日曜日のお鍋

 

 使い慣れたお鍋の中に

 少し残った汁と具材


 キッチンから戻った母が

 慣れた様子でご飯を入れた

 溶いた卵は父が入れ

 仕上げに大きな蓋を閉じた


 リビングにはテレビの声

 派手な笑い声に混じって

 弟の笑う声がする


 大きな蓋を父が開けた

 そっと覗き込めば

 ふつふつふんわり優しい黄色


 右手にお玉

 左手に弟のお椀を取るのは

 手慣れた様子の父

 よそうのは四分の一より少し多め


 次は私の

 次は母の

 最後に父の


 ソファから弟が戻ってきて

 キッチンからは薬味を片手に母が戻る


 誰からともなく手を合わせて

 いただきますと呟いた


 ずるずると

 おじやを頬張る音がする


 父は少し豪快に

 母は少し上品に

 弟はどこか恐る恐ると


 私はご飯を箸で摘んで

 ゆっくりと口へ放り込んだ


 口の中に広がるのは

 対応しきれない熱さと


 幸せの味

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