ゴリラになりたいです
「そうしてくれたら絶対息を吹き返すから。マネージャーの頑張りに応えたくてする苦手な仕事だってあるし」
マネージャーさんのために頑張るエイル君を想像しただけで泣きそう。性格まで良すぎるなんて。
「ほら、約束」
そっと小指を差し出された。
「羽奈ちゃんに笑って欲しいから、その顔を見届けてから帰るって約束するよ」
彼の小指に捕まってしまった。
「それほんとですか?」
「ほんとだよ」
澄んだ瞳の奥に吸い込まれそうになるくらい近い距離にいるのに、わけもなく不安になる。
この指が離れたら、ほんとうに彼がいなくなりそうな気がしてくる。
なんだろう、込み上げてくるこの気持ち。
「あの……じゃあ」
「うん」
「いろいろとトライしましょう?これからふたりで!」
彼の小指をがしりと掴みかえしたせいでエイル君をびっくりさせてしまった。
というか、自分でもちょっと驚いた。
「めちゃめちゃマネらしいこと言いだしたじゃん」
何を差し置いても彼の力になるんだって決意したくせに、ゆるっとしたオフ笑顔にもうくらくらしている。
これからその度に、足を踏ん張って耐えないといけないんだ。
「では遠慮なく、全力でエイル君を守らせていただきますね。図々しいことをするかもしれないですけど、そこは大目に見てください」
柄にもなく大胆なことを言ってしまってもう膝が笑っている。
「そういうセリフは役で何度か言ったことあるけど、女の子に言われると結構パンチあるね」
この笑顔が私に向けられているなんて未だに信じられない。
「握力はあんまり自信がないのでご期待に添えるかどうか……」
「いや、そういう意味のパンチじゃないんだけど」
エイル君のためにゴリラになれたらいいのに現実は誰がどう見てもひょろひょろの細腕。
でもそんな私にもできることをみつけなくちゃ。
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