第5話 特別指導 2

コホン

でだ。

この闇落ちしない組は、学校の趣旨に意を唱え、俺の周りに寄り集まって胸ぐらをつかんでツバを吐きながら巻き舌でからんできた奴ら。

(なんで闇落ちしないんだろうか…)

ふと、こんな事を思ってしまう。

今までは、意を唱えた瞬間に闇落ちしていたはずだ、こんな輩は…。

今回が、そんな理由だからなのか、ユウキ達はリンチ…もとい、張り切って指導しているのだと思う。


さっき説明したように、この学校は俺の家族と家族の配下が運営している、いわばワンマン学校である。

好きにできる。


では何故、嫁のアイが校長をしていて俺が講師なのか…答えは簡単だ。

アイには、この亜空間を管理する仕事がある。

次元神だしね。


さっきも少し触れたが、ここは、あらゆる次元に繋がっている、魔法社会において無くてはならない空間なのだが、それが今現在、ちょっとヤバい事になっている。

管理は必要なのだ。


そして、俺はこれでも訳あって忙しい身なので、いろんなセクションをアイ以外で分業して転生者を教育しているというわけだ。


そして、この学校の存在理由。

それは、平たく言えば、転生者があちこちの異世界で おいた をしないようにガッツリ教育するために存在する。


だから、おいた をしないように教育するし、闇落ちしそうな奴には出戻ってもらい、再教育を施すというわけだ。

再教育組の講習は特別指導しかないがな。

闇落ちしない組よりも過酷だが、再更正するにはそうするしかない。


そんな奴らと比べたら、サオリはすでに合格だと思う。

キラキラした目で地獄絵図を眺めているし。

しばらくは好きにさせておいてやろう。


コホン

その転生者は基本、地球の日本から異世界に転生する。

そして、地球では魔法概念が空想の産物として扱われている。


では何故、日本なのか、という疑問に至るわけだが、それは地球上に置いて、日本という国、そこに住まう民族が、その空想の産物を異世界という舞台に転生して無双するという発想に、他の国よりずば抜けて秀でているからなのだろう、特に若い世代。

俺も最初は地球の日本でいろんな事を学んだ。

日本人の想像力は本当に半端ない。


他の国は、それをパクって…コホン…参考にして似たような物語を文章や漫画、アニメや実写を作り楽しんでいる。

いわば異世界転生というストーリーは、地球に住まう人間達の娯楽の範疇はんちゅうなのだ。


その中で、日本という国に住まう人間、いや、その一部の人間は、そういうカテゴリーの最先端を爆速ヒャッハーしていると言っても過言ではないだろう。


☆☆☆


しかし、異世界は実際に存在する。

異世界人からすれば、地球もまた異世界であり、稀に見る <魔法概念が存在しない、知的生命体が人族しかいない文明社会> で成り立っている珍しい星なのである。

魔力には満ちているんだが、ほとんど活用されていない。

それでも宇宙に行っちゃうような、魔法社会の者からしたら、ちょっと頭がおかしい人種である。

いやまて、これは褒め言葉な。


その 空想の産物 が、実際にあるというのを知っているのは、転生した本人のみだ。

異世界を他の人間が知る術はない。


だから、力を得た時、闇落ちしない組や再教育組は、最初、例外なく増長する。

ただでさえ、魔法という概念が実際にある事を知り、転生特典で通常、異世界に住む種族より優れた能力を持って転生するのだ。


異世界転生者となる条件。

それは

末端で、異世界という概念を持っていて、あったらいいなぁと願望する者。

次に、異世界したら俺は私はーと想像する者。

最後に、いわゆる厨二病と呼ばれる類の、現実と仮想の境目が曖昧な者。

その度合いにより、転生特典が異なってくる。


地球では…特に日本では、高齢の厨二病者は、例外なく忌み嫌われる。

キャラが濃すぎるからだ。

若いうちは笑って付き合ってくれたとしても、高校大学と、年齢を重ねる毎に、笑いが生暖かい目になり、やがてドン引きされ、敬遠されるようになる。


しかし、転生者予備軍としてに来たら、立場は逆転する。

厨二病をこじらせればこじらせる程、能力は跳ね上がる。

基本能力が桁違いになるのだ。


ちなみに、幼少期の子供が転生するのは、ヒーローが世界を救う世界や、モンスターを育成してバトルをする世界などだ。


コホン

ゆえに、邪な心を持ったまま、そのまま何の制約もなく転生すれば、転生先で必ず おいた をする。

そして、やがて悪魔に魅入られて支配される。

結果、世界が悪魔の支配下となる。

そんな悪循環が繰り返され、この亜空間領域にも影響が出ているのだ。


増長するのはいい、無かった力を持てるようになるんだ。

それは仕方がない、それが人間だもの。


ただ、それを私利私欲で使うような考えを最初から持って転生するのはダメなのだ。

すぐに悪魔の餌食になるから。

だからここでは、途中下車させる代わりに、与えられた転生特典に、更に特典を上乗せして転生させるのである。


え?転移や召喚があるだろうって?

そんなもの、今はその権限ごと俺と嫁がすべて掌握しているから無理なんだよ。

ザマァだな。


はっはっは


と、ドヤっている時にサオリが真剣な顔で俺に宣言した。


「やってみたいです!指導側になってもいいって言ってましたよね?本気を出しますから、是非やらせて下さい!」

「え?あ、いいよ」


目を輝かせて訴える、サオリの勢いに推されて即答してしまった。


「やってみたいです!指導側になってもいいって言ってましたよね?本気を出しますから、是非やらせて下さい!」

「え?あ、いいよ」


目を輝かせて訴える、サオリの勢いに推されて即答してしまった。

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