推しのいない世界なんか想像できません
どうやって部屋にもどったかわからない。
頭のなかに空洞ができたように何も考えることができない。
だってさっきのニュースはエイル君が死んじゃうかもしれない、ってことを伝えようとしていた。
そんなこと一度も考えたことがなかった。
誰かにうそだと言って欲しくて夢中で情報を漁った。だけどさっきのニュース以外に何も出てこないし、SNSからはみんなの悲鳴しか聞こえてこない。
どうしたらいいんだろう。
私に何ができる?
考えても考えても、自分にできることなんかいっこもなかった。
「エイル君……」
涙がぽたぽたとこぼれた。
滅多にないメディア露出なのに。
だから走って帰って来たのに。
同じ時間を共有したかっただけなのに。
これからドラマも映画もあるから毎日頑張れたのに、なんでこんなことになったの?
ポスターを見上げたら、優しい笑顔がぼやけて滲んでいった。
「やだ……いなくならないで」
やっとのことで手に入れたポスターに向かってつぶやいた。
「エイル君を連れていかないでください、お願い神様……」
子供の頃、掴んでいた風船が空に吸い込まれていくのを何もできずに見つめていたことを思い出した。
「彼のいない世界になんかいたくないよ」
ポスターに向かって泣きながら訴えたそのときだった。
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