第34話
「お父様、お母様お久しぶりです」
転移したのが公爵家のサロンのど真ん中。父と母は驚き固まっていたが、私が声を掛けると涙を流しながら動き出した。私達は父達に勧められるままサロンでお茶をしている。もちろんその間にセバスチャンに兄達を呼ぶように父が指示をしている。
兄と義理の姉は少ししてからサロンへやってきた。私達は魔石を見せて話をする。そして国に黙っていて欲しいとも。
父達はもちろん義理の姉もその事には賛成してくれた。情報が漏れないように全力を尽くすと。義姉はとても優しい人だったわ。もちろん私を事を知った上で公爵家へと嫁いできたらしい。
兄は今、大臣の補佐官として王城にいるようでヒカリの話をしてくれたわ。オディロン様の婚約者が私と知って一時だけ反省して大人しくしていたらしいけれど、半年もすればまた本来のヒカリに戻ったのだとか。
公務にも参加せず、オディロン様のそばにいていつも執務の邪魔をしていると。そして周りもヒカリが妊娠していると知り、オディロン殿下がついにヒカリを妃として認めたと激震が走ったらしい。
王家としても妊婦のヒカリに負担をかけるなと触れが出たようでそれ以来、誰もが避けて通り、面と向かってヒカリの話題を挙げる者はいないと。
… やはり、オディロン様はヒカリの事を。
もう、私は本当に邪魔でしか無いのね。
兄達の話に表情を崩す事はないけれど、心は酷く沈んでしまう。そんな私を察してかロイクは井戸を案内するように話題を変える。私達は井戸に魔石を落として家族に別れを告げ、家にかえる。
「アレット、君にはこれから酷な事を告げます。何となく分かってはいたでしょうが、これから貴族以外の全ての人達に私達の魔力を分け与えようと思っています。アレットには酷な事を強いてしまいますが協力してくれますか?」
「ええ、いいわ。私は既に生きている意味を見出せていないもの。貴方がそれを目的とするなら協力する。でも、私からもお願いしても良いかしら?」
「これを貴方の方から殿下へ返してほしいの」
そうして首元から外したネックレス。指輪の宝石部分が淡い光が揺らめいている。
私が長年持つ事で宝石も何らかの影響を受けているのだろう。私の魔力を使い直接彼に返せばきっと私の事を探そうとする。
「分かりました。私の都合の良い時に彼に返す事にします」
「それと、全てが終わったら…。私は永遠の眠りにつくつもり。ロイクは長い時を見守るつもりなのでしょう?後の事をお願いしたいわ」
「それも分かりました。その時にはちゃんと伝えて下さい。では私は帰ります。狩った魔石はどんどん送って下さい」
「… 分かったわ。有難うロイク」
そうして私達は軽く抱き合い別れを告げた。それからの私は魔の森で魔物を狩り、魔石を取り続け、身を削り続けた。国にある井戸は1000を軽く超える。何年も私は自分の死をみつめながら。
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