お人形遊びしちゃダメですか?


まずはダイニングのソファに座らせてクッションを抱えさせてみた。

それからバスタブに入れてシャンプーハットも被らせてみた。



二階のお部屋のベッドに横たわらせてお布団をかけて……そうだ、パジャマとか着替えもあったはず。やばい。何もかもにときめいてしまう!


「すごく楽しそうなとこ申し訳ないないんだけど、居心地悪すぎ」


私とは対照的につまらなそうにあぐらをかいてしまった。


「じゃあリカちゃんハウスにします?」


「いや同じだろ」


「そうですか……残念です」


しょぼん、だわ。


「これがものすごくヤバイ状況だってわかってる?」


「確かに不謹慎でした」


きゅんきゅんの止めかたがわからなかったんです。だって失敗作の人形がこんなに愛らしく生まれ変わるなんて、エイル君が魂ごと魅力的な証拠だからでしょう?


「いや、でも考えようによっては有利かもしれない」


「どういうことですか?」


小さな手でちょいちょい、と私を呼ぶ。うっかりそばに耳を寄せてしまったら、ぴよん、って肩に乗ってきた!


「暮らすならここがいいな〜」


「おぉぉ降りてください!」


「シャンプー何使ってる?俺はヘアメイクさんがオススメしてくれたやつで──」


……貴重な情報も全然耳に入ってこない。


「ここで昼寝とかしてもいい?」


「勘弁してくださぃぃぃ」


立っているのもやっとなのに。


「そんなに嫌わなくてもいいじゃん」


「いえそうじゃなくて」


耳元で大好きなあの声を聞いてしまったら、理性がバグっちゃうんです。いろいろと耐えられなくなった末によこしまでハレンチな私の中の黒オタクがエイル君を襲ったりしたらどうしよう。


「まぁ落ちついて。会議しよ」


「何?何を?」


今の単細胞生物レベルの思考力で、話し合うなんて高度なことができるのか不安。


「この人形に自在に出入りできるようになったら何かと便利だと思わない?顔を知られずに移動ができるよね」


「なるほど。確かにそうですね」


つまり、もし……もしもだけれど、搬送先の病院に人形エイル君を連れていけば、そこで眠っている彼の肉体と、こちらのエイル君の意識の融合が叶うかもしれないってこと。


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