イケメンこわい
「掴んで!」
必死な声のせいで瞬時に意識が覚醒した。
「早く!」
壁から声がする。
もしかしてポスターがしゃべった?
ついに頭がおかしくなったみたい。
それくらいショッキングなニュースを目にしたから。
だって今、部屋の壁からエイル君にそっくりな男の子がこっちに身を乗り出そうとしている。まさにポスターから飛び出そうとしている感じのリアルな立体感。
「VR?お父さんからのサプライズプレゼント?」
長めの独り言を呟くくらいにはパニックになっていた。
「とにかくなんでもいいから!」
その声はまるでエイル君だった。
いったい何が起こってるんだろう。
「そんなのムリです……こわいです!」
あまりにも現実離れしすぎているし、彼がエイル君に似すぎているのが何より怖い。
「今非常事態だから!」
「いやです無理ですっ!」
「手を伸ばすだけだって」
「そんなこと言われても……」
長い脚がポスターにつっかえているせいか、彼の顔には苦悶の表情が浮かんでいた。
一度、冷静になろう。
まずは深呼吸をして。
これは幻だ。そうに決まってる。
自分にそう言い聞かせてみたけれどやっぱりすべてが妄想圏外としか思えない。
でも目の前に助けを求めている人がいるのは事実。膝から崩れ落ちそうになるくらいのイケメンさん。
あなたはどこから来たの?
どうしてそんなにエイル君にそっくりなの?
「時間がないから」
ほら。声すらほとんどエイル君。
オタクは固まるだけ。
ぴくりとも動けなくなる。
「いいの?何もかもが終わっても」
彼の悲しい目を見て我を取り戻した。
「それは、終わるのはダメです!」
理屈は後回しにして、とにかくこの状況を変えなきゃいけないような気がしてきた。
「ならもっとこっちに来て?」
「わかわかわかりました」
手招きされたら緊張で吐きそうになった。息を飲んで膝をガクガクさせたまま、ポスターに一歩近づいた。
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