー
「私は、この世界の絆を全て無くしたい。誰もが絆に振り回される事が無い世界」
ー分かりました。願いを叶えましょうー
女神様はそう答えると全ての人達が光に包まれた。しばらくすると光は消え、何事も無かったように。私の手の甲にあった勇者紋は消えていた。
「オディロン、私、老けたかしら?」
「アレット、君は変わらず美しいままだよ。さぁ、我が家へ帰ろう」
私達は手を繋ぎながら我が家へと帰って行った。
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