第8話『悪魔と精霊』
「あの……大丈夫?」
「ああ、大丈夫。激しい眩暈と吐き気がする以外は至って正常ら」
「それは大丈夫じゃないような……くすっ、やっぱり変な人間」
そうして薄く微笑む精霊の少女。
俺はその微笑みを見て――
「っ――――――ありがとう。回復したよ」
「どういう事!?」
大人し気な精霊……クール系ロリが初めて見せる微笑み。
そんなものを見せられたら地獄の底からだって蘇らざるを得ないじゃないか。
既に俺への拷問を終え、誤解も解けたユーリは退室している。
この後に行われる会議の準備をしてくれているのだ。
その間、俺は新たに加わったこの少女に俺たちについて教える事にした。昨日は慌ただしくて何も教えられていないし、ユーリも彼女には俺の名前以外は何も教えていないらしい。
「さて――――――まずは自己紹介といこうか。俺は
――ああ、誤解しないでほしいんだけどね? 正確には捕らえるふりをして保護をしていたんだよ。つい昨日、ツマノス国を捨てたしね。捕らえていた精霊もみんな解放して安全なこの村に避難させているよ」
「私は……精霊。名前はないわ。それにしても、精霊を保護なんて……。ねぇ、アコン。なぜあなたは私たち精霊を助けるの? 人間なのに……」
「君たちが愛おしいからだっ!! ロリコン紳士たるもの、少女に手を差し伸べるのは当然の事さ」
ロリコン紳士が困っているロリ(精霊)に手を差し伸べるのは当然。
その事を熱心に説くと、精霊の少女は難しい顔で尋ねてきた。
「ロリコン……昨日もそれを聞いたわ。ロリコンって……なんなのかしら? ロリコンは私たち精霊の味方……なの?」
「いや、悪い。一概にそうは言えないんだ。ロリコンにも多くの人種が居て、精霊に危害を加えそうな奴も居る」
残念ながらロリコンの中には犯罪者も居る。
本来、ロリとは慈しむものだが、そんな彼女たちに欲情して襲い掛かる輩が少なからずいるのだ。
いや、お互い合意の上でそういう事をするならまだ許せる。
しかし、問題は無理やりそういう行為に及ぼうとする輩だ。あいつらはロリコンでありながらロリの意志を捻じ曲げようとする悪質なロリコンだ。
そんな奴らが居るから世間でロリコンは犯罪者予備軍と呼ばれ……おっと、これについて考えると三日過ぎてしまうのでやめておこう。
「そう……やっぱり多くの人間にとって、精霊は兵器でしかないのね……」
「え? あ、いや……うん?」
そういう話ではないのだが……少女に生々しい話をするのもなんなのでそれは置いておこう。
「それで? 君はどういう経緯でツマノス王城に捕らえられていたんだい?」
「………………」
精霊の少女は答えない。
どうやら答えたくない質問だったらしい。
「――ご、ごめんね? 今の質問は忘れていいからっ」
「……ごめんなさい」
「いや、いいよ。人間は精霊に対して色々と酷いことをしてきたからね。その人間である俺に対して警戒するのは当然さ」
「でも……」
それでも精霊の少女は申し訳なさそうにする。
そんな悲しい顔はさせたくない……そう思った俺は話題を変えることにした。
「あ、そうだ。逆に君からは何か聞きたいことはないのかな? 俺たちの目的やらこれからの予定など、聞きたいことがあればなんでも答えるし、要望があれば何でもその通りにするよ」
「なんでもなんて……そんなの嘘。人間はやっぱり嘘つきね」
「嘘じゃないさ」
「それなら……もし私があなたに下僕になって欲しいって言ったら――」
クールそうな美少女ロリが軽く悪戯な笑みを浮かべる。
俺がそんな美少女の下僕になるかと問われたら……だと?
そんなの、考えるまでもない。
「犬とお呼びくださいご主人様」
俺は光の速さで彼女の足元に
あり得ないとは思うが、もし足を舐めろと言われたら即座に舐める覚悟だ。(ご褒美です)
「――――――冗談だったし、まだ言い終わってもなかったんだけど……」
「ご主人様? いかがなされましたか?」
「ごめんなさい。さっきのは……なし。普通にして欲しい」
「………………分かった」
「? どうして残念そうなの?」
「いや、別に……」
美少女のクール系ロリ精霊の下僕……むしろご褒美だったなんて言える訳もない。
「こ、こほん。それじゃあ他には何かないかな? 本当に何でも聞いてくれていいし、不満があるなら言ってくれていいんだよ?」
そう聞くと彼女は『うーん』と人差し指を唇に当てて思案顔。うん、可愛い。
やがて彼女は『それなら――』と望みを語った。
「他の精霊に会いたい」
「他の精霊……俺たちが保護している精霊たちに会いたいって事でいいのかな?」
「ええ」
合点承知……と言いたい所なのだが、大丈夫だろうか?
「ダメ……なの?」
俺が黙ったのでそう尋ねてくる彼女。
俺は首を横に振って答える。
「いや、大丈夫だよ。俺の権限でそれは可能だし、権限がなくても美少女ロリの頼みって言えば反対する同志も居ないしね」
「……本当におかしな人たち。でも、それならどうしてそんなに渋っているの?」
そう――この子と他の精霊たちを会わせる事自体はそう難しい事じゃない。
問題は実際に対面した時だ。
「……君は他の精霊と会ったことはあるのかな?」
「あるわ」
そうか。
それなら大丈夫か。
だが、一応確認はしておこう。
「昨日のツマノス王の話から察するに、君は本来の姿のままらしい。それは素晴らしい事だ。だけど……俺たちが保護している精霊はみんな……なんというか……その……」
「……悪魔のような姿かたちをしている?」
「……その通りだよ。俺や同志達には正しい姿にしか見えないんだけどね。でも、精霊の彼女たちですら互いが化け物にしか見えないらしい。言葉が通じるのが唯一の救いかな」
この子は特例で本来の少女としての姿を保っている。そうツマノス王は言っていた。
だが、他の精霊はそうじゃない。
俺たちの知る他の精霊は何らかの理由で外見を化け物にされてしまっている。
どうしてそうなったのか、それは彼女たちにも分からないらしい。
そんな外見だから彼女たちは『悪魔』として恐れられてしまっているのだ。
「アコンは……精霊の本当の姿が見えているの?」
「え? ……あぁ、そういえば言っていなかったね」
驚いている様子の彼女に、俺は自身の『ロリコンアイ』能力について語った。
『ロリコンアイ』……あらゆるロリの正体を看破し、真実の姿をその瞳に映す能力。
この能力により、俺はロリっ娘の真の姿を直視できるのだ。
無論、これは『ロリコン紳士の会』に所属する会員全員が有している能力である。(正確には俺が与えた)
そうして俺の能力を聞いた彼女はというと――
「その……ごめんなさい。ロリコンというのもよく分からないのだけど、ロリというのも分からないわ。そのロリというのは精霊という意味なのかしら?」
とても難しい事を聞いてきた。
「うーん……詳しく話せば数年かかるんだけど……」
「そんなに説明するのが難しいものなの!?」
説明に要する年月を聞いて驚く彼女。
だが、本当にそれだけの年月が必要なのだから仕方ない。
「もちろんだとも。ロリにも様々なロリが居るんだよ。ロリ巨乳からロリババア、果てはケモロリや洋ロリなど……」
「ごめんなさい。詳しくでなくてでいいから簡単に教えてもらう事はできる?」
「簡単に言えば外見年齢が十五歳以下の少女の事……かな」
精神的ロリも持ち出すとその限りではないが、キリがなくなるのでその話は割愛しよう。
「十五歳以下の外見……要は小さな少女の事ね。どうしてあなたたちはそこまでそのロリにこだわるのか……って、聞いても分からないわね」
俺達ロリコンの事を理解しようとする彼女だが、やはり難しいらしい(そりゃそうだ)。
常人の男ですら理解するのが難しいロリコン魂。それをこんな少女が理解するなんて無理というものだ。
「まぁ、精霊の外見についてきちんと知ってるなら問題ないね。ただ、最後に確認するけど本当にいいのかい? 牙を持つ獣のような外見をした子も居るらしいんだけど大丈夫? それと、相手がどれだけ怖い外見でも怖がったりせずに接することができるかい?」
今まで、俺たちが保護した精霊同士が互いに相手の姿を怖がってショックを受けるという事が何度もあった。
そんな事があったため、本来保護した精霊はしばらくの間、他の精霊と会わせないようにしているのだ。
だが、今回はこの子自身が他の精霊に会いたいと言っている。
悪魔の外見についても知っていると言う。
なら――後は覚悟を問うだけだ。
そうして彼女の問いを待つ俺だが、もたらされた返答は完全に予想外の物だった
「大丈夫よ。私にもみんなの本当の姿が見えるから。それに……多分、私ならみんなを元に戻せる」
「そうか、そこまで覚悟が固まってるなら………………え? 今なんて言った?」
「えと……だから……多分だけど、私なら他の精霊を元の姿に戻せるわ」
自信なさげに、しかしある程度の確信を持っている様子でそう答える少女。
そうか、悪魔のような姿になってしまっている精霊たちを元に戻せるのか。なるほどなぁ。
……。
…………。
……………………。
「さぁ、急ぎましょう救世主様!! わたくしめがあなたをこの隠れ里にて精霊を保護している地……『ロリロリワールド』へと案内致しますっ!!」
そうして俺は精霊の少女を連れ、隠れ里の最重要施設である『ロリロリワールド』へと足を運ぶのだった――
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