プロローグ 2

どれぐらいの時間がたっただろう。

考えすぎて疲れてしまったのだろうか…。

気絶というよりは、眠りに近い感覚で意識を失った気がする。


意識を取り戻し、再度記憶を掘り起こしても何も出てこない。

つまり、意識を手放す前に考えた事以外の情報が、今の俺にはないと言う事。

かろうじて、何か目標を定める…という事だけを覚えているぐらいだ。


それでは、次はどうすればいいのか

結論は簡単だ。

今持っている情報から、今後俺に出来る事、やるべき事を考えて目標を定める。


何せ、俺は今、考える事しかできない状態だからだ。

手足があるのかもあやしい。

俺の、今の状態がどうなっているのかよくわからないのだが、意識しか動いてないのはわかる。


ならば、やる事はひとつ。

ひたすら考える。


とりあえずは、今の現状を打破しなければ、何も出来ないに等しい。

何も始まらない、それはまずい。

いや、嫌だ。

なんとかしたい。

これが本音だ。


ふむ。

悪くない。

もう一度いうが、今の俺は考える事しかできないのだから、この結論は当然と言えば当然の結果だ。

第一目標も決まった。


現状を打破する。

これだ。


さて…まずは…。


と、目標を定めて思考しようとした矢先、どこからか話しかけてくる奴が現れた?いた?

まぁ、どっちでもいい。

とにかく、こんな事を話し出したって事だ。


「お前は悪くない。これはお前の試練じゃ。ワシ達はお前のやる事に助力をする者。非力なワシらにできる事はそう無いかもしれんがな。まぁ、あまり期待はするな。フォッフォッフォ」

しがれた声で呟くように男が囁く。

何故笑っているのかは謎だ。

試練??

助力はするが期待はするな?

何を言ってんだ、こいつは…。


まぁ、とりあえず、意識に直接語りかけてないあたり、どうやら耳はあるのだと言う事は理解した。


引き続き、誰かが言った。

「世界を救って。あなたにしかできないの。フフッ」

慈愛に満ちた優しそうな声で女が囁く。

が、また何やら笑っている。

俺に何をしろと?


その後、暗闇が引き裂かれ、光が漏れた空間で誰かが言った。

「とりあえずは何か目標を持って頑張りなさい。お前の願いはあらゆる世界の理を覆すかもしれない。決して楽ではないが、ほぼ必ず思い描いた世界が実現するような気がしないでもない。我々は期待せずに待っている。プッ」

えらく軽いノリで、人の人生を嘲笑うかのように男は笑う。

しかも適当だ。絶対面白がってる。

間違いない。


しかし、目があるのは確認できた。

これは、大きな収穫と言えよう。


(目標なら決めている!お前に言われなくてもな!)


くそ!と毒を吐いたところで、今の俺に何ができるわけでもない。

現時点で、耳と目があるというのがわかっただけなのだから。


そして、目標は決まっている。

現状を打破するという目標が!


こいつらの言う事を真に受けてても何の解決にもならない事だけはわかった気がする。

きっと気のせいではない…はず。


そして、俺はこいつらが嫌いだ。

本能的に…だ。


そして、また意識が遠のいた。


☆☆☆


その後、目を覚ましてから、程なくして謎は徐々に判明していく。


『ようこそ、仮想現実の世界へ

ここは地球と呼ばれる青き星を舞台としたリアル体験型ゲーム内です

このゲームは育成ゲームであり、あなたはこれから、この仮想世界で思ったように生きていく事が目的となります


ゲームのクリア条件は、定められた80年という天寿を全うする事

クリア報酬は絶大な力、富、名声、権力となります


このゲームにはセーブ機能がなく、ゲームオーバーとなったら、最初からのスタートできる親切な仕様となっております


基本スキルとして、自動、任意で行える

言語認識、超回復、超速再生、探知、情報保存

を付与いたします

使い方は思念、言語、どちらでも使えます

スキル能力はあなた次第、特に制限はございません


この仕様は確定ではなく、あなたの行動ひとつで、どんな可能性も秘めていると言えなくもありません


尚、チュートリアルは存在しませんので、自分で模索しながらスキルを使いこなし、クリアを目指して下さい』


(!!!………はい?)


こんな、抑揚のない機械的な声、いや、音声と言った方が近いか…まぁ、いい。

とにかく、その声に叩き起こされたのは間違いない…何故なら…怒


大音量で、こんな長い同じフレーズを10回も繰り返されたら嫌でも起きるわ!

説明音声までふざけてんのかクソが!


と、毒を吐いていたら唐突に始まった。


『ゲームスタートです!』


この音声は1回だけだった

ちょっと安心した


が…


「オギャー!」


俺はその時、発した言葉が赤ちゃんの泣き声だった事に、思考を再び止める事となった。


何故なら、ゲームオーバーになった場合、赤ちゃんから事が確定したからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る