第4話 あの時のサカナ

「ここです」


 ボクはタロウさんの前を嬉しそうに小走りしながら、先導したけれど、タロウさんはいつものように気高く走ってはくれなかったので、何度も立ち止まってはタロウさんが追いつくのを待ち、再び歓びを表現しながら、小走りをして、ボクの住み家へ案内した。ボクの住み家は海の街の隅の方にある、神社の軒下だ。


「へへへっ、どーです?」


 元々イジメられていたボク。

 タロウさんと出会ってからイジメられることはなかったけれど、いい場所というのは野良のネコやイヌが住み家を作っている。ボク自身争いたいとも思っていなかったし、ボロボロになった神社を選んだ。


「見た目は・・・・・・あれですけど、結構居心地がいいですから・・・ささっどうぞ」


 タロウさんは真顔で付いてきた。

 こんなことがなければ、ボクは恥ずかしくてタロウさんを連れてくることは無かったから、タロウさんが沈んでいることもあるけれど、ドン引きしなかったので、少しほっとする。


 それから、軒下でボクら寝そべり、ボクはテンションを上げながら、タロウさんに話をした。けれど、タロウさんはふさぎ込んだ様子で元気がなかった。


「タロウさん、遊びに行きましょっ」


「・・・・・・オレはいいや」


 次の日になっても、タロウさんはふさぎ込んだ様子だった。


「・・・・・・わかりました、じゃあちょっと待っててください」


「・・・・・・あぁ」


「絶対ですよっ!!」


「・・・・・・・・・・・・あぁっ」


 ボクは走った。

 約束をしてくれたタロウさん。

 でも、あの様子じゃいつ約束を破ってもおかしくない。だから、ボクはタロウさんが元気になるように、あの時のサカナを捕まえることを決心した。ボクのヒーローがボクにくれたあのサカナを。

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