第3章

3-1.有名人




――『櫂、やべー!バズった!!!』



 翌朝、やたらとうるさい通知音で目が覚めてスマホを見ると、祐貴からの電話。



『……バズったって何が?』

『昨日のダンス動画!俺がお前撮ったやつ!!』



……まじか。



 確かに昨日のダンス中、祐貴は俺を撮影してた。


「やーば!お前くっそかっこよ!」

「これSNS載せていー?」


……とか何とか、祐貴が言ってた……ような?




『やっぱお前ってすーげーんだな~。俺、お前がすげー奴なの最近忘れかけてたわ。笑』

『……別になんもすげーことねーよ。笑』



 SNSなんて見る専門でやってねーからよく知らないけど……バズなんて、どうせ運だけっしょ?



『……ってことで、どんなんなってるか送っとくから見といてー』

『……はいよ』



 電話を切ってスマホの時計を見れば……

 まだAM7:00。


 せっかくのゴールデンウィークだし、熱海旅行の疲れも残ってる。もうちょい寝よー……と思って目を瞑ったところで、



――シュッ……


 またもやLINEの通知。……きっと祐貴からだ。


 開こうか迷ったけど、とやらが少し気になって……スマホに手を伸ばす。



『まじでやべーから。見てみ』


 そんなメッセージとともに送られてきたSNSのリンク。軽い気持ちで開いたら……




「……なんだこれ……」



 祐貴が踊ってんのを見て5分で覚えたふりを自分流にアレンジするのが楽しくて、最近流行ってるという曲に合わせて夢中で踊ってる俺の動画……。


 なんかよく分かんねーけど、すごいことになってそうな雰囲気は出ている。


 ♡もコメントもkが付いてる……kってなんだ?



 訳わかんねーままコメント欄を開いた瞬間――事の重大さが、分かった気がした。




『誰これ?!こんな逸材どこに隠れてたんだよ!』

『なにこの子、超イケメン』

『え、この人プロじゃないの?』

『待ってこれ、KAIじゃん!!』


……ものすごい数のコメント。絶賛の嵐。


 チラホラと否定的な言葉も見受けられるけど……それが逆にSNSっぽい気がして、この動画の拡散具合を物語ってる気がした。


 結局、眠れなくなってそのまま起きたけど、そのSNSがなんか気になって、その日一日中そわそわしていた俺。そして、時間を追うごとに再生回数もいいねも、すべての数値が伸びに伸び……。




「──櫂、動画載ってんぞ!」

「お前これ、えぐい人気者なってんじゃん~」


 真吾と隆吾が順番に部屋を訪ねてきたり、



『櫂、SNSに出てるよ!』


 夜にはさくらからも、LINEが届く程だった。


『かっこよかった♡有名人になっちゃったね!』



 この日から俺の……俺とさくらの運命が少しずつ……変わって行くだなんて、まだ予想もしていなかったんだ――


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