第20話『精霊会議』
――ルーナ視点
アコン達の会議が終わる。
最初から会議の場に居た私だけど、相変わらずアコン含むロリコン紳士達が言っている事はあまり理解できなかった。
けれど、彼らが私たち精霊を守ってくれようとしている事だけは分かった。
きっと前と同じように、アコンは私の事を守ってくれる。
私だけじゃない。他の精霊の事も彼は守ってくれるだろう。
そう思うと……なぜか少し胸がざわついた。
ざわついたこの胸に宿る想い。それがなんなのか……私自身にも分からない。
ただ、私はアコンがどういう人なのかきちんと見極めたい。
彼がこれから何を為していくのか見ていたい。
そこに希望があるなら――
「ううん。それはまだ……早い……よね?」
そう……それを判断するにはまだ早い。
今はただ、私の思うまま『彼の力になりたい』と……ただそれだけを想えばいい。
彼の力になる為にも、私は会議から去るアコンの後を追う。
と……そうしようとしたんだけど――
「ルーナ、ちょっとこっち来なさい」
そう私を呼び出すのは精霊のレンカ。
私はアコンに付いていきたかったのだけど、それとは正反対の方向に腕を引っ張られてしまう。
そうしてあまり抵抗も出来ないまま、私は半ば無理やりな形で『ロリロリワールド』へと連れていかれた。
そこにはどういうやり取りがあったのかは分からないけど多くの精霊達、そしてロリコン紳士のユーリが揃っていた。
そうして多くの精霊がその場に集まる中、レンカが声を上げる。
「みんな、良く集まってくれたわね……ってそこっ! 興味ないからって寝ない。私たちにとってのこれからについて話をするんだからもっと真面目にしなさいよっ」
ぷんぷんと眠っていた精霊に向かって怒るレンカ。
この集まりはレンカが企画したものみたい。……早く終わらないかな?
「みんなに集まってもらったのは他でもないわ……。今日、私は初めてロリコン紳士達の会議ってやつに参加したわ。それで思ったの……あいつら、私たちが思っている以上に私たちの事が好きよ? それこそ頭がおかしく思えるくらいにね。みんなもそれは思ったでしょ?」
「えっと……そう……だね?」
「ちょっとびっくりした……でも、悪い気はしない……」
レンカの問いに答えるように、多くの精霊達がその事を認める。
それは、私にだって分かる。どうしてかは今も分からないけど。アコンを含め、ここの人間たちは精霊を恐れないどころか、強い好意を向けてくれている。
私も含め、精霊は多かれ少なかれロクな目に遭っていない。
そんな境遇の私たちがこんな好待遇を受けている。
うん。悪い気がしないのは当然よね。
「うん、そうよねそうよね。もしかしたら私たちに気を遣ってるだけなのかもって思ってたから少し安心――――――って違うわよっ! なーにみんな顔を赤くしてんのよっ。そういう事を私は言いたかったんじゃなーいっ」
「え? そう言うレンカちゃんのお顔が一番真っ赤なような……っていたたたたたた。ごめん、なんだかよくわからないけどごめんなさいってば。だから叩かないでレンカちゃん~~」
「バッ、バッ、バッカじゃないの!? 私はあんな奴らの事、好きでも何でもないわよっ! ちょっと優しくされただけで好きになるアンタ達と違って、私はちょろくないんだからっ!」
そう言い訳するレンカの顔は誰の目から見ても分かるくらいに真っ赤。
レンカはそんなことないと意固地になっているけれど……どうしてそこまで必死に否定するのかしら? 私にはそれがよく分からなかった。
「と・に・か・くっ!! あいつらは少しおかしいわ。なんでロリコン紳士を名乗る人たちがあんなに私たちの事をす……す……好きでいてくれてるのかは分からないわ。理由を聞いたら教えてくれるけど、どうにも理解できないのよね……」
レンカがそう肩を落として語る。
でも、それには私も同意する。
アコンにいくら精霊を好きな理由を聞いても、幼いのがいいのだとかロリは至高だとかそればかり。
そういうの、私には分からないから結局なんでアコン達が私たち精霊を恐れずに接してくれるのか……よく分からない。
それが少しだけ……不安だった。
「理解はできない。でも、あいつらはこんな私みたいな精霊を好きになってくれたわ。だからこそ、私はあいつらに道を踏み外して欲しくない。不幸になってほしくない。
でも……あいつら、私たちの為だったら喜んで死ねちゃうと思うの。さっきの会議を見て私はそう思っちゃった。――そこの所、どうなの? ユーリお爺ちゃん?」
「ん? ああ、それ正解じゃぜ? 儂も生い先短いから自分の命と嬢ちゃんたちの命なら迷わず嬢ちゃんたちの命を優先すっしのぉ。そもそも、さっきの会議でレンカ嬢ちゃんが言った通り、あいつら内容に関わらず嬢ちゃんらの言う事ならなんでも聞くぜ? それこそ『世界征服がしたいの~』っておねだりすりゃ一致団結するじゃろうよ。カカカカカッ――――――………………はぁ」
笑ったと思ったらすぐに落ち込むお爺さん――ユーリ。
面白いのか悲しいのか、どっちなんだろう?
「やっぱり……ねぇユーリお爺ちゃん。まず聞きたいんだけど、ロリコン紳士さん達の考え方を変える事って『無理じゃ』出来ないの? 好きでいてくれてるのは嬉しいけど過剰すぎ……って即答なの!?」
レンカが言い終わるよりも先に不可能と首を振るユーリ。
「そりゃそうじゃろ。レンカ嬢ちゃんが言ってることはつまり、あいつらロリコン紳士からロリコン魂を取り除けって事なんじゃぜ? ロリコン紳士からロリコン魂抜いたらただの肉の抜け殻になっちまうわ」
「何なのよそれ……。ああ、もう。ほんと厄介ねロリコンって」
「まぁ、儂らがロリコンでなかったら嬢ちゃんたちは今頃死んでたかもしれんけどな」
「分かってるわよ。そこはもちろん感謝してる。でも、もう少し普通の人間として扱って欲しいのよ。私たち、ロリコン紳士達に神様みたいに扱われちゃってるし……」
「ん? あぁ、気づいとらんかったんか。まさにその通りじゃぜ。儂らロリコン紳士にとって、お主らロリ……つまり精霊はみーんな神様じゃ。ただそこに居てくれるだけで儂らは幸せになれるのよ。ありがたやありがたや」
「……なんかちょっとだけロリコン紳士達の事が分かっちゃった気がするけど……でも全然嬉しくなぁぁぁぁぁぁいっ!!」
ユーリが手を合わせて拝むのと同時に、レンカが地団太を踏む。
レンカはアコン達……ロリコン紳士達の事が少し理解できたみたい。私はまだ全然彼らの事が分かってないから少し羨ましいと思ってしまった。
でも――
「どうでもいいわ」
「は? ちょ、ルーナ。あんた、今なんて言ったの? まさかどうでもいいって言った? 新参者とはいえ、あんただってロリコン紳士たちに助けてもらったんでしょ!?」
レンカが私に向かってずんずんと歩いてくる。
そんな彼女に私はもう一回言ってやった。
「どうでもいいって言ったの。アコンが……他の人たちが私たちの事をどう思っていようと関係ない。ましてやそれが好意なら気にする必要なんてないわ」
「あんた――」
掴みかかろうとしてくるレンカの手。
私はその手を逆に掴んで、いっぱいいっぱいの力を
「いつっ――ルーナ――」
睨んでくるレンカ。
そんな彼女に、私は淡々と思った事を告げる。
「アコンたちが私をどう思おうと関係ない。だって、私はアコンを助けるって決めてるんだもの。だから、その手助けをする。私の精霊としての力はこういう時の為にあったんだって、そう思えるの。兵器として生まれて良かったって……今ならそう思えるわ」
そう――関係ない。
アコンが仮に(あり得ないと思うけど)私を嫌いだと思っていても、私は彼の事が嫌いじゃない。
彼と一緒に居ると、不思議な気分になる。
もやもやしたり、どこまでもとべそうになったり、ふわふわだ。
それはそう悪いものじゃない。
もっと味わっていたいとさえ思う。
だから、私は彼の隣に居られる事がとても心地いい。
そんな私の居場所を守れるなら――私は兵器でいい。
人間に兵器として見られるのは嫌だった。
人間なんて私たち精霊を道具としてしか見ない嫌な人達だ。
でも――アコンはそうじゃなかった。きちんと私をを見てくれた。
そして、私に『ルーナ』という名前をくれた。
それを思うととっても暖かくて……うん。悪い気はしない。
「アコンを……みんなを守るためなら私は兵器にでもなんでもなるわ。私はこの居心地のいい場所を守りたいの……」
「「「ルーナ……」」」
「「「ルーナちゃん……」」」
「ルーナ嬢ちゃん……」
みんなが私に視線を向ける。
そして――最初にレンカが口を開けた。
「契約って……なに?」
「……え?」
…………………………あ、そっか。
ここに居る私以外の精霊は……それすらも忘れているのね。
「えっとね――」
そうして、私はレンカやサクラに精霊の契約について教えるのだった――
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