1-21.探り合い




「はぁ?!お前それ……200パー脈ありだろ!笑」


 祐貴と二人、いつもの公園で駄弁っているとき、ふとさくらの話題になって。


 彼女の言動についてどう思うか尋ねると、でっけー声で冒頭の台詞を吐かれる。



「……そーなんかな?」

「アホか?!そんなん誰がどー見たってお前のこと好きじゃん」


 祐貴は目をかっぴらいて驚きながらも、ニヤニヤと茶化すように笑ってる。


「さくらちゃん、頑張ってアピールしてんじゃねーの?女にそんな頑張らせてんじゃねーよ。笑」




「……んなの知らねーよ。他の男にもおんなじよーなこと言ってるかもしんねーし」

「……はぁ……お前さぁ……、」


 わざとらしくため息を大きく吐いて、何やら説教モードな祐貴。



「こえーんだろ?ビビってんじゃねーよ。だせーぞ」


……その通りだった。何も言い返せない。祐貴はすべてを見透かしたような顔してる。



「光太郎にシレッと聞いてみれば?」

「え?!」

「さくらちゃんとどんなやり取りしてるか」


 なるほど。さすがチャラ男と言わざるを得ない。女関係の問題は、案外こいつに相談すんのも悪くねーのかも?



「つーか俺、さくらちゃんとデートしたとか聞いてねーよ?」

「別に……言う必要ねーだろ……」

「まぁな~いやぁ~、ついに櫂が恋か~!!笑」



 人の話も聞かず、楽しそうに独り言を言ってる祐貴。なんかムカつくけど……別に全然、嫌ではなかった――







「見ていーよ!こんな感じ……」


 学校帰り、光太郎を誘ってハンバーガーショップに寄った。さくらと普段どんなやり取りをしてるのかさりげなく聞くと、LINE画面を俺に差し出してきた光太郎。


「……さんきゅ」


 受け取って確認。



『さくらちゃん、おはよ~!』

『おはよう』

『今日も学校で会えるの楽しみにしてるよ!!』

『うん、また後でね』



『お疲れ~!!』

『こうちゃん、お疲れさま』

『今日の昼休みどこ行ってたの?』

『図書室にいたよ』



 上にスクロールしてサラッと過去のトークも見ていると……あることに気付く。



……スタンプがない。

 いつもさくらが俺に使ってくる、あの可愛らしいウサギのスタンプが一つも。


 しかも、会話がどことなくそっけないというか。明らかに俺への返事とは違うような気が……いや、これも自惚れか勘違い?




「……もしかしてさ?」

「ん?」

「櫂も……さくらちゃんのこと、好きなの?」


 光太郎が予想外にそんなことを聞いてくるから、驚いてスマホを落としそうになる。


「……は?!そんなんじゃねーよ」


 また、嘘をついてしまった。さくらへの気持ちを、事あるごとに俺に話してくれてた光太郎。やっぱり今更……言えない。


「そっかぁ……」


 スマホを返すと、光太郎はポテトを口に運びながら受け取って、言った。



「俺さ、さくらちゃんの好きな人って……櫂だと思うんだよね」

「は?!なんで?」


 今度は突然そんなことを言われて、口に含んだコーラを吹き出しそうになる。


「だってさくらちゃん、いっつも櫂のこと見てんだよ?」

「…………」


 知らなかった。さくらが俺のこと……見てる?



「……まぁ、櫂なら俺もさすがに諦めるしかないなーって思ってんだけどさ。どうせ諦めるなら、ちゃんと両想いになって幸せになってもらいたいじゃん?笑」



 光太郎は、どこまでも良い奴だ。


 もし本当に、さくらが俺のことを想ってくれてるのなら……光太郎のためにもさくらをちゃんと幸せにしてあげないとな……。


 初恋に戸惑い続ける俺の中で、そんな一歩進んだ気持ちが湧いてきた瞬間だった――


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