第18話『対ツマノス国会議』


「遂にツマノス国が攻めてくる」


 今は『ロリコン紳士の会』の会員達による会議中。

 議題は来るだろうと分かっていたツマノス国の進行についてだ。


「放っていた同志の情報によれば、敵の数は二万五千。こっちがたった百人だから……もう何倍の差があるとかいうレベルじゃない兵力差だな」


「なっ!? にま……ん?」

「それは……もう話にならないだろ」

「逃げるべきだっ。ロリ達を連れて一刻も早くここから――」


 あまりの兵力差に、同志たちが浮足立つ。

 だから――


「静粛にっ! 同志達よ落ち着けっ。それでもロリを愛する紳士か? 情けないぞっ!!」


 動揺している同志達に対し、俺は一喝。

 その後、自分が落ち着いている事をアピールするために優雅に紅茶を一口飲んだ。


 そんな俺の様子に腹を立てたのか、一人の同志が詰め寄ってくる。


「な、何を馬鹿な事を言っているのですか会長? 二万五千ですよ? いくら我々に会長から託されし『THE・ロリコン』があるとはいえ、この数の差は……」


「勝てない……と? 何を馬鹿な事を。いいか同志よ。お前に良い事を教えてやる」


 俺は落ち着く振りをするために飲んでいた紅茶の容器を……床にぶちまけて吠えた。





「この世界での兵力差なんて大したことはなぁいっ!! 個人の力量差が物を言うこの世界で敵の兵力だけを聞いて怖気づくなど笑止千万。そして、個人の力で言えばこっちが圧倒的に優位だ。なにせ、俺やお前らの持つ『THE・ロリコン』はロリに対する情熱があればあるほど、同志が居ればいるほど力を発揮する。アニメや漫画の定番の如く、想いの力を純粋な戦闘力に変えられるのだ。そこで、同志よ。逆に貴様達に問おう。俺たちのロリに対する想いはたかが二万五千の非ロリコン達に負ける程度の物なのか?」


「それは――」


 何も言わず口ごもる同志。同じ心境の者が何人かいるのか、その者達の表情も暗い。

 その姿を見て俺は思った。

 あぁ……なんて情けないのだろう――と。


 これは今一度、俺たちが戦わなければならない理由を再確認してもらう必要があるか。


 バァンっと俺は机を叩き、浮足立つ同志達を一喝する。


「答えられないなら俺が応えてやろう。いな、否、否だっ!! 俺たちの想いに勝てるものなどあるはずがない。なぜなら、俺たちのロリに対する想いはまさしく無限大っ! 即ち、俺たちの力は無限大ということだぁっ。ゆえに、恐れるな同志達よ。俺たち『ロリコン紳士』はロリを愛している限り、無敵の存在だっ!! 貴様らはロリが好きかぁ!?」


「「「お………………おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」


「少女を愛しているかぁ!?」


「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」


「貧乳が好きかぁ!? ロリ巨乳が好きかぁ!?」


「「「最高っ、最高っ、最高ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」


「敵はツマノス国。奴らの狙いは分かりきっている。反乱分子である俺たちの排除。だが………………これについてはぶっちゃけどうでもいい」


「どうでもいいの!?」


 俺の傍らに控えていたルーナが驚いた様子でこちらを見つめる。

 ルーナは前回の会議でもそうだったが、この『ロリコン紳士の会員達による会議』に興味があるようだ。前回の会議の後、次の会議(この会議)にも参加したいとお願いされた。


 正直、ロリコン紳士の恥ずかしい部分が浮き彫りになる本会議に彼女を参加させたくないという気持ちはあるのだが、ロリのお願いを俺が断れる訳もなし。参加を認めた。


 だから彼女はここに居る。


 そんなロリである彼女を見て……俺はツマノス国の侵攻を許すわけにはいかないと強く感じる。

 そう――ロリコン紳士である俺達の命なんてどうでもいいんだ。


 そんな物より、俺には守るべきものがある。

 それは――


「奴らの狙いはもう一つ。それは至高のロリ様であらせられる精霊達を再び捕らえる為だっ! 諸君も知っているだろうが、精霊たちは人間と契約する事で強力な武器になるらしい。それに目を付けた悪逆非道なツマノス国は彼女たちを捕らえ、無理やり兵器として戦場に送り出すつもりなのだっ!! 諸君に問おう。争いとは縁遠い場所にある尊きロリ様に対しそのような蛮行。俺達ロリコン紳士が許していいのかぁ!?」


「「「いなっ、否っ、否っ、否っ、否ぁぁぁぁぁぁぁっ」」」


「奴らは俺たちの理想郷の乙女たちを簒奪さんだつせんとする略奪者だっ。出来立てほやほやの我が国の理想郷を破壊しようとしている。これを許していいのかぁっ!?」


「「「否っ、否っ、否っ、否っ、否ぁぁぁぁぁぁぁっ」」」


「宜しいっ。では敵は残らず虐殺だ。ロリ様に手を出そうとしたこと……心の底から後悔させてやろう。無論、手段は問わない。毒殺、奇襲、罠……なんでもアリだ。奴らがここに来るまでの間、あらゆる嫌がらせを許可する。しばらくは各々好きに動いてヨシッ」


「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」」」


 同志達のやる気が最高潮に達した。

 やはり、守るべきものがあると違うものだ。少し前まで自信なさげにしていたさっきの同志も今や愛するロリを奪おうとする敵をどうしてくれようかと周りと相談している。頼もしい限りだ。


「会長、質問いいでしょうか?」


 頼もしい同志達を見守っていた俺に、ロリコン紳士の会幹部であるヘリオスが声をかけてくる。


「宜しい。発言を許可する」

 

「先ほど会長は敵がこの場所に来るまでの間、好きに動いてよいと仰いましたよね?」


「うむ、言ったな」


 先ほどの俺の宣言を確認するヘリオス。

 そうして再び俺の言質を取った彼は、満面の笑みを浮かべて言った。


「ですが……ここに来るまでの間に奴らを皆殺しにしてしまっても構わないのですよねぇ?」


 あぁ、なるほど。

 やはりお前も連中に対して腹を立てていたんだな。


 ツマノス国。少なくともそこの王様の野郎は最初から全部知った上でロリである精霊を悪魔と指さし、俺達に捕らえさせていた。

 民衆に悪魔の正体が無害なロリだと周知出来る立場に居ながら、兵器として彼女たちを利用しようとしていたのだ。


 加えて現在、奴らは俺たちの癒しであるロリを奪おうとしている。

 ここまでやられて俺達ロリコン紳士がムカつかない訳がない。


 しかし……俺が沼に沈めるまでロリコンではなかったヘリオスも、今では立派なロリコン紳士になってくれたという訳か。……少し感慨深いものがあるな。


 俺は立派になったヘリオスの肩をポンと叩き、サムズアップしながら彼の質問に答えた。


「無論だ。存分に俺達の……ロリ様たちの敵を駆逐しようぜ☆」


「はっ!!」



 こうして俺たちの意志は一つに固まった。

 攻めてくるツマノス国の兵士達は残らず殺す。


 精霊を……少女達を……ロリ様達を……奪おうとする奴らにかける慈悲などない。


「さて、新しい議題はないな? ――――――宜しい。では、各々準備もあるだろう。これにて本会議は――」


 終了する――と俺が宣言しようとしたその時。



 ――バァンッ!!


 この部屋に通じる唯一の扉が開いた。

 一体何が? と思って俺は扉の方を見る。

 そこには――


「その会議……私たちも参加させてくださいっ」

「私たちを守るための戦いなんでしょ? なら、私たちも混ぜなさいよ」


 サクラちゃんとレンカを筆頭に、多くの精霊たちが並んでいた。

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