第19話『対ツマノス国会議-2』
サクラちゃんとレンカを筆頭に、多くの精霊たちが並んでいた。
サクラちゃんの隣には本日の『ロリロリワールド』警備担当の同志も居て、その同志は両手を顔の前で合わせ、謝ってきた。
「も、申し訳ありません会長。今回の会議内容を聞いた精霊達がどうしても自分達も参加するのだと――」
「ああ、いい。状況は理解できた」
いつかこんな日が来るかもしれないとは思っていた。
心優しい彼女たちが自分の為に頑張ってくれている俺達の手助けをしたい。
そう主張する日が来るかもしれない……と。
実際、その心遣いは嬉しい。
だが――彼女たちはもう十分に苦しんだんだ。
そんな彼女たちに、これから行われるであろう争いと、それについて話す会議に参加なんてして欲しくない。いや、参加させるべきじゃない。
なので、俺は彼女たちに帰ってもらうよう説得することにした。
「サクラちゃんにレイラちゃん。ここは君たちが来る所じゃ――」
「お願いしますっ。どうか私たちにもお手伝いさせてください。ダメ……ですか?」
「超イイヨ」
サクラちゃんの潤んだ瞳を向けられ、あっさり手のひらを返すロリコン紳士の会の会長こと俺。
だって……しょうがないじゃん? あんな目で見つめられてOK出さないとかロリコンとして不可能じゃん? なんなら人間として無理じゃん?
「ありがとうございますっ」
「それじゃ、お邪魔するわよ」
ぞろぞろと入ってくる精霊達。
そこでふと気づく。
こんなに精霊たちが居る場で……果たして俺たちはまともに話し合うことが出来るのか?
それは、とても重要な気づきだった。
重要な気づきではあったのだが……残念ながら気づくのが遅すぎた。
「えと……今はツマノス国? の兵隊さんが攻めてくるお話をしてるんだよね? 私としてはお話して穏便に済ませたいんだけど……ダメ、でしょうか?」
「「「超イイヨ」」」
先ほどまで敵を殺すと息巻いていた俺を含む会員達。
その全員がサクラちゃんの優しすぎる意見に賛同した。
あまりに急な手のひら返しに、もう皆の手首が捻じ切れん勢いだ、
「はぁ……」
唯一、声を上げなかったユーリはそんな俺達を呆れたように見ている。
その瞳は、まるでもう助からない患者を見つめる医者のようであったとここに記録しておく。
「良かった♪ これで一件落着ですね♪」
「「「うんうん」」」
そう喜ぶサクラちゃんを微笑ましげに俺たちは見つめ、会議は終わりを迎え――
「バカ」
「あいたっ」
――終わりを迎え……なかった。
「うぅぅぅ、痛いよレンカちゃん」
「サクラが馬鹿なこと言うからじゃない。このロリコン紳士達にとって、私たちの言葉は絶対ってことくらい今までの経験上分かってるでしょ? そんなあいつらにサクラがお願いなんてしたら内容がどうあれ聞き入れられちゃうに決まってるじゃない。それは話し合いじゃなくて命令って言うの。分かる? ねぇ、分かってんの?」
そんな俺達ロリコン紳士にとっても耳が痛い所を突くレンカ。
その事をサクラちゃんに説き、さらにはサクラちゃんのほっぺたをぐにゅーっと引っ張り始めた。
「ひゃわわ。いはい、いはいよれんはちゃん~~。ほめん、はんへいしへふはら~」
「ダーメ。アンタが優しいのは私も分かってるけど、今はそういう優しさを出すところじゃないの。何か意見を出したいならロリコン紳士達の話を聞いて、そのうえで私たち精霊だけで話し合いましょ? それで私たちが力になれる事をするの。いい? 分かった?」
「わかっは、わかっはよ~~」
いつも精霊たちのまとめ役のような事をしているサクラちゃん。
そんなサクラちゃんを時には支え、導くのがレンカちゃんだ。
そんな二人を見る俺達ロリコン紳士の気持ちは一緒の物だった。
それは――
(尊い……)
見ているだけで癒されるその光景に、ユーリを除く全会員が顔を緩ませていた。
「……建国したばかりじゃが、この国もう終わりかもしれん」
そうして癒される事数分――
「サクラちゃんの意見はもっともだし、尊重するべきだとは思う。だが、敵はロリコンですらない蛮族共だ。話し合いによる解決が失敗に終わった場合の事も考えておくべきだろう」
全員の頭が少し冷静になったと思われるところで会議を再開させる。
「しかし、サクラちゃんの言う通り無為な殺生は避けるべきだと俺は考えている」
「会長……恐れながら先ほどと言ってることが違うような……。我らが守護するロリ様を侵略せんとする敵は皆殺しと言っておりませんでしたか?」
不殺を宣言する俺に対し、ヘリオスが当然とも言うべき疑問をぶつけてくる。
「まぁ待て。俺もサクラちゃんの意見を聞いて思ったのだ。無為な殺生はするべきでないとな。それはこの国の評価につながる重要な事だ」
「というと?」
「俺たちは『ロリコン紳士の会』として今回の争いに臨むが、それは今まで通りロリ様に敵対する者をただ排除すればいい意味ではない。なにせ、俺たちはただの『ロリコン紳士の会』ではなく、精霊国家ロリコニアに所属する『ロリコン紳士の会』なのだからな」
既に大々的に精霊国家ロリコニア建国の声明は発表した。
ゆえに、俺たちはたとえ人数が少なくとも一つの国、国家なのだ。
その自覚をもって行動しなければならない。
「? すみません会長。違いがよく分からないのですが……」
「つまり――だ。俺たちが仮にロリ様に危害を加えようとする非ロリコン共を問答無用で虐殺したとしよう。それで世間から悪逆非道なロリコン集団と蔑まされたとして、お前はどう思う?」
「うーん……………………いえ、別にどうとも? ロリの素晴らしさに目覚めた俺にとって、非ロリコンがどうなろうと構いませんし、それでとやかく言われたとしてもなんとも思いません」
「うむ、当然だな。俺もそう思う」
ロリコン紳士の会の会員達が『うんうん』とその意見に同意する。
「「「………………」」」
ただ、精霊達&ユーリがなぜか『こいつらマジか……』みたいな顔をしていた。
何かおかしなことを言っただろうか? と少し疑問に思ったものの、今は話の最中なので横に置いておくことにする。
「――でだ。確かに俺達『ロリコン紳士の会』としてだけならそれで良かっただろう。なにせ、俺たちが世間でなんと言われようが俺たちはあまり気にしないからな。だが、『精霊国家ロリコニア』という国に属する『ロリコン紳士の会』となればそういう訳にはいかない。
なぜなら――俺たちの行いはそのまま『精霊国家ロリコニア』への評価に繋がるからだっ! もっとハッキリ言うと、俺たちが世間様に悪く言われれば言われるほど、世間のロリっ娘に対する評価が悪くなるという事だっ!!」
「「「はっ――!?」」」
まるで考えもしなかったとでも言わんばかりに驚く会員達。
そんな会員達に俺は続けて力説する。
「我らは精霊国家ロリコニアの盾となるべき『ロリコン紳士の会』だ。あらゆる災難からロリ達を守らなければならない。それは直接的な暴力、そして自国に居るロリ達だけ守れば良いというものではない。これから我が国に入国するかもしれないロリ達も守ってこそ、我らは誇りある『ロリコン紳士』と堂々と胸を張れるだろう。そう俺は考えているが……諸君はどうだぁっ!?」
「確かに……一理あると思いますっ!」
「だろう? ならば、敵対する者達を皆殺しにするなどという蛮行、するわけにはいかない。それを繰り返した先に待っているのは典型的な恐怖政治。国の破滅に繋がる典型的な物だ。
――とはいえ、ロリに手を出そうとする蛮族どもを許せないのも事実。ゆえに……敵への対処は二点のみにしたいと俺は考えている」
「会長、その二点とは!?」
「あわてるな。今から俺が考えたその二点の対処法を伝える。
一つ目――敵を俺たちと同じロリコンにする。
二つ目――二度とロリ様に手を出せないように生かさず生かさず殺さずの精神で心を叩き折る。
これを順守すれば、俺たちの国は戦争になっても敵兵に死者を出さない平和を愛する国家と認知される。そうは思わないか?」
「「「おぉ~~~~」」」
「そうはならぬわっ!! お主らも『おぉ~~』ではないわっ! あぁ……分かっとったけどお主らバカじゃろ!? 底抜けのバカじゃろ!? クズではないし、悪い奴らでもないのは分かっとったけどここまでバカじゃったとは……」
多くの会員達が俺の方針に賛同してくれる様子だ。
いかに敵兵をロリコンという正しき性癖に直すか。どうやって敵のロリ様への敵意を消すかでみんな近くの者達と談笑し合っている。
その中でなにやらユーリが騒いでいたが、残念ながら周りの喧騒によってその内容までは聞こえなかった。
きっと、彼も副会長としてこの方針に大賛成で、今は少しテンションが上がってしまっているんだろう。まったく、しょうがないおじい様だ。
「さて、異論もないようだし今度こそ本日の会議は終了する。各自、迎撃の準備をしつつ敵をロリコン化する案や敵の心を完膚なきまでに折る方法を考えていてくれ。思いついたらどんどん周りと共有するのもいいな。
そうして
そうして俺は会議を後にした。
さて、相手をロリコンにする方法はいくつか思いつくけれど、敵兵への対処……なぁ。
今までの俺はロリ様に敵対する奴は全員皆殺しでOKというスタンスだったからパッと思いつかない。これに関しては後でヘリオスと相談するか。
後ろから「それで良いのか!? お主ら本当にそれで良いのか!?」というユーリの声が聞こえたが、後に続く言葉は会議の場に残った他の同志たちの喧騒で聞こえなくなってしまった。
「ユーリも気合入ってるなぁ。さっきから騒いでいたし、きっと『敵兵のロリコン化計画』や『心を折る三つの方法』なんて物を同志達と話し合ってるんだろうな……俺も頑張らないと」
そうして俺は気合を入れなおし、考えを纏める為に自室へと舞い戻るのだった――
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