第3話
仕事も滞りなく終わり、帰り支度をしていた私の前が急に暗くなる。ふと見上げると黒岩君がデスクの前に立っていた。
「赤木さん、お願いがあるんですが。接待に……」
私は慌てて、黒岩君を隅の給湯室まで引っ張り聞いた。
「今日はヤバイとメールが回らなかったのか? 」
黒岩君は思い当たったのか『アッ! 忘れてた!』と云う顔をした。
「お願いしますよ~約束してしまったんです」
なんとも情けない、まるで迷子になった幼稚園児の様な顔に嫌とは言えなくなった。
「う~ん。ウコンが効かなくて、昨日の酒がやっと抜けたところなのになあ~仕方無い。メンバー以外に誰か連れて行かなくては」
と云う事で白羽の矢が立ったのは黒岩君と同期の神尾君だ。
若いのに良く気が付いて、お客さん受けの良い彼が、本当だったらウリアゲンジャーのメンバーになる筈だったのだが、如何せん名前に問題ありで皆に却下された経緯がある。
黒岩君に神尾君を誘う様に言って、私はデスクで待っていると。
「赤木さ~ん、大丈夫で~す」
遠く離れた神尾君のデスクから、黒岩君がデカイ体一杯に大きい丸を作り、満面の笑みを浮かべた。
『悪気は無いのだが、目立って仕方無いなあ~』
苦笑しながらも、お客さんの待つクラブ≪ビーナス≫へと行く事になったのである。
「ガハハ、久しぶりだな。え~」
「ご無沙汰しております。赤木でございます」
よりにもよって、私の苦手な『亀津道本舗(ガメツドウ)のオヤ……社長だ。タダ酒だと兎に角、飲みまくる。ホステスにはセクハラしまくりの、ど~しょもないオヤジだ。
適当に酔わせて潰して置けば良いと高をくくっていたが、まあ~飲むわ食うわ、次いでにホステスの尻を触って叩かれてガハハと笑う、オヤ……社長は上機嫌だ。
その時、携帯が鳴った(バイブ)! 騒がしい店から出てメールを見る。そこには……
『ウリアゲンジャー出動せよ!』
謎の指令官からの出動要請。ガハハおやじの事などに構ってはいられない! 日本の(自分の守備範囲)平和の危機だ!
急いで黒岩君の頭を叩き、酔いを冷ましてから現場へと急行する。途中で電信柱とお見合いしてる青木さんを見付け、後ろからおもいっきり頭を叩き、日頃の恨みを晴らす。
何故私がウリアゲンジャーのリーダなのか? それは、名字が『赤』と云う事の他に酒が強いと云う理由で任命されたのであった――
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