甦れ

「ドラゴンだぁぁぁぁ!」


その悲鳴と共に、人々は逃げ出す。そんな中、一人のエルフ ムギも逃げていたが躓いてしまう。すると、その背後にエンシェントドラゴンがいた。


「いや…」


ムギは後ろを向き、そう呟く。エンシェントドラゴンは鋭い牙でムギを喰らおうと口を開いた。


「助けて…アッシュ…」


記憶喪失のムギが、その名を呟いた瞬間、アッシュがエンシェントドラゴンの噛みつきを止めた。


「もう二度と…もう二度と!奪わせないぞ!」


「あなたは…」


「我は救えなかった…我が…いや、私が恋した女性を!だが、彼女は生きていた!幸せならたとえ記憶が無かろうと見守ろうと思った!それを…それを!狂気に呑まれたオンボロ蜥蜴に!奪わせて!なるものかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


瞬間、ムギ…いや、アリシアはある記憶を取り戻した。かつて騎士となる夢を教えてくれた彼を、自身が受けた最悪を…そして、自分が好きだった彼を。


アッシュはエンシェントドラゴンの目を潰して投げ飛ばすと、ティラノとグレイトが追撃に入る。そして、アッシュも追撃に入ろうとした瞬間、


「アッシュ!」


「ッ!」


アリシアが彼を呼び止めた。


「アリシア…記憶が、戻ったのか…!」


「うん…うん!」


「…すまなかった…私は…」


「ううん、アッシュは何も悪くない…」


「…今の私は人ではない…それについてはあとで話そう…今は、あの蜥蜴を狩る」


「…うん、いってらっしゃい…あと、大好きよ…アッシュ」


「あぁ、私…いや、我もだ。アリシア」


アッシュはそう言うとエンシェントドラゴンの元へ突撃する。


「ムギちゃん、あいつは…」


柄は悪いが、優しいひとりの冒険者はそう言うと


「私の大好きな人です…」


と言った。


「「「マジかよぉぉぉ!?」」」


「驚いてる場合か!F・Eの奴らは住民の避難させとけ!D以上はあのモンスター達に加勢だ!」


「だけど…」


「あのミノタウロス共は味方だ!俺の直感を信じやがれ!」


「…はぁ、お前の直感なら信じるしかないな」


眼鏡の魔法使いはそう言うと、指示を出した世紀末に出てきそうな冒険者が突撃し、D級以上の冒険者達が彼の後を追いかける。


彼の名はボーク、Aランクのパーティー【死銀の世紀末】のリーダーであり、見た目でかなり損している心優しき男である。

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