第30話『勝てない理由』


「な、何を言っているのですか会長!?」


「そ、そうじゃぜ。何を馬鹿な事をいっておるのだお前は!?」


 そう言って落ち込んでいる俺を励ましてくれるロリコン紳士。俺の同志達。

 だが……こいつらは分かってない。

 ロリコン紳士だからこそ、俺たちは彼女にだけはほぼ確実に勝てないのだ。


「ふふっ。道具に好き勝手されるのは少し腹立たしかったけれど……ようやくわかったようね、勇者。あなた達じゃ束になっても私に勝てないという事が」


 こっちを思いっきり煽ってくるクソビッチ魔法使いレイラ。

 確かに俺達はクソビッチ魔法使いレイラとキラーラちゃんのコンビには勝てないだろう。

 だけど、こいつは何か勘違いしている。

 そもそも、俺達が勝てない要因にこいつは1ミクロンも関わっていない。勝てない要因を作りだしているのは100%キラーラちゃんだ。


「そ、そんな……会長さん。どういうことなの!?」


「なんで勝てないって決めつけちゃうのよ!? いつもの会長さんなら絶対に諦めないでしょ!?」


「アコン……私たち精霊が力を貸す。だから――」


 俺を鼓舞こぶしてくれる味方の精霊達。

 かけてくれる言葉を嬉しいが……やはり彼女たちも分かっていない。


「馬鹿はお前らの方だっ!」


 俺は同志達に自分達が勝てない理由を教えてやることにした。


「あの子を見ろっ。あの挑発的な態度……そしてこっちを雑魚と呼んで心底楽しそうなサディスティックな表情……ロリであるあの子に攻撃出来るやつは俺の同志にいないだろう!? それどころか、あの子にならいくらでも痛めつけられていい。そう思ってしまってる部分が絶対にあるはずだ!?」


「ぐっ――」

「なっ……会長、まさか俺の心を読んで……」

「……いや、何を言っとんじゃぜお主ら?」

 

 心当たりがあるらしい同志達。

 当然だ。なにせ、俺たちはロリコン紳士なのだから。


「俺たちはロリコン紳士だ。ロリを何者からも守る守護の盾。だからこそ、ロリに傷をつけるなんてもっての他。ロリ様が嫌がる事も決してしない」


「ま、まさか……だからこそ我々が勝てないと? 相手がロリ様だから……」


「それは早計だヘリオス。相手がただのロリ様なら言葉を尽くせばきっと分かってくれる。それに、最悪分かり合えなくても引き分けなら狙える。そうして時間をかけてロリ様を懐柔することが俺達ロリコン紳士ならば出来ると……俺は信じている」


「ならば――」


「だが、そんな万能に見える俺達ロリコン紳士でも、逆立ちしようが何をしようが勝てない相手が居る。

 それがあの子――通称メスガキだ」


 そう言って俺はキラーラちゃんの方を指さす。


「メスガキ……ですか?」


 聞きなれない単語に、ヘリオスを含めた多くの同志が怪訝な表情を浮かべる。

 そんな彼らに、俺はポツリポツリとメスガキについて説明する。


「……メスガキというのは、簡単に言えば大人を小馬鹿にするロリの事だ。彼女たちは総じて少し露出が激しくて、色っぽくて……簡単に言えばちょっとエロい。彼女の絶対領域……白いドレスから覗くニーソックスの奥を見ようと少し屈んだ同志達なら分かるだろう?」


「「「なっ!? 会長、なぜそれを!?」」」



 ふんっ。気づいていないと思ったのか。そんなの、気づくに決まってるだろうが。

 ――なにせ、俺も反射的にちょっとだけ屈んじゃったからな。


「まぁ、それはいい。ともかく、彼女のようなメスガキは俺たちのような大人を痛めつける事で喜ぶ習性を持っている。そこで厄介なのが……その姿すらも俺達ロリコン紳士は愛おしいと思ってしまう事なんだ」


「それは……つまり?」


 やれやれ。ここまで言っても分からない同志がいるとは。

 なら、もっと簡潔に俺たちがあのメスガキに勝てない理由を告げよう。


「要するにだ。あの子みたいなメスガキは俺達のような大人を痛めつけて喜ぶのに対し、俺達ロリコン紳士はメスガキに痛めつけられると喜んでしまう。相手が全力で攻撃してきているのに、それを喜んで受け入れてしまう。それがメスガキとロリコン紳士の関係なんだっ!!」


「「「な、なんだってぇ!?」」」


「絶対馬鹿じゃろお主ら!?」

「「「馬鹿なの!?」」」


 ようやく状況が呑み込めたらしい俺の同志達。

 

「か、会長!? な、なにか……なにか打開策はないのですか!?」


 慌てた様子でヘリオスがそう詰め寄ってくる。

 俺はそんな彼に対し、力なく首を横に振り。



「打開策があればこんな風に絶望はしていない。ロリコン紳士である限り、メスガキには勝てないんだ……。メスガキは俺達ロリコンを絶対服従させる恐るべき存在……。

 もちろん、メスガキだって万能な存在じゃない。ある種のロリコンならばメスガキを逆に服従させることが出来るが……」


「ならっ――」


「残念ながら、その特殊なロリコンは俺達同士の中には居ない。その特殊なロリコン。それを人は鬼畜ロリコンと言う」


「鬼畜ロリコン?」


「――ああ。俺達ロリコン紳士とはある意味対を為す存在だ。愛すべきロリを性欲の対象としてしか見ず、ロリ様に対しあらゆる責め苦を味合わせる事に快感を覚える……それが鬼畜ロリコンだ。そんなロリコンでない限り、メスガキには絶対に勝てないんだっ!!」


「そんな………………そんな事、出来る訳が……」


「できない……だろう? つまりはそういう事だ。俺達ロリコン紳士があのメスガキに勝つ方法……そんなものは最初からないんだよ……」


「くっ――」


 打てる手が無いことに絶望し、崩れ落ちて両手を地につかせるヘリオス。

 見れば、他の同志達も。


「くそっ。敵にメスガキが居るなんて……」

「反則だろ……こんなの……」

「俺達ロリコン紳士にそんな致命的な弱点があったなんて……」


 勝ち目が微塵もない事を悟り、絶望しきっている。

 そんな中、ルーナとレンカちゃんは――


「ロリコン紳士って……ホント馬鹿」

「ロリコン紳士……ダメね……やっぱり彼らの事、よく分からないわ……」

「いや、ルーナ。眉間にしわを寄せて考える事じゃないから。あいつらみんな馬鹿って事でいいから」

「レンカ……ロリコン紳士達の事が分かるの? ――凄い」

「そんな尊敬の眼差しで見ないでくれる!? すっごい不本意なんだけど!?」

「でも、私……もっとアコン達の事知りたい。……レンカが羨ましいわ」

「うわーー。純粋。でも、なんでかしらね。ぜんっぜん嬉しくないわ……」

「??」


 なんてやり取りをしていた。

 一方で、サクラちゃんとユーリは――


「………………どーすんじゃこれ」

「そんな……みんな……ユーリさん……なんとかなりませんか?」

「いやーー……無理じゃね? 儂もロリを殴るの無理じゃし」

「そんな……」


 為すすべがないと言うユーリと、その事実に唖然あぜんとするサクラちゃん。

 なんとかしてあげたいけれど……敵にメスガキが居るなんて想定外すぎるんだっ!!



 そんな中、ビッチ魔法使いレイラは絶望している俺達ロリコン紳士を苛立たし気に見ていた。

 そして、呟く。


「こいつら……馬鹿にしているの? まるで私の事が眼中にないみたいに――」


 そんなビッチ魔法使いレイラに対し、俺達ロリコン紳士は口を揃えてこう言ってやった。


「「「うっせぇっ! 顔面ババアは永遠に黙ってろっ!!!」」」


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