第39話『ロリが為』


 戦いは終わった。


 あの後、ツマノス国側と話し合った結果、ツマノス国は俺たちの国である『精霊国家ロリコニア』の建国を認め、和親を結ぶことになった。


 交渉の仕方によってはツマノス国を精霊国家ロリコニアの属国にすることも出来たらしいが、それはロリ様達の望むところではない。そもそも、絶対にサクラちゃんはそんな事を望んでいない。


 そうしたゴタゴタの中、俺達が捕らえたキラーラちゃんは昏睡状態にあった。

 かれこれ一か月間、ずっとだ。

 ルーナが言うには、精霊は数か月くらいなら飲まず食わずでも生きられるとの事で、今は無茶な力の使い方を続けた反動で眠っているだけとの事だが……心配だ。


 ちなみに。ツマノス王にキラーラちゃんについて問いただしてみたが『デヴォルから押し付けられた』という答えしか得られず、結局デヴォルについてもキラーラちゃんについても何も分からなかった。



「「「キラーラちゃん……」」」


「のぅ、お主ら……気持ちは分かるがもうちっと自重するべきじゃね? 大の大人が寝てる女の子を囲んでるって、傍から見たら事件じゃぜ?」



 ロリロリワールドに用意してあるふかふかベッド。

 そこでキラーラちゃんは、時々苦し気に顔を歪ませて眠っている。

 寝ているキラーラちゃんは大体こんな感じだ。

 何か悪い夢でも見ているのか、ずっとうなされている。



「くっ……俺にもっと力があれば……すまない。キラーラちゃんっ」


「会長……」


「会長は悪くないですよ」


「むしろ、俺たちこそいざって時に役立たずですみません。まったく……誉れあるロリコン紳士が聞いて呆れるっ!」



「なぁ、儂の話聞いてる? そもそも、キラーラちゃんは力を使い過ぎて眠ってるだけってルーナ嬢ちゃんが言っとったじゃろが。なのになんでもう起きないみたいな雰囲気なんじゃぜ?」



 俺達ロリコン紳士が不甲斐ないばかりにこんな事になって……本当にすまないっ。

 俺達にもっと力があればキラーラちゃんを傷つけずにすんだかもしれないのに。

 無力だったばっかりに……こうしてキラーラちゃんを傷つけてしまった。



「アコン……大丈夫?」


「ルーナ? ああ、大丈夫だ。今は俺なんかより、キラーラちゃんの事が心配だよ」


「心配しなくても、キラーラならもうすぐ起きると思うわ。そろそろ力も回復してるでしょうし。むしろ……アコン達の方が心配。もう何日も寝ずにそうしているでしょう?」


「ああ、俺達は大丈夫。こうしてロリ達の顔を見ているだけで元気になれるからな」


「そう? それならいいのだけど……」


「なぁ、アコンよ。儂の事はガン無視? のぅ?」


「キラーラちゃん……クソッ。もし俺が君の夢の中に飛び込めたのならどんな悪夢だってやっつけてやるのにっ!!」



「……のぅ、サクラちゃん。儂……居場所がないんじゃが……」


「だ、大丈夫だよユーリっ! みんな、今だけキラーラちゃんの事で頭が一杯になってるだけだからっ。今はああだけど、きっとアコンさん達もユーリがツマノス国の人たちを相手に色々頑張ってた事、感謝してくれてると思うな」


「そうかしら……。あのロリコン紳士達、そういう事は片手間にやって後は全部ユーリさんに投げて後はずっとキラーラや他の精霊の相手してたわよ? ユーリさんが苦労してた事すらしらないんじゃない?」


「……なぁ、儂、泣いてもよいよな?」


「「………………よしよし」」


「「「!? てめぇユーリィッ! 甘やかし系ロリのサクラちゃんだけならともかく、責め系ロリのレンカちゃんにまで頭なでなでされるだとぉ!? そんな事が許されると思ってんのかゴラァッ!?」」」


不憫ふびんすぎるんじゃぜ儂!?」


 サクラちゃんとレンカちゃんによる頭なでなでという天上の至福を受け入れておきながら、訳の分からない事を叫ぶユーリ。

 ――まったく。俺達がキラーラちゃんの事を心配している間に抜け駆けとは……ユーリにも困ったものだ。



 そうして俺を含めた数人のロリコン紳士達がユーリを制裁しようとしたその時。


「ん……んん……ここ……は?」


 長く閉じられていたキラーラちゃんの瞳が開かれていた。


「「「キラーラ(ちゃん)!?」」」


 起きたばかりでまだ意識が朦朧もうろうとしているらしいキラーラちゃん。

 彼女は俺たちの顔をぼーっと見つめる。


「お兄ちゃん達……どこかで……あっ!?」


 そうして何かを見たとたんに、体を強張らせるキラーラちゃん。

 その視線の先にはルーナが居た。


「そ、そうだ。私……デヴォルは? ううん、そんなの関係ない。私は……あなたを手に入れなきゃいけない。絶対に……そうじゃないと……道具として使ってもらえない。失ったものを取り戻せないっ」


 必死に身を起こそうとするキラーラちゃん。

 しかし、まだ体に力が入らないのかそれすらも上手くいかない。


 力を使い果たしたのに、それでもなお道具として使われることを望む精霊の少女。


 あまりにも……哀れだった。


「キラーラちゃん。デヴォルはもう居ないんだ。もう、君は自由なんだよ。だから――」


「……あぁ、そうなんだ。あの後デヴォル……やられたんだ。でも、無駄だよお兄ちゃん。あのデヴォルを倒したとしても、同じのがたくさん出てきちゃうんだもん。それに……私は……あいつらを裏切れない。お兄ちゃんの言う自由はすっごく魅力的だけど、無理だよ……」


「同じのがたくさん出てくる?」



 デヴォルは確実に死亡した。もうアイツが出てくる事はないはずだ。

 しかし、デヴォルは死ぬ寸前にまだ終わりじゃないみたいなことを言っていたのも事実。 

 だが――


(いや、そんな事はどうでもいいっ!)


「キラーラちゃん。俺が……俺達ロリコン紳士達が君を何者からも守ってみせるっ。仮にデヴォルが無限に湧いてこようが、その全てから君を守る。だから……お願いだ。もう、自分がやりたくない事はしないでくれ。俺たちの味方をしてくれなくてもいいし、なんなら嫌ってくれてもいい。だから……俺達に君を守らせてくれないか?」


 キラーラちゃんが言う『あいつら』が何を指しているのかは分からない。

 彼女が何に恐怖しているのか、何を取り戻そうとしているのか。それは分からない。

 だけど、それでいい。



「君が何をそんなに怖がっているか……俺達には分からない。だけど、仮に世界全てを敵に回しても、俺たちロリコン紳士は君の自由な意思を守りたい。何を強制される事もなく、ただ平和に幸せな日常を君みたいなロリ様が過ごす事。それこそが俺たちの夢なんだから。――そうだろ、みんな?」


「そんなの当たり前じゃないですか会長。この命、ロリ様の為なら喜んで捨てますよ。キラーラちゃん、俺は君の為なら喜んで死ねる。だから、どうか俺に君を警護させて欲しいっ」


「あっ、コラッ! 抜け駆けすんじゃねぇよ卑怯者がぁっ! キラーラちゃんキラーラちゃんっ! 僕だって君の為なら命を賭けられるよっ。君の言う事なら、ロリ様を傷つけない範囲でならなんでもいう事を聞く犬になるっ。

 だから……嫌だったら断ってくれていいんだけど……俺を虐めてくれないかな?」


「てめ引っ込んでろこの変態がぁっ!! き、キラーラちゃん? 説得力ないかもだけど、こいつら悪い奴らじゃないんだよ? ただ……ほら。君があまりにも魅力的だから、緊張しちゃってるだけなんだ。俺も含めてね。どうだろう? 気持ち悪いこいつらは放っておいて、俺を君のお傍付きにしないかい? 一生君を守って見せるよ」


 キラーラちゃんを守りたい。

 そんな自身の思いのたけを次々にキラーラちゃんにぶつけるロリコン紳士達。

 そう――これこそが、俺の仲間であり同志。誇るべき、最高のロリコン紳士達だっ!!



「「「――これは酷い」」」



 そんな誇るべきロリコン紳士である俺達を、ユーリやレンカちゃん含む精霊達が少し離れた所で呆れた表情を浮かべながら見ていた。

 なぜだ……今は感動的場面のはずなんだが……。



「お兄ちゃん達……私を責めてないの? 私……いっぱい悪い事したよ? なのに――」


「キラーラ」


 そっと――キラーラの手を握るルーナ。


「アコン達は……ロリコン紳士達は絶対に貴方あなたを恨まないわ。それは……あなたにも分かってるんじゃない?」


「A2様……」


「違うわ。私の名前はルーナ。アコンが付けてくれた私だけの名前。大切な……私だけの物」


「な……まえ?」


「そう、名前。人間にもある一人一人の名前。アコン達は名前のない私たちに名前を付けてくれた。親が子を大切にするように……ううん。それ以上に深い愛情をアコン達は私たちに向けてくれてる」



「愛情……そっか……うん。お兄ちゃん達は……そうだね。そっかぁ……それでも、こんなに色々やっちゃった私も許すだなんて……お兄ちゃん達、甘いよ。甘すぎだよ……」


「ええ。アコン達は甘いわ。精霊達に対してすごく甘い。だからこそ、敵対したあなたを傷つける事も出来ず、苦戦したわ。

 ――でも、だからこそ……全てを委ねてもいいと思える。アコン達が私たちを全力で信じて、愛してくれるからこそ……私はアコン達に全部任せられるの。

 だから……キラーラ。あなたもこっちで戦いましょう? ロリコン紳士達と私たち精霊が力を合わせれば……きっとゴーストナイトだってやっつけられるわ。あなたが失った記憶……それ、きっとA1の仕業でしょう? でも、あの子の言いなりになっても記憶は戻らないわ。だから……あの子を倒す事で記憶を取り戻しましょう?」


「ゴーストナイトを……A1様を……倒す?」


「ええ。今すぐには無理だけど……アコン達ならきっとやってくれる」


「根拠は……あるの?」


「そんなのないわ。ないけど……私は、アコン達を信じる。そう決めたの」



 俺達を置いてけぼりにして、話を進めるルーナとキラーラちゃん。

 そうしてルーナとキラーラちゃん。互いの視線が交差する。

 どちらも、相手から目を離さない。


 まるで、その瞳の奥にある何かを見つけ出そうとするかのように。

 そして――静寂が破られる。


「ぷっ」


 キラーラちゃんが小さく吹き出す。


「あははははははははははっ。ルーナったらおっかしー♪ ここに来て馬鹿になっちゃったのぉ? 私一人に手こずってた雑魚お兄ちゃん達がゴーストナイト全部に勝てる訳ないじゃ~~ん。もしかして、算数できないのぉ?」


「難しいのは分かってる。でも、アコン達の実力は本物。それに、あなた一人に苦戦したのはアコン達が精霊を傷つけるのを嫌うからで――」


「それ、負け惜しみにしか聞こえないよぉ? それにさ。それが本当だったとしても、ゴーストナイト相手に『精霊は傷つけられませ~ん』なんて致命的だと思わない?」


「うっ……それは――」


 目に見えて分かるくらい狼狽えるルーナ。

 それを見て、勝ち誇ったようにキラーラちゃんが笑い声を上げる。


「あはははははははははは♪ ルーナったら分っかりやす~~い。そんな自分も騙せない嘘でこの私を騙そうなんて、笑止千万ってやつだよ♪」


「うぅ……」


 完全にやられてしまった感を漂わせるルーナ。

 肩も落ちて、落ち込んでいるのが分かる。いつも不思議系クールロリを貫いてるあのルーナがだ。これはとても珍しい。


「今の雑魚お兄ちゃん達じゃぜーったいにゴーストナイトには勝てませ~ん。

 だから――少しだけ協力してあげるよ」


「そんな……って……え?」


「だ~か~ら~。私も雑魚お兄ちゃん達の味方をしてあげるって言ってるのっ。ねーねーお兄ちゃん達ぃ~~? まさか断らないよね~~? こーんなに可愛いロリの私が味方になるなんて、夢みたいだよねぇ? 嬉しかったら『ワン』って鳴いてみて?」


「「「ワン」」」


「あはははははははははは。上手上手~~。よくできました~~。ねぇ、ご褒美に踏んであげよっか?」


「「「ぜひお願いします」」」


 一部、完全にMと化したロリコン紳士達がメスガキであるキラーラちゃんの言いなりと化している。


 これは……さすがに酷い。


「あ、でもごめ~~ん♪ 今はルーナとお話し中だから、ちょーっと待っててね? 踏んでほしい人は土下座したまま黙って待機~~♪ ちょっとでも動いたり、喋ったりしたら踏んであげないぞ♪」


「「「――――――」」」


 そこには別の意味での地獄があった。

 いい歳した大人達がメスガキであるキラーラちゃんに対して恥も外聞もなく土下座していた。

 もちろん、彼らの気持ちは分からないでもないが……さすがの俺もここまでは出来ない。


「そういう訳で……私も戦うよ。どうせデヴォルの所に戻っても処分されるだけだろうし……こっちの方が楽しそうだもん。いい……よね?」


 さっきの態度はどこに言ったのか。いじらしく自分が仲間に加わってもいいかと不安げに尋ねるキラーラちゃん。

 その対象はルーナであり、俺でもあり、この場に居る精霊達全員でもある。


 俺は黙って親指を立て、彼女の仲間入りを歓迎した。

 それに倣い、土下座をしていない非Mのロリコン紳士達が親指を立てる。


 そして――精霊達はと言えば。


「いいけど……」

「キラーラちゃんにも色々あったんだろうし、私も賛成だよ? でも……」


 ルーナやサクラちゃんがキラーラちゃんの仲間入りに賛成しつつも、言葉を濁す。

 

「もちろん、ロリコン紳士さん達がいいって言うなら私は何も言わないわ。ただ……まずはこの状況をなんとかしなさいよっ!? 酷い事になってるじゃない!?」


 ルーナやサクラちゃんの言葉を代弁するかのように、レンカちゃんが土下座しているロリコン紳士達を指さしながら怒鳴る。

 しかし、キラーラちゃんは不思議そうに首を傾げ。


「? でも、クソ雑魚変態お兄ちゃん達にとってこれはご褒美でしょ? 私も楽しいからいいかな~~って」


「そうだけど……そうだけどっ!!」


「でしょ? それじゃあクソ雑魚お兄ちゃん達。踏んであげるからこっち来て? 自分から私の足元に寝転がってはぁはぁ言いながらお願いしたら踏んでア・ゲ・ル♡」



 地団太を踏むレンカちゃんと、もはや完全に手遅れとなってしまったドMロリコン紳士達。

 ああ……あいつらはもうダメだ(確信)。



「アコン……」


 そんな中、いつの間にか俺の隣に来ていたルーナ。

 彼女がそっと、俺の右手に触れる。

 触れて、そしてきゅっと両手で握りしめてきた。


「ルーナ?」


「ここからよ――今度はツマノス国なんて目じゃないくらいの敵が……私たちの目の前に現れるわ」


「私はアコンを信じる。アコンに私の全てを預けるわ」


「だから……これからも私と一緒に戦ってくれる?」



 不安そうな瞳で、俺を見上げるルーナ。

 実際、不安なんだろう。彼女が何を抱えているか、未だにきちんと聞けていないが、それがとてつもなく重いものだってことくらいは分かる。


 だけど……いや、だからこそ。

 俺はそんな不安を少しでも吹き飛ばしてもらえるよう、明るい感じで答えた。


「当たり前だ。俺は誇り高きロリコン紳士だからなっ」


 そんな俺の返事に対し、薄く微笑むルーナ。

 それは、名付けた通り月のような微笑みで……とても綺麗だった。




 ――そうだ。

 敵が誰だろうと関係ない。

 俺は……俺たちはロリである彼女たちの為なら何でもできる。


 ルーナやキラーラちゃんの話から推測するに、敵はかなり強大なのだろう。

 だが……俺たちならば……俺達ロリコン紳士ならば、どんな難敵だって乗り越えられるはずだ。


 そうして全ての困難を乗り越えたその先で――俺達は永久にロリ様達が平和に暮らせる国を実現させるのだ。


 

FIN



★ ★ ★


 『異世界召喚されたので最強のロリコン軍団を作り上げました~精霊国家ロリコニア建設日誌~』これにて一旦完結です!!

 色々と伏線投げっぱなしジャーマンになってしまった)汗


 ここまで読んでくださった読者の皆様。ご愛読ありがとうございました!


 他にも新作含め、色々と書いていく予定なのでまた拙作の作品と出会った際にはよろしくです。

 ではでは。またのお越しをお待ちしております(@^^)/~~~

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異世界召喚されたので最強のロリコン軍団を作り上げました~精霊国家ロリコニア建設日誌~ @smallwolf

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