第8話 闇落ち寸前5秒前
とりあえず、宣言通りの3ターンは終了した。
が、やはりサオリはつまらなさそうだ。
モブ共は、殺され疲れたのか、全員、へたり込んで立てない様子だ。
一部を除いて。
(これ、普通にダメなレベルなんじゃ…)
ふとそんな事が頭をよぎる。
ダメとは、レベルがダメなのではない。
予備校に居てはいけないレベルという事だ。
つまり、即転生して、魔王になって活躍してもいいレベルという事。
ここに来て半年…いや、もしかしたら、もっと以前から、持っていた潜在能力は高かった可能性がある。
アイが、神を欺いてって言ってたし。
何故、神をも欺いて、この予備校に居続けたのかは定かではない。
(絶対、サオリの中に闇があるな…なるほど、闇属性なわけだ)
このへんは、深くは追求しないでおこう。
そろそろ第二ラウンドが始まるみたいだしな。
サオリは仁王立ちのままモブ達を睨み続けている。
オロオロする1号以下、4号から9号。
そして、サオリに睨み返す2号と3号。
「あなた達、わざと弱い振りをしていたわね!」
「いや、俺は…」
即、返事をしたのは1号、転生種族がゴブリンで、たしか土属性持ちだったはず。
たぶん、いや、知らんけど。
「あなたじゃないわ!そこの勇者候補と賢者候補よ!」
2号と3号の事である。
「「チッ、バレてたか…」」
勇者候補と賢者候補はニヤリと笑い、示し合わせたかのように、同時に立ち上がった。
☆☆☆
「どうやら、面白い事になってきたようじゃのう」
アイよ…何ウキウキしてんだお前は。
まぁ、確かにあの2人は明らかに手を抜いていた。
蘇生してもらえるのを計算に入れて逃げ惑う演技をしてわざと殺されていた。
それは間違いない。
「俺達はなぁ…転生したら、勇者と…」
「賢者になるんだぞ!」
息がぴったりだ。
どこかで練習でもしていたんだろうか。
職業が、いわば異世界の花形的立ち位置でも、次元の行き先は互いに違うはずなのだ。
変なとこで仲間意識を持っていやがるな、こいつら。
とか思ってしまう。
ギロリ!
サオリの殺気だ。
ギロリ!
2人は殺気を殺気で返して相殺した。
ん?あとの7人?
あらかじめ龍神ユウキが結界を張ったから大丈夫だ。
無詠唱だが、結界はドーム型で、それぞれに色が違うから一目瞭然だ。
結界がなければ、互いの殺気にあてられて死んでしまう。
サオリのデモストレーション(?)は終了しているのだ。
いちいち蘇生なんかしてられない。
何?それぞれの結界の色を知りたい?
贅沢だな。
アイが白、ユウキが赤、いずれも半透明だ。
俺?俺は無色だ。
誰にもわかってもらえない悲しい色だ。
触らなきゃわからない。
おいこら、そこ!
俺を憐れむんじゃねー!
☆☆☆
「「勇者や賢者はなぁー!魔王を倒すためにいるんだよ!正義の味方なんだよ!世界を救って、みんなにちやほやされる存在なんだよ!わかるか!魔王候補の味噌っカスがぁ!」」
わお!綺麗にハモってる笑
結構長いセリフだったのに…。
絶対どっかで練習してただろ?お前ら。
つか、お前らも候補だからね。
「やめろ!お前ら!俺達は負けたんだ!」
1号が結界の中から2人に向かって叫ぶ。
「「うるせー!ゴブリンがぁ!テメーみたいな使えねー奴に、もう用はねぇんだよ!あんなクソガキ先公に舐められやがって!俺達の計画が台無しだよクソゴブリンが!」」
うーわ!またハモってる笑
大声で笑っていいかな?
いいよな?
サオリも、呆れた顔でやり取りを見ている。
戦意はなくなったようだ。
ズゴゴゴォォォ…
そんなシュールな光景をぶち壊すように、2人の罵声に怒りを覚えた様子の観客席ギャラリー。
ユウキと同じく、特別指導員としてココにいる竜神達から凄まじい殺気が滲み出てきた。
瞳は怒りで真っ赤である。
(あー。これ、絶対ややこしくなるパターンだ)
「ユウキ、みんなを宥めてきて。もうすぐ終わるからって」
「はっ!旦那様!ただちに!」
流石はユウキ、流れをわかっている。
アイはニヤニヤしながら、無言で2号と3号を眺めているだけだ。
ユウキが竜神達のところに行き、口に手を当ててコソコソっと喋った瞬間、竜神達から殺気は消え、爽やかな笑顔になった。
現金なものである。
サオリは観客席、モブ1号、2号3号を変わるがわる見ながら、首を傾けていた。
おそらく、今は頭の上に沢山の?マークが浮かび上がっているのだろう。
2号3号がサオリに向き直った。
中々、切り替えが早い。
戦闘慣れしている感じだ。
実技をした覚えはないんだがな俺は。
2人からサオリに放たれるドス黒い気配。
これは通常の殺気ではない。
悪意と殺意が入り乱れて溢れ出ている殺気。
しかも、悪魔にとっては、とびきり上質の悪意と殺意だ。
悪意に殺意が入り混じり、その状態で殺気を放つと、ドス黒いオーラが出る。
悪意のない殺気には、さほど色はつかないのだ。
若干、紫がかったオーラになるぐらいだ。
先程のサオリと2人の殺気の応酬、サオリからの殺気には淡い紫のオーラが、2人からは濃い紫のオーラが放たれていた。
そこに悪意はあまり込められていなかった。
間違いない。
何故って?
俺が、物や物事を色で識別する 色別スキル の保持者だからだ。
普段は意識的に遮断している。
そうしないと、世界を見る時、常に目がチカチカするからだ。
コホン
ドス黒いオーラを放つ2人には悪いが、もう時すでに遅しである。
これから2人は闇落ちする。
カウントダウン
5……4……3……2……1……。
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