リアタイしたい
「あの、えっと……私は」
何か言わないと。
でも教室の時計に目が止まり一瞬で現実に引き戻された。
もうこんな時間。
どうしよう、間に合わない!
心にはただひとつ。
帰らなければという使命感しか残っていなかった。
やっぱりお迎えを呼んでおけばよかった。
あまり頻繁だと目立っていやだから、お友達のうちにお呼ばれされて、そのまま送ってもらうなんて言ってしまった。
(そんな子なんかいないくせに)
とてもじゃないけれどさっきの問いに返事なんかできそうにない。
「あの……この件についてはまた日を改めて検討していいですか?」
申し訳なくて膝に顔がくっつくくらいに頭を下げたのに。
「どういう意味?俺の話聞いてた?」
どうしてか彼は聞き入れてくれない。
「とにかくさようなら!」
すべてを絶ちきるように教室を飛び出した。だってめったにないエイル君のテレビ生出演だから!
いつもならお風呂をすませてテレビ前に正座をして待つのにな。
(正しくはソファの上に正座)
もうそれは叶わない。
あまりメディアには顔を出さないエイル君の貴重な生出演なのにこんなことになるなんて思わなかった。
生徒会なんか引き受けなければよかったんだ。どうしてノーが言えないんだろう。
推しをリアタイで見たいからもう帰りますって胸を張って言えたならもっと自分を好きになれるのに。
でも、だからこそ彼を好きだという気持ちにだけには正直でありたい。
それだけが私のなかのちいさなプライド。
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