おしゃべりの練習です
それにしても、何が原因でこうなったんだろう。少し冷静に客観的に周りを見られるようにはなったけど、あまりにも現実味がないことに変わりない。
でも不安や戸惑いは彼も同じ。何が起きたかもわからないまま、他人の家にいきなり転送されてしまったんだから。
「あの……事故の衝撃で時空の歪みに投げ出されるのはラノベあるあるですけど……そんなんじゃ安っぽくて、納得できないですよね」
それらしくもあり、実は中身のないことを言いながら、そっと後ずさって距離を取った。
どうしてって?
それは危険だから。
いくら地味を装っていても、これ以上至近距離にいたら命がすり減りそう。
それなのに。
「なんで嫌がるの?まだオバケではないと思うんだけど」
距離の取り方が下手くそすぎて挙動不審なことにすぐ気づかれた。
「俺のこと怖い?」
「いえ、違うんです!」
エイル君に悲しげな顔をさせてしまった。私が彼を嫌いになることは控えめにいって絶対にないのに。
「ちょっと緊張しちゃって」
だって女子と話すこともあまりないような毎日を過ごしてるから。
しかもひとりっこだし、小さいときから周りは大人だらけだった。みんな過保護で、友達と遊ぶのにもある程度の制約があった。
大人の顔色ばかり伺っていたら自分が誰と何をしたいのかさえよくわからなくなって、今の自分に至っている。
「じゃあ俺で練習する?」
「練習って何を」
顔を上げるとエイル君はソファを指差した。
「端っこ同士に座って話さない?顔見なくてすむし」
「それなら……大丈夫かも」
なんて繊細で優しい心遣いなんだろう。それにトップアイドルを練習台にするなんて罰当たりじゃないかな。
もうずっと、ドキドキがなりやまない。
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