辺境区

グローシア辺境区


ここに来る前に聞いたのだが、どうやらかなり面倒な場所らしい。

と言うのも、グローシア辺境区の8割は危険区域であり、推定ランクは最低でA、最高でSSらしい。そのため、かなり強い冒険者達が集まる場所でもある。


そんな辺境区に唯一ある街がグローシアとのこと。そこはアルドイラ辺境伯が管理している街であり、非常に住みやすい街とのこと…


矛盾しているが気にしない。


と、これがアッシュから聞いた情報である。詳しくはグローシアについたらわかるらしいので、


「よし、まずはアリシアさん探しだ」


『うむ…』


とりあえず、この辺りで話を聞いてみよう。






「…アリシアさんらしき人がいるのは、このギルドにいるんだよな」


『うむ…』


『…アッシュさん』


『わかっておる…もしアリシアなら、私を恨んでいてもおかしくはない…』


俺は扉を開けて中に入る。すると、受付嬢としてはまだぎこちないエルフの女性がいた。


『アリシア…』


俺はそれを聞くと、意を決して話しかける。


「あの、冒険者登録したいんですけど…」


「…はい、分かりました」


「…あの、アリシアさん…ですか?」


「…いえ、私…記憶がないんです」


「えっ?」


「自分の名前も…どこからきたのかも…そんな記憶もないんです」


「…そう、なんですか…アッシュって名前の人も…」


「…はい、わかりません…」


記憶喪失…アリシアさんは極度の絶望に耐えるために、記憶喪失になってしまったのかもしれない…一種の防衛本能…だったっけ。


『おぉ…何という、ことだ…』


『アッシュさん…』


『我は今、自分が憎い!我に力があれば…こうはならなかった!』


嗚咽を漏らしながら泣くアッシュと、それを慰めるグレイト。箱庭から聞こえるその声を聞きながら、俺は冒険者登録を終えた。


本来なら、喜ぶところだろう…だが、俺は喜べなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る