第5話 怖いのは・・・

「よしっ!!」


 東で白く光っていた太陽は、もう西で赤く光っているけれど、ようやくあの時のサカナを手に入れることができた。何度も溺れかけて、へとへとだ。ボクは魚を咥えて、タロウさんがいるはずの住み家へ戻ろうとする。タロウさんだってお腹が減っているに違いない。急がねば。


「ちょっと、待てよ」


 ボクが走っていると、嫌な声が聞こえた。ボクがその声の方向を見ると、ボクをイジメていた野良ネコたちだった。


「良いもの持ってるじゃんか。なぁ、ミーヤ」


 ボクを数人で囲む野良ネコたち。


「おお、怖い怖い。ミーヤが睨んでるぜっ。アハハハッ」


 ボクは無視して、間から住み家へ行こうとすると、


「オイ待て待て待てよ」


 先回りして、今度は完璧に通せんぼしてくる。


「なぁ、聞いたぜ? お前のダチのワンコロ。殺されるみたいだな、ワンコロだけにコロされる」


 不謹慎な笑い方をする野良ネコたち。


「タロウさんを侮辱すんじゃねぇ!!!」


 ボクは頭に来て、咥えていたサカナを落としながら、叫ぶと、ビビる野良ネコたち。ボクは再び、サカナを咥えて、身体で押しながら、野良ネコたちの間をすり抜ける。けれど、奴らは数匹。自分たちの数の優位を思い出したかのように再びじわじわと余裕を取り戻していく。


「ふん、雑魚がいきってんじゃねぇよ。もうお前を守る奴やいねーんだよっ!!」


 そういって、野良ネコたちが襲い掛かって来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る