転
キミはボクの妻になってくれた。
いつも一緒に居てくれたけど、いつも何かに怒っていた。
ボクはキミが何を言っているのかわからず、どうしたらいいのかわからなくて。
ううん。わかろうとしなかった。
それを認めるのが嫌だった。
キミは歯に衣を着せない人で、言葉の爆弾をたくさん落とした。
一番、言われたくないことを言う人で
皆が言わないでいてくれたことを、包み隠さずぶちまける。
それが怖くて、手放してしまった。
キミはまっすぐにボクを見てくれていたのに、ボクはそれを受け止めきれなかった。
器が小さかったんだ。
キミの想いを受けるには。
ボクは
死んだから英雄にされただけ。
生きている時は犯罪者にされて、
世界中から味方が消えたような錯覚に陥った。
ちやほやされて持ち上げられて、
でもあっという間にまた奈落の底に叩き込まれた。
人は怖いよ。
おっかない。
今ならわかるよ。
彼らはボクが嫌いだったわけじゃない。
彼らが興味を持っているのは自分だけ。
自分が大事なだけなんだ。
だから他人を貶める。
そうすれば自分は助かるから。
ただそれだけで、彼らは悪いと思っていない。
だって自分が悪だと思っていないから。
自分が加害者だと気づいていないから。
でも、ボクはそれに恐怖を受ける。
人々の想いに噂に。
『あいつは悪いヤツだ』というレッテルに。
何気ない小さな悪意。
だから大したことはないと誰もが思っている。
でもそれは、幾つも幾つも増えていく。
知らないところで増えていく。
それはあまりにも大きくなって
標的にされた人から生きる気力を失わせる。
ボクはそれに負けてしまった。
もちろんそれだけが理由ではない。
でも、どこに行っても味方はいなくて
それに疲れてしまった。
自分が心を閉ざしてしまっただけだったのに
それに気づかず
気づけるほど成長していなかった。
自分が未熟であることだけはわかっていたから
キミまで巻き込んだらいけないと思って
別れを告げた。
でもそれはキミと別れる口実。
自分で考えることを放棄してしまっただけ。
逃げることが赦されず、
そっとしてもくれなかった。
そんなことをしてくれたのは
キミだけだったのにね。
キミが眩しかったんだ。
ボクだけにしてはいけない人だと思ったんだ。
キミは
ボクがいなくても
平気な人で
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