第9話『ロリロリワールド』
「お疲れ様ですアコン会長……って会長!? 何をしているのですか!?」
「緊急事態だ。急いでいるんだから門を開けろっ」
「それは構いませんが……しかしなんて……なんて事をっ!? 会長、あなたはご自身が何をなさっているのかわかっているのですか!?」
隠れ里の最重要施設である『ロリロリワールド』。
その門を守る同志Aが俺の姿を認めるや声を張り上げる。
それも当然だろう。俺が彼の立場なら同じように声を荒げている自信がある。
なにせ――
「会長……あなたはなんて事を……誰の許しも得ず、そんな可憐な少女をお姫様抱っことは!? ロリとは皆で分かち合う共通の財産ではなかったのですかっ!?」
「この人は何を言っているの?」
そう、なにせ俺は件の精霊の少女をお姫様抱っこしているのだから。
「気持ちは分かるがな――」
「え? 分かるの?」
お姫様抱っこされた彼女が軽く突っ込みを入れてくるが、ここはスルーさせてもらう。
「事は緊急を要するんだ。それに、これは彼女も同意しての事。つまりは彼女の意志だ。会則の第一条を忘れたわけではないだろう?」
「ぐっ――。それはそうですが……」
ロリコン紳士の会、会則第一条。
我らが信ずるロリの言葉は神の言葉。ゆえに、他の会則を曲げようともロリのあらゆる行いを正当化し、その手助けをするべし。
(ただし、ロリ同士の意見が対立した場合は第三者ロリの意見及び、他の会則を優先する物とする)
俺達ロリコン紳士にとって、ロリの言葉は絶対。
そして今回、ロリである彼女は『ロリロリワールド』に行くための足として俺のお姫様抱っこを容認してくれた。
ゆえに――他の会員が口を挟める余地などないのだっ!!
「とはいえ……だ。お前の気持ちも分かる。特にお前は最近ロリと触れあっていないものな。禁断症状が出てもおかしくない」
「………………」
何か言いたげな目で俺達を交互に見る精霊の少女。
しかし、もはや何を言っても無駄と判断したのか口は閉ざされたままだ。
なので、男二人で会話は進んでいく。
「――分かってはいるのです。愛すべき少女の園に通じるこの門を守るのはロリコン紳士として当然の事。特に、今は多くの精霊の少女を保護したばかり。ゆえにこの門の守護は必須であり、誇りとするべき。ええ、分かっていますとも。しかし……それでも私は少女達と触れあいたいのですっ! こんな壁を隔てた場でお預けをくらってはや丸一日……このままではロリ成分が足りなくて――」
そう声を荒げる同志Aの肩を、俺はポンと叩く。
「その通りだ。この少女の園に通じる門を守るお前は誇りに思うべきだ。ただ、それではロリ成分が不足するのも事実。だが、案ずるな――後に行う会議の間、お前には『ロリロリワールド』への入門を許可する」
「なっ――それは本当ですか!?」
「無論だとも。働きには褒美が与えられるべきだ。本来、『ロリロリワールド』に入門出来るのは毎日ローテーションで変わる会員三人と、ロリ達から指名された者、それと何か特別な用事がある者に限られる。だが、今回は俺の権限で会議の間のみ中の守備を厚くするという名目でお前の『ロリロリワールド』への入門を許可しようっ」
「なんと――――――ありがとうございますっ!!」
「いや、礼を言うべきはこちらだとも。ロリ達の守護、大儀である。――とはいえ、入門は後で手配する門番に引き継いでからにしてくれよ?」
「分かっておりますとも。うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、漲ってきたァァァァァァァァァァァッ!!」
そうして『ロリロリワールド』の門を守る同志Aと言葉を交わし、俺は精霊の少女を連れて『ロリロリワールド』へと入門する。
そこには――
「あ……女の……子?」
「わわ、会長さんだ~。わーい、いらっしゃい。どうしたの?」
「ふんっ――」
ロリ、ロリ、ロリ、ロリ、ロリ。
見渡す限りの美しい少女達。
そう、ここが我らが理想郷――『ロリロリワールド』だ。
現在、総勢100名のロリ(精霊)がこの『ロリロリワールド』にて保護されている。
そして――
「おじさん……もっとこれ……ちょうだい?」
「もちろんだとも。たーんとお食べ?」
「ありがと……。もぐ……もぐ……」
「おいしいかい?」
「うん……おじさんのドーナツ……もっと欲しい」
その一角では、同志たちが少女達相手にだらしない姿を見せている。
屈強そうな外見の男も、少女の癒しパワーの前にデレデレしっぱなしだ。
ああ……素晴らしきかな。ロリ。
だが、その光景を見た新参ロリの彼女は――
「……なんであの人たちはあんなに幸せそうなの?」
理解に苦しむといった様子でその光景を見ていた。
しかし、これもなんというべきか、答えは決まってるわけでして。
「えーっと……。精霊の女の子達と触れ合えているから……だよ?」
としか言えない。
しかし、それを聞いても彼女は『……訳が分からないわ』と首をひねらせていた(そりゃそうだ)。
――と、そんな時。
「おはよう会長さんっ! その子は……私たちの新しい仲間?」
俺達に精霊の少女の一人が語り掛けてきた。
「おはようサクラちゃん。そうだよ。この子は君たちの仲間で、精霊だ」
彼女の名は『サクラ』ちゃん。
もっとも、その名前は後から俺たちが付けた物だ。
確か名付け親の同志は『春の明るさと包容力をこの子から感じたからそうしました』とか言ってたっけな。
俺が名付け親になれなかったのは悔しいが、とても可愛らしくて良い名前だとは思う。
その名の通り、桜色の短髪の美少女。
見た目が化け物になってしまっている他の精霊同士の仲を取り持ったりしてくれる、とても優しく活発な子だ。
「そうなんだ……うん。初めましてっ! 私はサクラ。あなたのお名前は?」
「私はえ……うぅん。名前なんてないわ」
「あ、まだ名付けて貰っていないのね」
「あなたは……精霊……よね? どうしてサクラなんていう名前を持っているの?」
「え? あ、あはは。そっか、そうだよね。最初はそう思うよね。えっと、もちろん私は精霊だよ? 私だけじゃない、ここに居る男の人以外はみーんな精霊なの。
そして――あなたの想像通り、私も含めて元々みんな名無しだったわ。
でもね? そんな私たちに会長さん達が名前をくれたの。最初は少し変な気分だったけど、慣れたら名前ってとっても素敵だよっ。このサクラって名前も、私はすっごく気に入ってるの。だから、あなたにも素敵な名前が付けられるといいね♪」
「そう……」
「えーっと……あはは。そう言われても困っちゃう……よね? でも、同じ精霊同士仲良くしましょ?」
そうしてサクラちゃんは新参精霊の少女に手を差し出す。
少女も、その手にゆっくり手を伸ばすのだが――
「ちょっと待ちなさいっ!!」
そこに新たに現れる『ロリロリワールド』の精霊少女。
黒髪ツインテールの少女が、新参者の精霊少女に詰め寄ってきた――
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